株主総会の議事録は税金への影響もある

同族会社では、株主と経営者がおなじことがほとんどです。

すると「わざわざ議事録を…?」と思われるかもしれません。

でも、その議事録は税金にも影響するのです。

 

株主と経営者は別人

株式会社を運営していくには、株主と経営者という2つの存在が、最低限必要です。

 

株主は、会社をやっていくための元手(資本金)を用意するひと。

もし、会社の業績がよくなければ、その元手をうしなう可能性があります。

その反面、うまくいけば配当金を手にできるかもしれません。

というリスクやリターンのほか、会社のルールである定款を変更したり、役員を選んだりすることができます。

つまり、会社は株主のものなのです。

 

いっぽう経営者は、株主から選ばれる存在です。

株主から頼まれて、会社の経営をするわけです。

というのも、株主には、お金はあるものの、経営能力がなかったりすることもあるので。

そして経営者には、元手をうしなうリスクや、配当金というリターンもありません。

役員報酬の増減や、クビになるかもしれない…ということのみ、といえます。

 

…と、株式会社は、このような前提にたってつくられた仕組みです。

ただ、現実では、自分で会社をつくり、自分や家族で経営していくことも多々あります。

すると、意識が薄くなりがちなのが、「株主と経営者は別人」ということです。

1人で2役をこなすわけなので、区切りがつきにくいのも当然です。

 

でも、もし株主と経営者が他人同士だったら、どうなるでしょうか。

なにしろ、お金がからむことです。

とうぜん報告や連絡などのやり取りのため、いろんなことを記録に残すはずです。

その記録のひとつに、「株主総会の議事録」があります。

 

じつは、この議事録は、税金にも影響するのです。

 

議事録の税金への影響

議事録が税金に影響するのは、つぎのことです。

  • 決算書
  • 役員報酬の変更
  • 役員へのボーナス(事前確定届出給与)の手続き期限

 

決算書

法人税は、会計ソフトでつくられた決算書をベースに計算します。

ただ、その決算には条件があり、「確定した決算」でなければならないのです。

…ということが、つぎのとおり法律にも書かれています。

 

内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から2月以内に、確定した決算にもとづき一定の事項を記載した申告書を提出しなければならない。

(法人税法74条より抜粋)

 

「確定した」とは、株主の承認をうけたことを意味します。

かりに株主が文句をつけたとしても、決算の内容は変えられるものでもない…

とはいえ、「しょうがないね…」であったとしても、承認は必要なのです。

もし承認があれば、経営者としても一安心…のはずですし。

この承認したことを、議事録にも残しておきましょう。

 

役員報酬の変更

役員報酬には、毎月おなじ金額でなければならない…という縛りがあります。

利益をそっくり役員報酬におきかえる…などの利益操作を防止するために。

そして、もし変更するなら、原則として、年度がはじまってから3か月以内におこないます。

 

ここで一つ気になるのが、「定時株主総会はいつか」ということです。

定時株主総会は、毎年かならずおこなうもの。

そこで1年の業績を振りかえり、決算の承認をしたり、役員や役員報酬をどうするか…ということも検討します。

 

もし、役員報酬の変更が、この定時株主総会より前におこなわれると…?

たとえば、決算ができあがっていない新年度1か月目のとき。

 

1年の業績をみないで変更するからには、それなりの理由があるはずです。

かりに株主と経営者が別人だったら、お金のトラブルになることも考えられるので。

ということを踏まえた臨時株主総会の議事録が必要になります。

そして、その後の定時株主総会のものも。

 

こうした議事録は、税務調査でも確認されることがあります。

役員報酬の変更の裏づけとして。

 

自分で会社をつくり、自分で経営しているときは、株主も経営者もおなじひとです。

これを議事録にすると、すこし変な感じがするかもしれません。

でも、それでよいので、議事録をつくっておきましょう。

 

役員へのボーナス(事前確定届出給与)の手続き期限

役員へのボーナスは、まず「だれに・いつ・いくら」支給するかを、株主総会で決めます。

その後、その内容を税務署へ届け出ます。

それから、届け出たとおりに支給する…と。

この流れをふまないと、たとえボーナスとしてお金がでていっても、会社の経費にならないのです。

 

そして、届け出には期限があります。

その期限は、ややこしいのですが、通常はつぎのうち早いほうの日です。

  • 株主総会で決めた日から1か月以内
  • 年度がはじまってから4か月以内

 

ただし、株主総会で決めた日から1か月以内……には条件がついています。

もし、株主総会よりも前から役員としての職務を開始するなら、その「職務を開始する日から1か月以内」と。

 

役員の職務は、基本的に、定時株主総会からつぎの定時株主総会まで…とかんがえます。

1年間のボーナス込みの役員報酬を、定時株主総会できめるわけです。

ただ、定時株主総会と職務の開始日は、多少ズレることもあるかもしれません。

キリのいい日付から…など。

そんなときは、期限に注意が必要なのです。

議事録そして株主総会は、ボーナスのように金額がおおきいものまで関わってくることを知っておきましょう。

 

まとめ

同族会社では、株主と経営者がおなじことがほとんどです。

そんなときは、わざわざ株主総会の議事録をつくることが面倒かもしれません。

他人同士ならではのトラブルもないわけですし。

 

でも、議事録は、意外に重要。

後で困らぬように、その都度つくっておきましょう。

ひな形は、インターネット検索で簡単に手にはいりますから。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。