会計が分かるようになるカギは目に見えないものの存在
お金は目に見えますが、売掛金は目に見えないものです。
目に見えないものの存在を理解できれば、会計もわかり、数字にも確信がもてるようになります。
目次
売掛金は目に見えない
売掛金は、将来お金をうけとる権利です。
商品を売ったり、サービスを提供したときは、代金が後払いのこともあります。
そんなときに出てくるのが、売掛金です。
(飲み屋などのツケも、お店にとっては売掛金です)
もし、販売などをし、それと同時にお金を受けとるなら、会計ではつぎの2つのことを認識します。
- お金がふえる
- 売上がふえる
いっぽう、代金が後払いのときは、つぎの2つのことを。
- 「売掛金」がふえる
- 売上がふえる
お金を受けとったときだけに「売上がふえる」とするなら、会計はずっとシンプルになります。
売掛金は、いらない存在になりますし。
でも、お金を軸にするのではなく、商品やサービスを軸に考えなくてはならないのです。
というのも、つぎの3つのことがあるからです。
- お金を軸にするなら、利益をコントロールできる
- 損益計算書は「どれくらい働いたか」をあらわすもの
- 複式簿記のルール
お金を軸にするなら、利益をコントロールできる
たとえば、「今期は利益が出すぎたな…」とかんじたとき。
もし、お金を軸に売上を「計上」するなら、売上をコントロールできます。
取引先に「この入金、来期にしてよ」といえばよいので。
さらには、利益もコントロールできます。
(計上するとは、「売上ー経費=利益」の算式に組みこむことをいいます)
となると、税金を取る側からクレームがくるかもしれません。
「いつまでたっても税金を払わないじゃないか…」と。
また、粉飾決算も横行するかもしれません。
実態はないのに、とりあえずお金を受けとり、利益を盛る…といった風な。
そんな決算書は、信用できないものです。
損益計算書は「どれくらい働いたか」をあらわすもの
損益計算書は、「どれだけお金がふえたのか」ではなく、「どれだけ働いたか」をあらわします。
もちろん、働いたあとの利益が目的なのですが。
(お金の増減については、貸借対照表で把握します)
もし、お金の出入りをもとに損益計算書をつくるなら…
そこには過去の行動によるもの・将来にすべきことが混じってしまいます。
「今期、どんなふうに儲けたのか」が分かりにくくなってしまうのです。
なので、商品やサービスのうごきを軸に、損益計算書をつくっていくのです。
複式簿記のルール
会計は、複式簿記によっておこないます。
その「複式」が意味するのは、つぎのことです。
- 1つの取引を、2つ以上の面から記録する
たとえば、売上。
「売上がふえた」のなら、かならず「他でなにが起こったか」を記録しなければならないのです。
そこで登場するのが、売掛金なのです。
くり返しになりますが、売掛金とは、将来お金を受けとる権利です。
でも、目には見えないものです。
いっぽう、商品をお客さまにわたしたり、サービスを提供することは、目に見えます。
お金がふえることも、目に見えます。
目に見えるものだけで会計がなりたつのなら、シンプルだし分かりやすくなります。
でも、ここまで書いてきたように、目に見えないものもつかわざるを得ないのです。
それが、会計の難しさでもあります。
会計は目に見えるもの・見えないものが混ざっている
会計において、目に見えないものは、結構たくさんあります。
お金のうごき・モノやサービスのうごき。
この2つがズレるときには、ほぼ必ず出てくるので。
お金や商品・車など姿かたちのある固定資産をのぞけば、ほとんどすべてが目に見えません。
損益計算書では、すべての項目に、お金の出入りを伴わないものが入りこむ可能性があります。
売掛金のように未収だったり、買掛金のように未払いのものが。
これらも、目に見えないものです。
とうぜん、利益も目に見えません。
利益は、目に見えない部分をふくんだ売上・経費の差額ですから。
なので、利益のぶんお金がふえる…ということも起こらないのです。
こういったことが、会計を分かりにくくしています。
決算書が読めない…といった原因にもなるのです。
…ということは、目に見えないものが分かれば、会計も分かるといえます。
そのカギは、次のことです。
- お金のうごきとモノやサービスのうごきがズレると、目に見えないものがでてくる
- 1つの取引は、かならず2つ以上の面から認識する
もしかしたら、目に見えるのは、お金だけかもしれません。
お金だけが現実…なんて言ったりもしますし。
でも、会計において目に見えないものは、ほぼ必ずでてきます。
会計を理解するために、目に見えないものとつきあっていくのは、避けて通れないのです。
まずは、決算書や会計データなどを眺めることからはじめましょう。
そのときに「なにコレ?」とか「こんなものがあるの、おかしくない?」と感じることが出発点になります。
そうした疑問をつぶしていけば、会計も分かるようになります。
そうすれば、経営判断は数字の根拠をもったものになり、確信もでてくるはずです。
まとめ
会計には、お金のように目に見えるものだけではなく、売掛金のように目には見えないものも混じっています。
目に見えないものの理解が、会計の理解にもつながるのです。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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