法人成りした年の社長個人の確定申告はどうなるか

意外にややこしいのが、法人成りした年の確定申告です。

もしかしたら「初めて」という感覚になるかもしれないくらいに。

なので、早めに準備をはじめましょう。

 

所得税は1年の所得にかかる

法人成りとは、個人でおこなっていた事業を、あたらしく設立した会社に引き継ぎ、以降は会社としてその事業を続けていくことをいいます。

個人としては、事業をやめることになるのです。

すると、法人成りしたとき、最後の個人事業の申告を「いつ」するのか…という疑問がでてきます。

 

その申告は、個人事業をやめたときではありません。

というのも、個人の税金である所得税は、1年(1月~12月)の所得にかかるからです。

 

会社を設立するまえは、個人事業の収入などがあります。

いっぽう会社を設立したあとは、会社からの役員報酬があります。

所得税の申告では、これらすべてを含めなければならないのです。

 

なので、いつもと同じように、翌年2月16日~3月15日の間におこなうことになります。

(還付のときは、2月15日以前も可)

 

もし、1月1日に会社を設立するなら、両者が混じることはないのかもしれません。

でも、1月1日は法務局がやすみのため、その日に会社を設立することはできない…

なんだかんだ、法人成りした年の個人の申告には、いろんなものが混じることになるのです。

 

では、その申告にはどんなものが含まれるのか…を確認しておきましょう。

 

法人成りした年の確定申告にはどんなものが含まれるか

会社を設立する前・後にわけて、どんなものがあるかみておきましょう。

じつは所得税では、いろんな収入・経費を、10個の所得にわけ、それぞれ所得を計算します。

  • 収入ー経費=所得

その後に合算してから税率を判断し、所得税を計算するのです。

「どんな所得か」ということも意識しましょう。

 

会社を設立する前

会社を設立する前は、もちろん「事業所得」があります。

気をつけたいのは、事業を会社にうつすときに持っている商品や固定資産などです。

というのも、これらをタダで会社にあげると、それはそれでややこしいからです。

 

法人成りするときにつくる会社は、いわば自分のものです。

なので、タダで引き渡すのが、いっけん自然のようにおもえます。

でも、法律上、会社というのは、たとえ自分が設立したものであっても、自分とはべつの他人と位置づけます。

 

たとえば、個人から個人へ、タダでなにかをあげると贈与税の対象になります。

もし、自分のつくった会社にタダでものをあげると、これと似たようなことが起こるのです。

なので、個人の財産を会社に引き継ぐなら、基本的には「売る」ことになります。

ややこしいことになるのを避けるために…

 

そのとき、すべてが事業所得になるわけではありません。

たとえば、次のとおり。

  • 商品……事業所得
  • 固定資産……譲渡所得(総合)

(参考記事)在庫やつかっているものなどを法人に引き継ぐ方法

 

なお、個人で事業をしていると、「事業税」をはらうこともあります。

この事業税は経費になりますが、後払いです。

つまり、個人事業主として最後の申告をしたあとで、納付書がとどくわけです。

となると、最後のぶんは経費にできない……わけではありません。

例外的に、見込みで経費にすることができるのです。

 

すこし複雑ですが、参考情報をのせておきます。

 

(国税庁HPより)

 

会社を設立した後

会社を設立した後は、もちろん役員報酬があります。

これは「給与所得」です。

 

気をつけたいのは、年末調整があることです。

年末調整は、まいつきの役員報酬から天引きされている所得税が、1年分のものとして正しいのか計算するものです。

(所得税の天引きは、前払いなのです)

もし正しくなければ、12月に差額を精算します。

なので、所得税がピッタリになるわけです。

 

そこで、「ピッタリなんだから申告しなくてもよいだろう…」となりがちです。

でも、年末調整には、すべての要素をふくめることはできません。

たとえば個人事業の事業所得、医療費やふるさと納税。

ほかにもありますが、基本的には役員報酬だけで計算をするのです。

 

すると、1年をとおしてみたとき、とうぜん所得税は変わってきます。

まだ計算にふくめていないものがありますし、所得がふえると税率もかわるからです。

なので、役員報酬をふくめることを忘れないようにしましょう。

 

それから、法人成りしたときは、個人事業でつかっていたものを売るのは義務ではありません。

個人のものにしておき、会社に「貸す」という選択肢もあるのです。

すると、建物などなら「不動産所得」、そのほかのものなら「雑所得など」になります。

 

このように、意外にややこしいのが、法人成りした年の確定申告なのです。

 

まとめ

法人成りした年の、社長個人の確定申告がどうなるか…についてみてきました。

 

基本的には、もっている財産がおおいほど、個人の申告は複雑になっていきます。

くわえて、法人成りすると、会社特有の事務手続きなどでいそがしいものです。

でも、個人の申告の準備も、早めにスタートしておきましょう。

きっと、いつもとは勝手がちがう…と感じるはずですから。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。