自分で作った会社を放置するとどうなるか

事業をいったんストップするときは、その後のいろんな手続きが気になります。

すべてを放置してよいものか、確認しておきましょう。

 

放置している状態とは

会社をつくったものの、事業が思うように軌道に乗らないこともあります。

あるいは、忙しすぎて疲れてしまうようなことも。

 

そんなときは、「いったん休もうかな…」となることもあるでしょう。

方向転換が必要なのかもしれないし、また、お金のこともありますから。

というような経緯で、事業をストップしている状態のことを「休業」といいます。

 

もしそこで、完全に事業をやめるつもりなら、会社をたたむ必要がでてきます。

設立したときのように、法務局へ行って手続きをするのです。

 

いっぽう、いずれ復帰するつもりだったり、会社をどうするか決めかねることもあるでしょう。

そんなとき、放置することだけは止めておきましょう。

税金や社会保険、そして登記のことがあるからです。

 

会社を放置するとどうなるか

会社を休業にするなら、次のことに注意しましょう。

  • 税金全般
  • 法人税の青色申告
  • 住民税(均等割)
  • 社会保険
  • 登記

 

税金全般

休業しているときは、利益がでることもないので、税金もゼロ。

じゃあ申告もしなくてよいよね…と思ってしまうかもしれません。

 

ですが、税金がゼロになるからといって、申告の義務までなくなるわけではありません。

「税金はゼロ」として、申告はしなければならないのです。

 

申告しない状態をつづけると、「申告をお願いします」という電話がかかってくることもあります。

ただ実務上は、休業にした旨を記載した異動届などを、税務署や都道府県税事務所・市区町村役場に提出します。

すると、向こうも「催促したところで税金はゼロなのね」ということが分かるので、あえて電話をしてくることもない。

といったことに、つながる可能性が高いのです。

 

気をつけたいのは、本店を移転するとき。

なにも手続きをしないと、あらゆる郵便物が届かなくなってしまいます。

各役所からの連絡は、現時点では、郵便または電話のみです。

これらの中には、いつか事業を復活させるときにカギとなる重要なものも含まれてきます。

なので、本店移転の手続きはやっておきましょう。

 

法人税の青色申告

法人税には、青色申告という制度があります。

帳簿をちゃんと作ったりすることにより、税制上のメリットをうけられる制度です。

 

この青色申告は、2期連続で申告をしない場合には、取り消されます。

すると、たとえば欠損金の繰越控除はつかえなくなります。

この欠損金の繰越控除は、今年の赤字を、将来の黒字からひいて税金を計算する仕組みのこと。

将来の税金を減らす効果がある仕組みなのです。

 

休業中とはいえ、会社を維持するために費用がかかることもあります。

すると、赤字になることも。

その赤字は、もしかしたら事業を復活させたときに、税金を減らす効果があるかもしれない。

申告をしないで、青色申告を取り消されると、こんなデメリットもあるのです。

 

ただ、その赤字はそれほど大きな金額ではないかもしれません。

また、青色申告を取り消されても、時間をおけば再申請することもできます。

なので、ほぼほぼ実害はない…といえるかもしれないですね。

 

ですが、青色申告は、節税したいなら基本中の基本。

気にしておきましょう。

 

住民税(均等割)

住民税は、利益にかかる部分と、会社が存在することを理由として固定でかかる部分の2つから成っています。

このうち固定でかかる部分を均等割といい、最低でも7万円かかります。

 

この均等割は、利益がゼロでも、また赤字であってもかかるもの。

すると、休業していてもかかるのか…という疑問もでてきます。

これに対しては、2つの対策が考えられます。

 

1つ目は、会社がある自治体に連絡し、手続きをすること。

すると、均等割を払わなくてもよくなるかもしれません。

 

この手続きは、自治体により変わります。

たとえば東京23区の場合は、申告をし、決算書などの数字から事業活動をおこなっていないことが分かるなら、均等割は払わなくてもよい。(事前に休業した旨を記載した異動届を提出することも必要です)

これを課税の見合わせといいますが、このようになっています。

 

そして2つ目は、なにか言われたときに「事務所等はない」と抗弁すること。

うえで、均等割は会社が存在することを理由としてかかるもの…と書きました。

その存在とは、事務所等があることを意味します。

 

その事務所等とは、「それが自己の所有に属するものであるか否かにかかわらず、事業の必要から設けられた人的及び物的設備であって、そこで継続して事業が行われる場所」をいいます。

つまり、ヒトがいて、モノがあり、継続して事業がおこなわれている場所。

これがあるなら、均等割がかかるのです。

 

でも、休業ということは、事業はおこなわれていない。

こんな風に言うこともできます。

なので、後からなにか言われたら、これを盾に反論することもできなくもない…

 

いろいろスッキリするのは、なんだかんだ申告をしておく方なのかもしれません。

おそらく簡単な内容になるはずなので、申告はご自身でやってみてはいかがでしょうか。

基本的にすべてゼロで、毎年ほぼ同じ内容になるはずですから。

 

社会保険

休業にするなら、とうぜん役員報酬もださないことになります。

役員報酬をだすなら、事業活動をしていることになりますし。

 

すると、健康保険・年金も、会社経由ではなく、個人で国保・国民年金に加入することになります。

この手続きをしておきましょう。

そうでないと、いつまでも会社あてに社会保険の請求が来てしまいますから。

 

登記

株式会社の場合、役員には任期があります。

最長でも10年なのですが、任期が終わったら、再任などが行われることになるのです。

たとえ同じひとが役員を続けるとしても、この段取りは踏みます。

そして、そのことに関する登記も必要なのです。

 

もし、その登記がされないままでいると、法務局が職権で「みなし解散」をおこないます。

解散とは、会社が事業活動をおこなわない状態に移行したことを意味します。

これは、対外的にも分かってしまうことなので、事業を復活させるなら、そのままではマズい。

そのときは、会社継続の登記をおこなうのです。

 

このときは必要な登記をしなかったことを理由に、罰金がかかることもあります。

さらにやっかいなのは、いつもの年度が、次のように3つに分かれること。

  • 通常の年度開始~みなし解散まで
  • その翌日~会社継続の登記の日まで
  • その翌日~通常の年度末

1年について、3回も税金の申告が必要になるのです。

くわえて、計算はおそろしく複雑になってしまいます。

 

会社を休業にするなら、ここまで書いてきたことに注意しておきましょう。

 

まとめ

会社を作ったあとで、いったん事業をストップする。

そんなときは、税金、社会保険、登記それぞれに手続きが必要なことを気にしておきましょう。

もし完全に放置するなら、いつか事業を復活させるときが大変になるかもしれない。

それに、いらぬ罰金も払いたくないですから。

ということを踏まえ、段取りを踏んでから休業するようにしましょう。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。