免税事業者が消費税を請求しない・値引きするときの請求書の書き方
免税事業者はどう請求書を書けばよいのか、という問題があります。
令和11年(2029年)9月までのことですが「税込み・○○%」と入れておくのがよいでしょう。
そうでないと、取引先の納税が増えてしまうからです。
間違いパターン
免税事業者のなかには、消費税を請求しない・または消費税の一部を値引きするというかたもいると思います。
もともとは「110」だったものを、次のように変えるケースです。
(消費税率が10%の前提で説明します)
- 請求しない……「110」→「100」
- 値引きする……「110」→「108」
このとき、請求書はどう書けばよいかという問題があります。
意味合いとしては、本体価格ではなく消費税だけを請求しない・値引くということなので、請求書におきかえると次のようなイメージでしょうか。
- 消費税を請求しないパターン
- 消費税だけ値引くパターン
これらは、いずれも使ってはいけないパターンです。
というのも、取引先からみた場合に「どんな取引に消費税10%がかかるか」は法律で決まっているからです。
それをいじることは、できないのです。
自分目線ではなく、取引先の目線で考えることがポイントです。
経費などで消費税を支払えば、そのぶん税務署への納税は減ります。
そのためには、正しい税率でつくられた請求書や領収書が必要です。
(これらが無ければ、納税は減りません)
上記の請求書は、税率が正しくないため、このままでは取引先の納税が増えてしまいます。
なので、上記のような請求書はつかってはいけないのです。
免税事業者の請求書はどう書くか
請求書に盛り込む内容
免税事業者はインボイスを発行することはできません。
このときの問題は「取引先の消費税の納税がどうなるか」です。
(取引先が消費税の申告をしている、簡易課税をつかっていない、という前提です)
経費などで消費税を支払えば、そのぶん納税が減る、という仕組み。
インボイス制度がはじまってから7年後、令和11年(2029年)10月からは、免税事業者へ消費税がかかる支払いをしても、納税は減りません。
(そのため、消費税を請求しないということに行きつくと思うのですが……)
ただ、そこまでの間、令和11年(2029年)9月までは、支払い先が免税事業者であっても、納税は減ります。
100%ではないですが、インボイス制度がはじまってからの時期により次のとおりです。
- 1~3年目……従来の80%、取引先の納税が減る
- 4~6年目……従来の50%、 〃
この仕組みのため、「110」だったものを「108」に値引くということになるわけです。
しかし、この仕組みをつかうためには、請求書や領収書に次の内容が入っていることが条件です。
(正式には「区分記載請求書」と呼びます)
- 免税事業者の名前
- 取引の年月日
- 取引の内容
- 税率ごとの税込み金額
- 領収書などを受け取るかたの名前
ポイントは「税込み(10%)」は必要だけど「消費税そのものは書かなくてもよい」ということです。
請求書はどう書くか
おそらく「消費税そのもの」は書かないほうが無難だと思います。
最終的には、免税事業者へ消費税がかかる支払いをしても、納税は減らなくなるわけですので。
それを見据えてのことです。
なので、請求書はすべて「税込み」の金額で書くことになります。
たとえば、請求書の一部が次のようになります。
(名前などは省きます)
- 消費税を請求しないパターン
- 消費税だけ値引くパターン
値引きをアピールしたいなら
取引先から「値引きをお願い」と言われなくても、自主的に値引く。
こんなケースもあるでしょう。
その気持ちが相手に伝わらないのも残念です。
そんなときは、次のようなパターンも考えられます。
消費税を書いてもよいが
消費税そのものが載っている請求書をつかってはいけない、というルールはありません。
しかし、「これはインボイスだね」と間違ってしまうようなもの、「インボイスと誤認されるもの」をつかうと罰則があります。
たとえば、「登録番号:なし」とか「免税事業者です」などを請求書に入れておけば安全だと思うのですが、そこまで必要かな?とも思います。
インボイス制度がはじまったばかりで、「インボイスと誤認されるもの」が具体的に何かは、まだハッキリしない状況です。
おそらくですが、税務署のかたが誤認しそうなものが、このルールの対象のはずです。
架空経費などをつかい消費税の納税をドカンと減らす、そんなケースへの備えでしょうか。
普通に仕事をしている人の揚げ足取りみたいなルールではない、と思いたいところです。
まとめ
免税事業者が、消費税を請求しない・消費税の一部を値引きするときの請求書の書き方を解説しました。
令和11年(2029年)9月までのことですが、いずれも「税込み・○○%」と入れておくのがポイントです。
この問題について、もしかしたら国税庁が見解をだすかもしれませんが、取引先との確認も大事です。
「税込み・○○%」と書くのは、取引先のためですから。
※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいています。
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