とりあえず源泉徴収しておくときの問題

給与ではなく、報酬や料金の源泉徴収は、判断がむずかしいこともあります。

とりあえず源泉徴収しておく…という選択肢もあるのですが。

その後にひかえている手続きや、給与かも…という可能性もふまえておきましょう。

 

とりあえず源泉徴収するという選択

報酬や料金の源泉徴収は、必要かどうかが分からないこともあります。

いちどは国税庁が公表している「源泉徴収のあらまし」を見ることをおススメしているのですが。

ただ、それを見てもピッタリ当てはまらないものもあります。

源泉徴収のように法律にもとづいた仕組みは、どうしても時代遅れになりがちですから。

現実でなにか問題があれば、それをおぎなうために法律がつくられる。

だから、かならず後追いになるわけです。

 

源泉徴収をわすれたときの問題は、あとから「払え」と言われること。

場合によっては、延滞税などいくらかの罰金とともに。

それを一度でも経験すると、「よく分からないけど源泉徴収しておくか…」と思ったりするものです。

 

ただ、それをしたときも、実はつぎのような問題があるのです。

  • 納付書をどう書くか
  • 法定調書合計表をどう書くか

 

納付書をどう書くか

報酬や料金が、弁護士や税理士などの士業の仕事にかかわるものであるとき。

その報酬などの源泉所得税は、給与と一緒にはらいます。

でもそうでないときは、べつの納付書をつかうことになります。

 

その納付書には、つぎのとおり「区分」を書かなければなりません。

 

 

 

よく分からないけど源泉徴収すると、ここでつまづく可能性があるのです。

 

法定調書合計表をどう書くか

法定調書合計表とは、つぎのもの。

 

 

 

 

これには、1月~12月のあいだに払った給与や報酬、家賃など。

そして、それぞれから源泉徴収した金額を記入して、税務署へ提出をします。

そのなかほどには、つぎのように報酬や料金を記入する部分もあります。

 

 

 

報酬や料金も、1号~8号という区分にわかれています。

よく分からないけど源泉徴収すると、「○号になるのか」とつまづく可能性があるわけです。

 

ただ、ここまでのことは「間違っていた…」と言えば、そう大した問題ではないといえます。

もしかしたら、ほんらい必要なものよりも多めに源泉徴収していたかもしれません。

でも税金をおおく払ったのであれば、きっと税務署も文句を言わないでしょうから。

取引相手には、確定申告で精算してもらうなり、フォローが必要ですけれどね。

 

よりおおきな問題は、「それは給与じゃないの…?」と言われること。

 

給与ではないか?

ある支払いが、報酬や料金ではなく、給与となってしまうと。

そのときの問題は、消費税です。(社会保険も)

源泉所得税は、逆にすくなくなる可能性もあります。

 

源泉徴収して税務署へはらったぶんは、すこし返ってくるかも。

でも、それ以上に追加で消費税をはらうはめになるかも。

そんな問題があるのです。

 

だから、報酬や料金が「どの区分、○号になるのか」と判断するまえに。

それは給与ではないか…と疑っておくことも必要なのです。

 

報酬・料金と給与の違い

ざっくり言うと、報酬や料金をはらうときは、仕事の成果だけでよいときです。

過程は相手におまかせして、口出しもしない…と。

いっぽうの給与は、働いてもらうこと自体に価値がある。

だから過程もコントロールするし、成果がでなかったときもお金をはらうことになる。

 

相手がフリーランスとして独立しているから、報酬や料金となるわけでもなく。

あくまで「どんな風に仕事をしたか」で判断するのです。

 

とはいえ、そう簡単に割り切れないことも多々ありますよね。

だから、次のようなことを総合的にかんがえて判断することになります。

(とはいえ、むずかしいケースもあるんですけれどね)

 

  • そのサービス内容は、別のひとにさせてもよいものか

報酬や料金をはらうときは、単発的な仕事がおおかったりします。

だから、今回ダメだったら、次はほかのひとに…ということも簡単にできます。

でも給与をはらうようなスタッフは、事業をささえてくれるひと。

そう簡単に変えることはできないわけです。

 

  • こちらの指揮監督を受けるかどうか

うえにも書きましたが、報酬や料金というのは成果にたいして支払うもの。

成果がでないとき、その失敗は相手が被るものなのです。

いっぽう給与は、はたらいてもらったら成果にかかわらず支払うもの。

成果がでないのは、こちらの指揮や監督がわるかった…となってしまうわけです。

 

  • 材料や用具はだれが用意しているか

もし社員のようにスタッフとしてはたらいてもらうなら、こちらが一切の準備をするのが道理です。

いっぽう報酬や料金をはらうなら、もちろん準備から相手におまかせです。

 

 

報酬や料金が、じつは給与とすべきものだったとしても。

おそらく、乙欄や丙欄として源泉徴収すべきものになろうかと思います。

そして報酬や料金じたいの金額も、そこまで多額にならないことも多々あります。

だから、かりに取り違えても全体の被害はそこまで大きくならないかもしれません。

 

ただ、報酬や料金の源泉徴収は、案外ややこしいもの。

そのややこしさを考えるまえに、給与かも…という用心もしておきましょう。

消費税って、けっこう高いですから。

 

まとめ

源泉徴収が必要かどうかは、判断がむずかしいこともあります。

そのときには、とりあえず源泉徴収するという選択肢もあるのですが。

  • もろもろの手続きをするとき、どうするか
  • じつは給与という可能性はないのか

このあたりも踏まえてから、判断するようにしましょう。

 

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。