税金の還付が多いときは喜ぶべきか
1万円の還付と10万円の還付。
いっけん10万円の還付のほうが嬉しいですが、本当に喜んでいいのでしょうか…?
還付はどこから
税金の還付とは、過去に自分がはらった税金がもどってくることをいいます。
もし、そこまでに税金をはらっていなければ、還付になることもありません。
つまり、税金には、前払いをして、ごじつ精算するものがあるのです。
還付とは、その精算のときにもどってくるものですから。
税金の前払いには、次のようなものがあります。
(前年度の税金の多寡により、なかには発生しない前払いもあります)
<個人>
- 役員報酬、給与、ボーナスからの源泉徴収(=天引き)
- 個人事業主の料金・報酬からの源泉徴収
- 所得税の予定納税
- 消費税の中間納付
<法人>
- 法人税、住民税、事業税、消費税の中間納付
それぞれ精算されるタイミング、還付がおこる可能性があるタイミングは、つぎのとおりです。
<個人>
- 役員報酬、給与、ボーナスからの源泉徴収……年末調整
- 個人事業主の報酬からの源泉徴収……確定申告
- 所得税の予定納税……確定申告
- 消費税の中間納付……確定申告
<法人>
- 法人税、住民税、事業税、消費税の中間納付……確定申告
還付になる仕組み
税金のなかには、前払いをして、ごじつ精算するものがあります。
その精算とは、1年度分の税金を計算し、前払いしたものとくらべる作業をいいます。
もし、1年度分の税金より、前払いしたほうが多ければ、還付になります。
いっぽう、前払いしたほうが少なければ、そのときは追加ではらうことになるのです。
知っておきたいのは、還付になろうと追加ではらおうと、1年度分の税金はおなじということ。
1万円の還付と10万円の還付があったとき、瞬間的にうれしいのは、10万円の還付です。
10万円が、現金でもらえるわけなので。
でも、着目すべきなのは、1年度分の税金のほうではないでしょうか。
つまり、それが自分の財布からでていくお金なので。
還付になるときに知っておきたいこと
税金の還付をうけるときに知っておきたいのは、つぎのことです。
- 1年度分の税金はいくらか
- 後払いの税金もある
- お金はいくら増えたのか
1年度分の税金はいくらか
1年度分の税金は、源泉徴収票またはそれぞれの申告書に書いてあります。
源泉徴収票なら、つぎのところに。
いっぽう、それぞれの申告書では、最初のページに書いてあります。
- 所得税……第一表に
- 消費税……第一表に
- 法人税……別表第一に
- 法人事業税・法人住民税……第六号様式に
もし、還付と1年度分の税金をくらべたとき、次のとおりだったら、どう思うでしょうか…?
- 還付 1万円……1年度分の税金 3万円
- 還付 10万円……1年度分の税金 30万円
還付に惑われされたら、ちょっと悔しい気がするとおもうのです。
後払いの税金もある
個人のかたは、確定申告または年末調整のあとに、つぎの税金の支払いがやってきます。
- 住民税
- 事業税……個人事業をやっているなどの条件をみたすかたのみ
所得税とはちがい、これらは後払いです。
役員報酬や給与からは、毎月、住民税が天引きされます。
強制的に。
でも、12分割なので、痛みは比較的すくなくなるはずです。
いっぽう個人事業主のかたは、上記の税金を3~4分割で、しかも自分で納付書をもって払いにいきます。
1回分の金額もおおく、しかも天引きのように強制ではなく、自発的にいかなければならない…
なので、「嫌だな…」と痛みをかんじるはずです。
そのときには、もちろん税金のぶんのお金もなければなりません。
そのお金のことも、みておきましょう。
お金はいくら増えたのか
法人税や所得税は、儲け(=利益や所得)にたいしてかかります。
儲けがあったから、黒字だったから、税金が発生するのです。
ということは、儲けにみあったお金も増えているはずです。
「1年度で、お金はいくら増えたのか」
このことも、確認しておきましょう。
というのも、お金については「今いくら持っているか」に意識を奪われがちだからです。
お金は、つかえなければ意味はないもの。
そして、財布や口座にはいってなければ、つかえません。
なので、どれだけ稼いでも、「いま」持っているものでなければ、興味はわかないものです。
1年度で、100万円ふえたとしましょう。
その後、なにかで使い、残りが30万円になれば「30万円しかない」と思いがちです。
「100万円ふえた」ことを、忘れることがあるのです。
でも、事業をしているなら、「お金はいくら増えたのか」はいつも意識するようにしましょう。
というのも、事業は、お金をつかってお金をふやすのも目的だからです。
仕入れなどでお金がでていき、売上としてもどってくる。
このくり返しでお金はふえていくのです。
もちろん、いま持っているお金も大事です。
でも、「いったんはお金がふえたが、仕入れなどでへった」という意識も必要なのです。
「仕入れなどでへった以上の売上が必要」という考えにむすびつくので。
お金について、いまの残高はとうぜん気になるもの。
でも、増減も意識するようにしましょう。
いつも増減しているのが、事業なので。
まとめ
税金の還付は喜ぶべきか…についてみてきました。
着目すべきは、そのときの還付ではなく、1年度分の税金がいくらか…です。
還付もふくめ税金には惑わされず、いくらお金が増えたのか…を意識しましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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