会社契約の生命保険にはお金の注意が必要
生命保険のなかには、いずれお金が戻ってくることを前提に加入するものもあります。
そうした保険に加入するなら、お金の面で注意すべきことがあるのです。
手元のお金を減らさないために。
掛け捨てではない生命保険
会社を経営していると、生命保険の加入を誘われることもあります。
その生命保険のなかには、掛け捨てではないものがある。
解約返戻金や満期保険金などとして「いずれお金が戻ってくることが前提」のものがあるのです。
それが、つぎの2種類の保険です。
- 養老保険
- 定期保険および第三分野保険
保険というのは、事故があれば保険金がおりるもの。
ただ、これらの保険は、事故がなくてもお金が戻ってくる。
あるいは、戻ってくるようにすることが可能です。
そのため、それ前提で加入することがほとんどだったりもします。
もし勧誘など受ければ、そのことをアピールされるはずですから、きっと気づきますよ。
これらの保険には、そんな魅力があるいっぽう、つぎのデメリットもあります。
- 保険料の全部または一部が、経費(正確には損金)にならないことがある
というのも、この生命保険を利益調整につかうこともできるからです。
決算がちかづいて利益がみえてきたときに加入する…という風に。
そこで、生命保険会社が「お金が戻ってくることが前提」の保険を開発すると、しばらく経ってから国税庁が利益調整の穴をふさぐように手当をし、さらに新しい保険が開発され、また手当され…
こんないたちごっこが繰り返されてきたのです。
いまでは、変額保険のいちぶにも、うえのデメリットがあります。
「貯蓄」とか「資産形成」という言葉をきいたら、このデメリットがあるかも…と意識しておきましょう。
具体的にどれくらいが経費にならないか…は、とても複雑になっています。
なので今回は詳しいことを書きませんが、利益調整につかえることは事実。
そのとき、お金の面で知っておいてほしいことがあります。
生命保険に加入するなら
カギになるのは、保険料のすべてが経費にはならないことがあるということ。
つまり、お金がでていったのに、経費にならない…と。
保険料のうち「50%」が経費にならないという前提で。
たとえば、利益が「100」のとき。
ここで「100」の保険料をはらうと、どうなるか。
保険料のうち「50」しか経費にならないので、利益は「50」になります。
「0」になるわけではないんですね。
さらに、うえとおなじ条件で、お金を「100」もっていたとしましょう。
利益が「100」なので、お金も「100」増えたと。
すると、利益が「50」になるいっぽうで、お金は「0」になります。
出ていったお金に経費にならない部分があると、利益とお金にズレが生まれるのです。
ここからが複雑なところなんですが…
こうした状況で、手元のお金を減らさないためにはどうすればよいか…?
そのためには最低限、経費にならない金額とおなじだけ、利益を出さなければならないのです。
それがちょうど、うえの例です。
利益が「100」で、お金も「100」増えている。
その状態で「50」しか経費にならない保険料を「100」はらう。
すると利益は「50」になり、お金は「0」。
つまり、黒字ではあるけれど、お金の増減はない。お金は減っているわけではない…と。
これを言い換えると、手元のお金を減らさないためには、絶対に黒字にしなければならない。
ついでに、法人税等も払わなければならない。
もし、利益が経費にならない金額をカバーしていないなら、手元のお金はかならず減っています。
会社契約で生命保険に加入するなら、これを前提に保険料をいくらにするか…を検討しましょう。
まとめ
会社契約の生命保険には、解約返戻金などとして、いずれお金が戻ってくることが前提のものもあります。
それは税金を減らすこともできますが、お金の面では注意も必要。
じつは、税理士と生命保険業界には、あんがい強めの結びつきもあります。
生命保険のかたが、税理士にお客さまを紹介してくれるという。
営業のかたはやっぱり聞き上手というか、税理士に不満がある…ということも聞いていたりするんですね。
そこで不満があるなら、その営業のかたが懇意にしている税理士に、そのかたを紹介したりするわけです。
わたしも、過去に生命保険のかたにお客さまを紹介されたことがあります。
ただ、そのお客さまは、今回書いたようなお金の面は理解していないように見受けられた。
そこで、お金の実態を伝えるまえに、かなり葛藤した思い出があります。
もしお金のことを知り、「じゃあ保険はやめる」と言われれば、恩をあだで返すわけですから。
最後にもうひとつ。
たとえば解約返戻率が80%ということは、のこり20%は戻ってこないわけです。
その部分は、掛け捨ての保険とおなじ。
それと保障をくらべましょう。
保険というのは、事故がなければ、ほんらい掛け捨てになる仕組みですから。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。