消費税の転嫁ができないとどうなるか

消費税の転嫁とは、消費税分の上乗せをすること。

ここに、景気がなかなか良くならない原因が潜んでいるのかもしれません。

 

消費税を転嫁できないとどうなるか

消費税が「8%」から「10%」になるなら、「108円」で売られていたものは、「110円」になる。

もともとの価格に、消費税もちゃんと上乗せされる。

これを、「消費税が転嫁される」という言いかたをします。

 

法律の想定どおりに事が運べば、よいのかもしれませんね。

でも、消費税の転嫁ができないケースも存在します。

まずは、給与のこと。

消費税が変わったからといって、すべての会社において、給与も増えたでしょうか。

 

もし増えないなら、事業者の売上が減る原因となります。

消費税がふえた分、つかえるお金が実質的に減るわけですから。

すると、たしょう値下げをしたとしても、売上、そして利益を確保しようとなることも。

この値下げは、実質的には「消費税が転嫁できない」ことでもあります。

 

また、取引先との力関係によっては、その値下げを自分でかぶらないこともできるでしょう。

下請けなどの取引先への支払いを、値下げすればよいので。

 

さらに、その下請けのかたも、自分が困らないように…とは当然かんがえます。

その方法のひとつが、自社の社員を、派遣や外注にきりかえること。

この方法により、消費税の納税だけでなく、社会保険も減らすことができるのです。

 

これにより、社員だったかたの手取りは、減る可能性が大です。

派遣会社なら、手数料をとられます。

また、外注先となるなら、それまでの給与が10%アップとなるのが筋ですが、どうでしょう。

社会保険や経費も、すべて自腹です。

すると、つかえるお金は減ってしまいます。

 

このように、消費税の転嫁ができないと、立場が弱いかたの方へ、しわ寄せがくるのです。

結果、世のなか全体でうごくお金が減る。

だれもが、より安いものを求めるしかないことになる。

これが、景気がなかなか良くならない原因の一つかもしれません。

 

もともと、消費税には逆進性があります。

収入にかかわらず、だれにとっても税率がおなじですから。

すると、収入のなかからどれだけ消費税を払ったのか。

これを「%」でみれば、収入がすくないかたのほうが多くなります。

 

くわえて消費税には、上のように、より立場の弱いものにツケが回ってくるような面もある。

ちゃんと転嫁ができない場合ですけれどね。

ただ、これも逆進性ということができるでしょう。

 

さて、だれかが損をするなら、ほかの誰かは得するのでしょうか。

 

資本主義では当然といえる

税金は、消費税だけではありません。

事業をしているときメインの税金であるのは、所得税と法人税。

 

いま所得税の最高税率は、45%です。

でも、かつては70%だったことも。昭和61年(1986年)ですけれどね。

 

また、いま法人税の基本税率は、23.2%です。

でも、かつては40%台だったことも。おなじく昭和61年ごろでは。

ちなみに、消費税がはじめて導入されたのは、平成元年(1989年)です。

 

ここだけを切りとってみれば、より立場の強いかたの税金が、より立場の弱いほうへ流れてきた。

こんな見方もできます。

もちろん、より立場の強いかたは、税金も社会保険もそれなりに払っていますけれどね。

 

ただ、こうした動き。

お金がより立場の強いかたの方へあつまるのは、資本主義の道理でもあります。

お金がお金を呼ぶ…というような。

 

その資本主義がうまれるより前の古い時代から、お金には用心がされてきました。

キリスト教やイスラム教、ユダヤ教では、基本的にお金を貸しても利息をとってはいけないと。

(原典をみたわけではなく、本やネット情報ですが)

 

日本でも、誤りだったことが分かったようですが、かつて士農工商という表現がありました。

お金儲けをイメージさせる「商」を最後においた言葉ですね。

お金儲けは悪いことではないですが、行き過ぎれば困るひとも多くでてくる。

それを予知して、あえてこの言葉を用いたのなら、おそろしい知恵といえるかもしれません。

 

お金はどうしても必要なものですが、たくさん集めたくなるものでもあります。

ただ、世のなか全体を考えれば、なるべく多くのお金が動いていたほうが、景気は良くなるもの。

そして、世のなかの楽しみや嬉しさも増える。

どこかに溜まって動いていないお金があると、その動きは少なくなるわけです。

 

なるべく多く動くようにするには、より多くの人がつかえるお金を持っている必要がある。

こう考えたとき、じつは税金も、そこに一役買っています。

 

税金の役割

税金というのは、基本的にはお金がうごくときにかかるもの。

つまり、お金を持っているひとが払うものです。

 

その税金が、警察や消防といった公共サービスや、年金や医療などの社会保障につかわれる。

あるいは、道路などの公共事業にも。

こうしたことを通じて、間接的に、より立場の強いひとのお金が、より立場の弱いひとのところへ行くことになる。

これを、所得の再分配といいます。

すると、より多くの人が、つかえるお金をもつことにつながるのです。

 

また、景気が悪いときは税率をさげれば、世のつかえるお金は増えます。

いっぽう、景気が過熱してきたときは税率をあげることにより、インフレを抑制することもできます。

景気を調整するような役割もあるわけです。

 

税金は、自分の知らないところで勝手にきめられ、無理やり払わされるように感じてしまいますよね。

でも、事業をするなら、生きていくなら、ずっと付き合っていかなければならないものです。

とくに中小企業者にとっては、より多くのひとが、より多くのお金を持っている方がよい。

そうでないと、売上先が少なくなってくるので、利益やお金は増えづらいですからね。

 

税金は、個人ひとりで、どうこう出来るものではありません。

でも、たんに「払うのはイヤ」ではなく、知る努力をするのもよいですよ。

税金は、お金を増やすためには、どうしても必要なものですから。

それに、とっても間接的ですが、だれでも選挙という手段がありますしね。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。