なぜ食事代は経費になりにくいのか
食事代は、原則として経費になりません。
その理由と、例外も確認しておきましょう。
原則として経費にならない
食事代は、原則として経費になりません。
ただ、「必要経費」といいますよね。
その「必要」だけを抜き出してみれば、食事代も仕事には必要…ということはできます。
だって、食べなければ、動けないですから。
でも、この論法でいけば、ありとあらゆるものは必要経費だということができます。
- 寝なければ、仕事はできない
- ストレスがたまっていれば、仕事はできない
- 環境がよくなければ、仕事はできない
- 家族が上手くいってなければ、気になって仕事はできない
- 裸では、仕事ができない
衣食住はおろか、すべての支払いについて、なにかしら「仕事に必要だ」ということはできるはず。
そこで、たとえば法律をみてみると、経費とはつぎのようなものを言う…と書かれています。
売上原価や売上を得るために直接かかった費用および販売費・一般管理費のようにその事業について生じた費用
(所得税法、法人税法から意訳)
これだけでは曖昧ですよね。
食事代は、おそらく販売費や一般管理費にふくまれるであろうことは分かります。
でも、その内容には触れてないですから。
つまり、明確な経費の定義というものは無いのです。(はず)
とはいえ、それでは困ります。
経費とは、つぎの2つの条件をともに満たすもの…と思っておきましょう。
- それがなければ事業はできない
- 事業をしていなければ、それは必要ない
もし、それでも曖昧に感じるなら、つぎのことを自問してみましょう。
- 赤の他人がその支払いを経費だと持ってきたとき、それを経費と認めるか
その領収書とじぶんのお金を交換する…と想像するなら、きっと実感できるはずですから。
おそらく、食事代のほとんどは「事業をしていなければ、それは必要ない」に引っかかるはず。
だから、食事代は原則として経費にならないのです。
とはいえ、原則があれば例外もありますから、それを確認しておきましょう。
経費になるケース
食事代が経費になるのは、つぎのようなケースです。
「事業をしていなければ、それは必要ない」ことを念頭に、みていきましょう。
- 会議費
- 交際費
- 福利厚生費
- 取材や研究
- 出先で仕事
会議費
取引先と会議をするとき、飲み物や、それに合わせたお菓子などを用意するのは一般的です。
そうしたものは、もちろん経費になります。
ほとんど習慣のようなものですし、まったく何も出さないとするなら。
「常識に欠けてるな…」などと思われるのは容易に想像できますしね。
じつは食事代が経費になるか…かんがえるにあたり、この習慣や常識など。
これらを「社会通念」とよびますが、それに沿っていることが大事です。
だから、たまたま昼食や夕食の時間帯しか約束をとれなかったようなとき。
そこでお弁当などを出したとしても、それは経費になります。
とはいえ社会通念が大事ですから、それにみあった金額かどうか…も気にしておきましょう。
なお、会議費の領収書には「だれと・どんな内容だったか」を書いておくとよいですよ。
裏面でもよいですから。
交際費
取引先を接待することも、ときには必要かもしれませんね。
そんなときの食事代は、交際費として経費になります。
このとき注意してほしいのは、「だれと」という情報が必要なこと。
接待するときの食事代は、ひかくてき高めの金額になることも多いです。
すると会計データをみていても、金額の高さから目を引くこともあります。
そこで「これはどんな内容ですか」と聞かれることも珍しくはない。
その用心をしておいたほうがよいのです。
なお、資本金1億円以下の中小企業は、年間800万円までしか交際費は損金になりません。
そして、1人あたり10,000円以下の食事代は、年間800万円かどうかの判断をするとき、交際費からのぞくことができます。
そのような食事代は、会議費として入力しておきましょう。
福利厚生費
新年会や忘年会のように、自社のスタッフだけで食事をすることもあります。
そんなときの食事代は、福利厚生費になる可能性があります。
ただし、つぎの条件を満たしている必要もあるのです。
- すべてのスタッフに参加できる機会があたえられている
- 常識的な金額であること
福利厚生というのは、「みんなで一緒に頑張っていくため」のもの…と思ってもらえるでしょうか。
気をつけたいのは、一人社長や家族で経営しているときです。
福利厚生というのは、基本的には他人にたいするもの。
家族なら助け合うのは当然…という「社会通念」もありますから。
あえて福利厚生が必要か…?
そんな見方もあるのです。
全体として、福利厚生費は、そう頻繁に出てくるものではないです。
「事業をしていなければ、それは必要ない」と言えるかどうか、気にしてみましょう。
取材や研究
食事に関連する仕事もあります。
食事を題材に記事や本などを書くのであれば、とうぜん食事代も必要でしょう。
食べずには、書けないですからね。
また、そもそもが飲食業なら。
自己研鑽からはじまり、新しいメニューや話題や流行になっているものを調べるため。
きっと多くの理由で、ほかの飲食店で実際に食べることも必要になってくるでしょう。
本業に関連して、食事代がかかることもある。
そうしたときは、とうぜん経費になります。
「それがなければ事業ができない」レベルのものでしょうからね。
出先で仕事
出先で、スキマ時間に仕事をすることもあります。
そうしたときに便利なのが、その近くにあるカフェなど。
ただ、そのときには食事までは必要ない…と思うんですよね。
せいぜいお茶やコーヒーくらい。
いわば場所代として、なにかしら注文しなければ、そこに居られないですから。
仕事しながら食べないというのも「社会通念」のように思いますから。
まとめ
食事代は、原則として経費になりません。
ある支払いが経費になるためには、つぎの条件を満たさなければならないのです。
- それがなければ事業はできない
- 事業をしていなければ、それは必要ない
これらに加えて、習慣や常識など社会通念という視点も大事です。
もし、そうした条件を満たさないのに食事代が経費になっているなら。
疑われるのは「プライベートのものじゃないか」ということ。
とくに法人では、そうしたものは給与として扱われてしまいます。
すると、源泉所得税が足りなかった。
消費税を追加で払うことになる。
場合によっては、社会保険も追加でかかるかもしれない。
けっこう被害が大きくなるのです。
事業をしていると、食事にかかわる場面はおおいです。
でも、経費になるのは、あんがい限られている状況です。
食事代を経費にするときは、補足情報を領収書などに書いておくとよいですよ。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。

