お金を残す節税のために必ず知っておいてほしい考えかた

節税は、4種類のものにわけることができます。

その節税をかんがえるにあたり、カギになるのは「いくら手元にお金が残るのか」です。

大事なのは、税金かお金か。

お金を残すために必要な考えかたについて、みていきましょう。

なお、今回とりあげるのは事業にかかる税金です。

贈与税・相続税・固定資産税については触れていません。 

 

節税にも4種類ある

節税とは、合法的に税金をへらすことです。

その節税も、つぎの観点から4種類にわけることができます。

  • お金をつかうか・つかわないか
  • 永久に税金がへるのか・課税の繰り延べなのか

 

表にすると、次のとおりです。

 

お金をつかうか・つかわないか

税金は、利益にかかります。

利益の○○%が税金、という風に。

この利益をへらせば、税金もすくなくなるわけです。

 

利益をへらすために、お金をつかうのか・つかわないのか。

この点で、節税の方法がわかれるのです。

 

お金をつかって経費をふやすのは、イメージしやすいと思います。

でも、お金をつかわなくても、利益をへらす方法はあります。

 

永久に税金がへるのか・課税の繰り延べなのか

節税により、今回は税金がへるものの、将来の税金がふえる、ということがあります。

今回はらうべき税金を、将来に先送りする…

これを「課税の繰り延べ」といいます。

 

いっぽうで、課税の繰り延べではないものも、もちろん存在します。

将来になんのツケも残さないものです。

これを「永久に税金がへる」と表現しました。

 

ここまでの説明だとイメージしづらいと思いますので、具体例をみていきましょう。

 

それぞれの具体例

つぎの区分ごとに、具体例をみてみましょう

  • お金をつかう+永久に税金がへる
  • お金をつかう+課税の繰り延べ
  • お金をつかわない+永久に税金がへる
  • お金をつかわない+課税の繰り延べ

 

お金をつかう+永久に税金がへる

 

たとえば、次のものです。

  • お金をつかって経費をふやす
  • 車など固定資産を買う、設備投資をする
  • 売れない在庫・つかわない固定資産を処分する……過去にお金はでていっています

 

お金をつかえば、とうぜん利益はへるので節税につながります。

でも、この方法では、お金はふえません。

むしろ、へった税金以上に、手取りがへってしまいます。

ときにはムダづかいにもつながるため、「節税」を念頭にお金をつかわないように意識しましょう。

税金よりもお金が大事ですから。

 

ただし、次のようなものもあります。

  • 賃上げ促進税制……従業員の給与をアップしたとき
  • 中小企業投資促進税制……条件をみたす機械などを取得したとき
  • 住宅ローン控除(個人のみ)

 

従業員の給与をアップしたり、機械などを取得したり、マイホームを買う。

このようなときは、法人税や所得税がすくなくなる「税額控除」を活用できます。

どれも、でていくお金にたいして節税額は控えめです。

でも、絶対に取りこぼしがないようにしたいものです。

おそらく、これらは「節税」よりも、「必要だから」お金をつかったのではないでしょうか。

 

お金をつかう+課税の繰り延べ

 

たとえば、次のものです。

  • 解約返戻金がある保険に加入する
  • 経営セーフティ共済
  • 小規模企業共済(個人のみ)

 

これらは、いわゆる節税商品とよばれるものです。

毎年、でていったお金におうじて利益がすくなくなるので、その年の税金はへる。

でも、解約したときに、まとまったお金が戻ってくるので、そのときには税金がふえる。

 

大体、でていったお金の80%~100%くらいが戻ってきます。

小規模企業共済は、でていったお金と戻ってきたお金がおなじでも、節税になる可能性は高いです。

それ以外は、戻ってくるお金におうじた臨時の出費をすることにより、将来の税金がふえないようにします。

一般的には、退職金やボーナスを。

 

でも、かならずしも思った通りにことが運ばないリスクを残しています。

退職金やボーナスも、高すぎれば経費にならない部分がでてくることがあるので。

解約返戻金を利用した節税は、とても有名な方法です。

でも、「節税」という言葉に持っていかれすぎないように気をつけましょう。

 

お金をつかわない+永久に税金がへる

 

たとえば、次のものです。

  • 役員報酬の設定により、法人・個人トータルの税金をへらす
  • 青色事業専従者給与を活用する(個人のみ)
  • 消費税の簡易課税をえらぶ
  • 消費税が免税のとき、設備投資にともなってあえて課税事業者になる

 

これらは、お金をつかわない代わりに、頭をつかいます。

あるていど、将来の見通しをかんがえてから、選ぶものだからです。

くわえて、将来が予想どおりにいかないリスクもあります。

その結果、節税にはならないこともあります。

 

……と書くと、あまり魅力がないように感じるかもしれないですね。

たしかに難易度がたかめですが、「将来をかんがえる」という副産物がついてきます。

これって、とても大事なことではないでしょうか。

 

いっぽう、次のものもあります。

  • 青色申告特別控除(個人のみ)
  • マイホームを売ったときの3,000万円控除(個人のみ)
  • 経費のモレをなくす
  • 社長の自宅を社宅にする(法人のみ)……個人・法人トータルで出ていくお金は変わらない
  • 赤字の繰り越しをする

 

これらは、お金をつかわない代わりに、手間がかかります。

ふだんから、ちゃんと帳簿をつくったり、書類をととのえたり……と。

ぜひ取りこぼしがないように、意識してみましょう。

 

お金をつかわない+課税の繰り延べ

 

たとえば、次のものです。

  • 10万円~30万円の固定資産の経理方法
  • 特別償却……条件をみたしたとき減価償却をおおくできる仕組み
  • 固定資産を買ったとき、経費にできるものは経費にする

 

これらは、固定資産を買ったあとで、それらが経費(減価償却費)になる時期をズラすものです。

なるべく、今回の経費がおおくなるように。

でも、トータルで経費になる金額はかわりません。

経費は、今回おおくなったぶん、将来すくなくなります。

今回の税金はへるが、将来ふえる……と。

 

もし、起業時や設備投資をするときに補助金をもらえるなら、つぎの方法もあります。

  • 圧縮記帳

 

もらった補助金にも、税金がかかります。

これを避けるためにおこなう特殊な経理方法を、圧縮記帳といいます。

補助金にかかる税金をへらすかわりに、将来の経費(減価償却費)をすくなくする。

つまり、今回の税金がへる代わり、将来の利益・税金がふえるのです。

起業するときは、お金に余裕がないこともおおいので、手持ちのお金次第で検討してみましょう。

 

大事なのは税金ではなくお金

税金は、利益にかかります。

その利益がへれば、税金もすくなくなりますが、手取りのお金もすくなくなるのが道理です。

税金がへれば、手取りのお金がふえるわけではないことを、まず押さえましょう。

お金を増やしたいなら、やっぱり利益をふやすのが近道なのです。

 

でも、節税のなかには、利益を減らさなくても=お金をつかわなくても、できるものがあります。

お金の代わりに、頭や時間をつかい、手間もかかりますが。

 

また、かりにお金をつかったとしても、事業が成長するお金のつかいかたもあるでしょう。

将来の利益をふやすために。

そして、それに伴ってできる節税もあります。

 

節税という言葉は、いろんなところで目にしますし、誘惑のつよいものです。

でも、本当の節税は、お金をふやすためにおこなうものです。

ある節税が気になったら、「税金がいくらへるか」ではなく、「手取りのお金がどうなるのか」はかならず意識するようにしましょう。

税金よりも、お金を残していくほうが大事ですから。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。