経営数字に必須のルールである「発生主義」とは

発生主義とは、お金の出入りではなく、モノやサービスの移動により収入や経費を帳簿づけするルールをいいます。

決算書などに事業の活動がより正しく反映されやすいルールですが、手間がかかります。

ただ、数字を経営に活かすには必須のものなので、どんなルールか。そして問題などもみていきましょう。

 

発生主義とは

発生主義とは、モノやサービスを相手に渡したとき・または受けとったときに、収入や経費を帳簿づけするルールをいいます。

このようなときに「取引が発生した」と会計では表現するのです。

だから「発生」主義。

 

つまり、お金を受けとったり・支払ったときではないのです。

そのため、まだお金を受けとっていないのに収入がある。支払ってもいないのに経費がある。

このようなことが起こります。

 

もし、サービスを提供したのに、お金を受けとっていないからといって収入がゼロになるなら、その会計データには事業の活動が正しくあらわれない。

おなじように、なにかモノを買って使っているのに、お金を支払っていないからといって経費がゼロになるなら、収入を得るための活動が反映されない。

 

会計データに、事業の活動をより正しく反映させるためのルールが発生主義なのです。

(お金を受けとったとき・支払ったときに帳簿づけするのを「現金主義」といいます)

 

この発生主義という大枠のもとで、売上、そして商品など売上に関連する経費については、追加ルールもあります。

 

売上の追加ルール

たんに商品を相手に渡しただけで売上とするなら、次のような問題がでてきます。

  • 「受注」は渡したことになるのか
  • 「発送」は?
  • 「返品」は考慮しなくてよいのか
  • 相手が商品を「確認」するのを待たなくてもよいのか

「渡した」の意味・定義が問題になるのです。

 

そこで、売上については、商品やサービスを相手に渡しただけではなく、「お金を受けとれることが確定したとき」に帳簿づけすることになります。

これを実現主義といいます。

「お金を払わないんだったら訴えるよ」と言えるときに売上を帳簿づけする。そのように考えましょう。

 

この売上を軸に、商品など売上に関連する経費にも追加ルールがあります。

 

売上に関連する経費の追加ルール

商品など売上に関連する経費は、「売上に見合った分だけを経費にする」というルールになっています。

 

もし、仕入れただけで経費になるなら、売上と原価のバランスがとれません。

売れていないものまで経費になってしまうからです。

決算書などをみたときに、「この売上のために、どれくらいの原価が必要だったか」が分からないのです。

 

  • 売値が安すぎたんじゃないか
  • 仕入値が高すぎるのではないか

このような判断ができなくなってしまいます。

そこで、「今期の売上に対応するものだけを経費にする」ことになるのです。

 

 

ここまでくると複雑な感じもしますが、大枠は発生主義です。

お金の出入りには関係なく収入や経費がでてくるんだな、と覚えましょう。

ただ、この発生主義には問題もあります。

 

発生主義の問題

発生主義で経理をするときの問題は、「手間がかかって面倒」だということです。

 

もし、お金の出入りにもとづいて経理をするなら、集めるのは領収書だけでよいでしょう。

でも発生主義では、請求書などこれからお金を受けとる・支払うものまで必要になります。

 

勝手に引き落とされるものやカード払いのものだって、いちいちダウンロードしたり資料を集める必要があります。

ときには、まだ相手から届かないということもあるでしょう。

まずは「集める」ための手間がかかるのです。

 

それから、「集めた後」にも問題があります。

  • もうお金の決済がすんだものは、見なくても大丈夫。
  • これから決済するものは、手元に残しておきたい。

こう思うかたもいるでしょう。

 

でも、会計ソフトに入力をするときは、これらを一カ所にまとめなければなりません。

「これらがゴチャゴチャになるのはイヤ」というかたは、意外に多いのです。

経理が終わったら、また振り分けなければなりませんし。

 

さらに、経理を会計事務所などに依頼しているなら、資料の行き・帰り、向こうでかかる時間。

これらも考慮しなければなりません。

 

発生主義で経理をするには、こうしたハードルもあるのです。

でも、発生主義で経理をしないと、次のような問題もでてきます。

  • 税務調査でのツッコミ
  • 利益が分からない

 

税務調査でのツッコミ

税務調査では、かならず売上を調べられます。

その売上を現金主義で経理していると、「じつは前期の売上だった」ということもあり得ます。

モノやサービスを相手に渡してからお金を受けとる。つまり「後払い」もおおいので。

 

長い目でみれば、トータルの売上は変わりません。

前期のは増えるが、今期のは減る。

こういうことになるからです。

 

それでも、「申告を直してくださいね」と言われるハメになります。

追加で税金をはらい、場合によっては延滞税などもはらう。

このようなことになってしまうのです。

これを避けるには、やっぱり発生主義で経理をすることが必要です。

 

利益が分からない

いつも発生主義は面倒だから、期末だけにする。そうすれば税務調査も大丈夫だし。

このような経理もおこなわれています。

このときの問題は、「その時々の利益がわからない」ことです。

 

「いま、いくら利益でているの?」

事業をしていれば、こう思うこともあるはずです。

でも、発生主義で経理をしなければ、正しい答えはわかりません。

 

もしかしたら、細かい経費などはちゃんとした発生主義でなくてもよいかもしれません。

でも、売上など大事なところは発生主義でやりましょう。

ちゃんとした請求書などではなく、見積書やメールのやり取りに出てきた数字でもかまわないので。

そうすれば、現実にちかい利益になるでしょう。

その結果、数字も根拠に、現実をみながら判断することができますから。

 

まとめ

発生主義とは、取引が発生したときに収入や経費を帳簿づけするルールをいいます。

たしかに手間はかかりますが、現実をより正しく見ることができるという見返りもあります。

数字も活かした経営をするには必須のものなのです。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。