数字を見るときの3ステップ
起業すると誰も何も教えてくれないのが普通なので、必要なものは自分で取りにいかなければなりません。
その必要なものの一つである数字を見るときの基本的な姿勢についてみていきましょう。
起業すると誰も何も教えてくれないのが普通
雇われているときは、仕事に必要なことを上司や仲間がいろいろ教えてくれます。
でも、起業して社長または個人事業主になると、そういうことは誰も教えてくれません。
もしかしたら、過去につながりのあった人が助けてくれるかもしれません。
でも、本当に親身になってくれる人は少ないもので、当たり障りのないことしか聞けない可能性があります。
また、本やネット情報にも参考にできるものがあるかもしれません。
でも、ほとんどの場合、手に入るのは一般論であり、自分にピッタリあてはまるものは少ないものです。
かりに起業する前にいろんな準備をしたとしても、やってみなければ分からないものってあります。
将来、自分が分からないであろうこと・困るであろうことは、事前に知ることはできないのです。
なので、分からないことや困ることがでてくるのは当然なのです。
それを解決したいとなったときに、教えてくれる人がいないのなら、自分で何とかするしかありません。
自分にとって必要なことは、自分で取りにいかなければならないのです。
たとえば数字です。
経営において大事なものは数字だけではありませんが、お金がからんでくる以上、そのお金を表現する数字を見れることは必須です。
その数字を見るにあたり、こまかい話ではなく、基本的な姿勢をみていきましょう。
数字を見るときの3ステップ
経営における数字をみるときは、決算書や試算表をつかいます。
決算書は、基本的に年1回、決算のときしかつくらないため、ふだんは次のような試算表を使うことがおおいです。
(数字はサンプル用のものです)
このような数字は、次の3ステップをふんでみていきましょう。
- 大枠をとらえる
- 気になるところを深掘りする
- この先どうなるか考える
大枠をとらえる
上図のようなこまかい数字の羅列を一つ一つ確認していると、目だけではなく神経もつかれます。
まずは、手書きでよいので、ざっくりとした図をつくってみるのがおススメです。
たとえば損益計算書なら次のように。
この図をつくるためには、試算表からひろってくる数字は「売上と利益の2つだけ」です
その差額を経費にしましょう。それくらいざっくりでも大丈夫です。
また、貸借対照表から「お金の増減」も押さえておきましょう。
経営数字でまず大事なのは「売上・利益・お金の増減」の3つですから。
このようにざっくりと大枠をとらえるのは、最初に全体像をおさえておくことが大事だからです。
いきなり「売上の内訳が……」と考えてしまえば、「木を見て森を見ず」ということにもなりかねません。
社長や事業主は、事業の全体をみているものだと思います。
数字だって全体をおさえるのは同じです。
それから次のステップに進みましょう。
気になるところを深掘りする
もし、すでに何か問題があるなら、気になる科目を掘り下げていけば原因になるものが分かるでしょう。
しかし、経営においては数字がすべてではありません。
ひとの気持ちのように、数字にはあらわれないものだってあります。
そのため、数字をきっかけに、現場での確認などが必要になることもあるかもしれません。
これも、問題を解決するには必要なことです。
いっぽうで、なにも問題がないように見える場合でも、次のような深掘りはしてみましょう。
- 売上を取引先ごとに分ける
- 商品や現場ごとの粗利をだす
- 推移表(すべての科目を月ごとにならべたもの)をチェックする
- 資金繰り表(お金の動きだけを集計したもの)をチェックする
- 過去とくらべる
- 自分の感覚とくらべる
- 自分の希望や将来の予測とくらべる
これらのことは、いずれも何かと比べるから意味をもってくるものです。
その何かとは、自分の希望や過去・いま最低限クリアしなければならないことなどです。
そのため、「なぜ必要なのか」を実感できないときもあるかもしれません。
でも、いずれ必ず必要になってきます。
くらべるから分かる異常値もあるからです。
そして、その異常値に問題がひそんでいます。
もし何もなければ徒労に終わりますが、何も問題がないのだからよいでしょう。
問題を探り出すのも経理の仕事です。
数字をみるときは、このような意識も必要なのです。
さて、ここまで見てきたのは過去の数字です。
それを将来に活かすために必要なのが次のステップです。
この先どうなるか考える
もし問題があったのなら、それが解決すると将来の数字はどう変わるか。
もし問題がなかったのなら、将来の数字が希望や予測・最低限必要なラインとくらべてどれだけ違うのか。
このようなことを考えてみましょう。
ただ、将来の予想をしてもその通りになるとは限りません。
むしろ外れるほうが多いでしょう。
ですが、将来の予想はすることに価値があるのであり、当たることに価値があるのではありません。(もちろん当たればうれしいですよ)
その価値は、将来の予想をすることにより、ギャップに気づき、いまの行動が変わるところにあるのです。
事業からはなれて、何か欲しいものがあるときのことを考えてみましょう。
欲しいものがあるのに手に入らないとき、どうするでしょうか。
この「どうするか」が将来の予想なのです。
事業をつうじてやりたいこと・欲しいこと・なりたい自分などがあるなら、過去をふまえて将来の予想をすることは必須です。
ときには危険を避けることにもつながりますし。
このような意識をもって数字とつきあっていきましょう。
まとめ
起業すると、誰も何も教えてくれないのが普通です。
もし事業をつうじて実現したいことがあるなら、そのために必要なものは自分で取りにいかなければなりません。
その必要なものの一つである数字についても、今回ご紹介した姿勢を意識して付きあっていきましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
当事務所のサービス