会社を黒字にするため経費がなかったことにするとどうなるか
過去を変えるのは、ときに簡単です。
でも、そのツケは将来に残ってしまうのです。
経費がなかったことにするとどうなるか
どうしても会社を黒字にしなければならない……
そんなときに、つかった経費をなかったことにすると、黒字にすることはできます。
たとえば、次のような方法で。
- 現金払いの経費をなかったことにする
- 仕入れをなかったことにする
- 減価償却をしない
それぞれ、どうなるか確認しておきましょう。
現金払いの経費をなかったことにする
経費をなかったことにすれば、利益はふえます。
このときの問題は、経費がなくなるいっぽうで、なにが起こるか…ということです。
それは、つかったはずの現金が、つかわなかったことになる…という問題なのです。
会計データは、複式簿記によりつくらなければなりません。
その複式簿記では、ひとつの取引を、かならず2つ以上の面からとらえます。
たとえば、現金払いの経費なら、つぎのように。
- 経費が、○○円ふえる
- 現金が、○○円へる
このどちらか一方だけをなくすことは、できません。
もし片方をなくすのなら、もう片方もなくすことになります。
そのため、経費をなかったことにすれば、現金もつかわなかったことになるのです。
すると、つぎの問題もでてきます。
- 会計データにある現金の残高は、正しいのか
このときの残高には、なかったことにした経費のぶんも含まれています。
つかった現金を、つかわなかったことにするので。
なので、会計データでは現金が「100」あるのに、現実では「80」しかない…といったことも起こります。
このズレを解消するには、つぎの2つの方法がかんがえられます。
- 「経費をなかったことにする」の逆をおこなう
- 自腹を切る
「経費をなかったことにする」の逆は、無いはずの経費をあることにする……
つまり、架空経費です。
これはご法度なので、やめましょう。
なので、自腹を切るしかありません。
現金払いの経費をなかったことにするのは、いっけん簡単にみえます。
でも、つじつま合わせが大変なので、決してそんな事はないのです。
仕入れをなかったことにする
経費のなかにある仕入れ。
これをなかったことにすると、つぎのどちらかでつじつま合わせがおこなわれます。
- 自腹を切る
- 在庫があることにする
自腹を切るのは、先ほどとおなじです。
もういっぽうの在庫があることにする…とどうなるか。
たとえば、いくらか仕入れをしたとしましょう。
このとき、売れなかったものは経費にならず、在庫となります。
自腹を切らないということは、お金がでていったことは変わりません。
なので、仕入れのトータルも変えられません。
(複式簿記のつごうにより)
そのなかで、売れたぶん・売れなかったぶんの配分をいじることになるのです。
売れたぶん(仕入れ)をへらすと、売れなかったぶん(在庫)がふえる…
つまり、ホントは売れたけど、売れなかったことにすると、仕入れ(経費)がへるわけです。
在庫は、経費だったらのるはずの損益計算書には組みこまれず、商品や棚卸資産という名目で貸借対照表にのります。
仕入れをなかったことにすると、在庫は現実よりも多いものが会計データにのってしまいます。
このズレを解消するには、いつかは仕入れ(経費)を現実よりも多いものにしなければなりません。
今回の経費をなかったことにするなら、将来の経費が現実よりも多いものになってしまうのです。
つまり、将来の利益が、その時ほんらいのものより小さくなる…と。
こうしたことは「利益率」の比較から判明します。
売上と仕入れの関係を「%」でみたとき、数年分の「%」に説明しがたいバラツキがでてくるので。
仕入れは金額が大きいぶん、ズレを解消するのも大変です。
はじめの一歩を踏み出さないことが、大事なのです。
減価償却をしない
会社における減価償却は、任意です。
してもよいし、しなくてもよいのです。
なので、減価償却をしなければ、経費がすくなくなり、利益はふえることになります。
いっぽう会計のルールは、つかっているのなら減価償却をする……です。
もし減価償却をしないのなら、その理由を説明できなければなりません。
減価償却をしていないことは、決算書や税金の申告書からわかります。
つまり、かならずバレるものなのです。ひかくてき簡単に。
そのときに減価償却しない理由を説明できないのなら……
たとえば融資なら、アウトでしょうね。。。
そもそも黒字にするには
黒字というのは、成り行きまかせでも達成できることがあります。
ただ、基本的には、狙うものです。
ほんらいなら、赤字のときにはお金が足りなくなります。
なので、お金が足りなくならないように意識することが、黒字につながるのです。
お金が足りなくならないようにすること=「狙う」というわけで。
ただ、借り入れをしておけば、赤字なのにお金がある…ということもあり得ます。
そのほか、資本金がたくさんあったり、過去からの累積利益がたくさんある場合もおなじく。
そのような前提で、「黒字がいい」「黒字にしなければならない」という状況もあります。
赤字は、ほんらいなら胸を張れるものではないですし…
すると、「つかった経費をなかったことにする」ことで黒字化する誘惑もうまれてしまいます。
くり返しになりますが、黒字は狙うものです。
過去ではなく、将来を変えることにより。
そのためには、普段から数字をみておき、マズそうなら手を打つ。
こんなスタンスでいるようにしましょう。
まとめ
黒字にするため、経費をなかったことにするとどうなるか…をみてきました。
過去を変えるのは、ときに簡単です。
でも、そのツケは将来に残ってしまいます。
過去は変えられないもの。
変えるなら将来を。
そのために普段から数字にふれておきましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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