税理士試験では教わらない税理士の仕事に必要なこと

税理士になるには、試験を通るのも一つの方法です。

その試験では教わらないけれど、税理士の仕事に必要なことについて解説します。

 

税理士試験では教わらない税理士の仕事に必要なこと

税理士になるにはいくつか方法がありますが、そのなかの一つに税理士試験の合格があります。

でも、この試験で税理士の仕事にひつようなすべてを勉強できるわけではありません。

試験には出ないけれど、仕事にひつようなことは、それぞれが独自になんとかしているのです。

 

もちろん、そのための本やセミナーなど勉強できる機会はたくさんあります。

でも、このあたりで税理士としての差がつくところでもあるのです。

税金の法律はひとつなので、だれが計算してもおなじ税金になるという前提ですが…

 

税理士試験で教わらないことには、次のようなことがあります。

  • 聞く、話す、書く
  • 資金繰り、融資、金融機関のこと
  • 節税
  • 将来の予測
  • 税務調査、税務署の内部事情
  • 経費になるかどうか
  • 現実の経理
  • 電子申告をふくめ IT 全般

 

税理士の仕事とのかんけいを、それぞれ解説します。

 

聞く、話す、書く

試験では、収入や経費など、計算にひつような条件はすべてととのっています。

でも、現実はそうではありません。

なので、資料あつめをふくめ「聞く」ところからスタートします。

 

もし、うまく聞くことができなければ、税金はちがくなる可能性があります。

また、計算の前提がちがっていることだってあり得ます。

さらに、ご希望を取り違えることだって起こり得ます。

 

もちろん聞くだけではなく、確認をとるなど「話す」ことも必要です。

相手に伝わるように。

 

税金をふくめ法律には、専門用語がたくさんあります。

また、いろんな特例ごとにさまざまな条件もあります。

こうしたことを上手く伝えるには、専門用語をふだんつかっている言葉におきかえたり、例えを用いたりしなければならないときが多々あります。

 

もし、対面での会話だけなら、聞く・話すでじゅうぶんです。

でも、メールでやり取りをすることも多い…

 

話すと「書く」はまったく同じことではありません。

書くときに「アレ」とか「あのときの…」では通じないこともありますし。

こうしたものがいかに便利かは、書くときに実感できます。

 

かといって、いちいち正確に書こうとすると、毎回のメールがとても長くなってしまいます。

相手が知っていること・知らないことをふまえて、伝わりやすく書く必要があるのです。

 

ここまでは税金の計算に必要だから……という前提です。

でも、計算にいたるまでの相談や、日常の「分からないこと」について自分の知っていることを伝え・一緒に考えることだって必要です。

むしろ、税金の計算はホントいちぶであって、そこに至るまでのほうがずっと多いです。

 

聞く・話す・書くというのは、基礎体力のようなものですが、すごく重要なのです。

 

資金繰り、融資、金融機関のこと

試験では、お金のことについては勉強しません。

すこしキャッシュフロー計算書にふれる機会はありますが、事業において重要なのは「将来お金が足りるかどうか」です。

支払うべきときにお金が足りないと、そこでゲームオーバーになってしまうので。

 

そのため、過去をふまえて将来どうなるかという視点が必要になってきます。

これを、資金繰り表などでおさえます。

 

もし足りない見込みになるなら、融資が必要になるときもでてきます。

とうぜん、融資のこと・その融資をする金融機関についても通じてなければなりません。

 

事業には波があるものだし、将来はどうなるか分かりません。

いざ必要になるときに備えて、お金や融資のことも必須なのです。

 

節税

節税につかわれる仕組みは、試験でもでてきます。

でも、試験ではでてこない節税方法もたくさんあります。

 

税金はすくないほうがよい…というのは、誰にとっても本音です。

その税金を、プロである税理士に依頼するなら、やっぱり節税の期待はおおきいものです。

なので、節税にかんすることはスラスラ出てこないと仕事にならない、という面もあります。

 

その節税も、あるものについては、誰かが抜け道をみつけ、それを防止する改正がおこなわれる。

こんなサイクルが、繰り返しおこっています。

節税を取りはぐれないように、常に勉強しなければならないわけです。

 

将来の予測

税金の計算は、過去にもとづいておこなわれます。

でも、経営者にとって大事なのは、過去ではなく将来です。

 

税理士は税金の専門家ですが、経営者からみれば税金だけではなく、お金や数字にも強いとおもわれる存在です。

お金や数字の結果が、税金でもあるわけなので。とうぜん強いはずだと。

 

  • ○○すると、将来はどうなるか
  • ○○にならないためには、今どうすべきか
  • ○○したいんだけど、やっても良いのか

こうした疑問にこたえるには、将来の予測も必要になってきます。

 

税理士の仕事は、たしかに税金の計算です。

でも、仕事を相手の知りたいことや困っていることに答えること、とするなら……

将来の予測も必要なのです。

 

税務調査、税務署の内部事情

試験ではなく、税務署にあるていどの期間つとめることで税理士になることもできます。

これが国税OBとよばれる税理士です。

 

その強みは、なんといっても「税務署の内部事情をしっていること」です。

もちろん、税務調査にも通じています。

そもそも、彼ら自身が調査をしていたわけなので。

 

この知見は、試験をとおった税理士には、直接的には手に入らないものです。

そこで、彼らがおこなうセミナ―などに通ったりするわけです。

もちろん、税務調査にかんする法律を勉強するなど経験をおぎなう努力もふくめて。

 

調査をうける側として、立ち会うことで経験も増え、強くなってはいきます。

ただ、税務署の内部でなにか起こっているかを知っていることは、得難いものかもしれません。

 

経費になるかどうか

試験では、経費はホワイトなものとして、まったく疑う必要はありません。

でも、現実では「グレーゾーン」にあたるものがたくさんあります。

解釈や理由・背景にあるもので、判断だって変わってきます。

 

税金をすくなくするためには、経費は多ければ多いほどよい。

(お金のことは考慮しません)

 

もちろんブラック、つまり脱税はいけないというのは誰でも分かることです。

でも、グレーゾーンにあたるものは、税金というより気持ちの問題だったりもします。

なので難しいのです。

 

税理士として、あるていどの線引き・スタンスを打ち出す必要があります。

その根拠になるものも、勉強です。

 

現実の経理

試験では、税金の計算のもとになる数字はくみあがっている状態です。

その数字をくみあげるのが普段の経理ですが、試験では教わらないものです。

 

この普段の経理が、経営者の悩みだったりします。

やっぱり面倒ですから……

 

この経理を、事業や税金に影響がでない範囲で、どうやったらラクにできるか。

もしラクになるなら、時間がふえます。

すると、できることも増える。

個々の事情におうじて、こうしたことを伝えるのも税理士の仕事です。

 

電子申告をふくめ IT 全般

パソコンなど IT に関することは、試験では教わりません。

そもそも IT に興味があるか・ないかがおおきく影響します。

でも、仕事をするには必須の知識です。

 

勉強というほどではなく、つかいながら覚える、ラクな方法を探しながら覚える。

このような方法でも対応できるでしょうし、相手にもよることです。

 

でも、パソコンのトラブルも意外にあるものです。思わぬところで。

普段から、 IT への意識は必要なのです。

 

まとめ

試験では教わらないけれど、税理士の仕事に必要なことについてみてきました。

税理士とひとくちに言っても、人それぞれです。

選ぶときの参考にしていただければと思います。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。