【法人成り】在庫や使っているものなどを法人に引き継ぐ方法
法人成りしたときに、個人で持っていた在庫や固定資産をどうするか?という問題があります。
当然、設立した会社で売ったり使ったりすることになるのですが、個人と会社は別の人です。
何もしないで会社のものになることはないので、タダであげる・売る・現物出資をするなどの方法を取る必要があります。
目次
タダであげる、すごく安く売る
法人成りして設立した会社は、自分の会社です。
自分の在庫や固定資産を、その会社のものにするために、タダであげたり、1円で売ったとしても反対する人はいないでしょう。
出来る・出来ないで言えば、出来るわけです。
もし、同じものを赤の他人・第三者のものにするには、いつもの値段で売ると思います。
固定資産であれば、世間の相場を考えて値段を決めますよね。
そうすると、儲けがでるので税金を払うことになります。
相手次第で、税金が変わってしまうことに、実は問題があるのです。
個人の側の問題
相手がたまたま自分が作った会社だっただけで、本来であれば取れるはずの税金が取れないことを税務署としては嫌がります。
そこで、次のような値段で売ったことにして税金の計算をしなさいね、というルールになっています。
在庫(商品)……通常の売値の70%
固定資産…………中古市場での価格(いわゆる時価)
※ 中古市場の価格が分からない場合も多々あります。そのようなときは、帳簿上の金額を使うこともできますが、長く使っているものは帳簿上で1円となっていることもあります。これを鵜呑みにはできないので、その場合は調べる作業が必要になります。
問題は、会社からお金を受け取っていないのに、税金を払うはめになる、ということです。
会社の側の問題
法人は、基本的に、いつでも時価を基準にものごとをみていきます。
タダでものを貰ったり、まっとうな値段がついているものを1円で買えたときなどは、そのまま何もしない訳ではなく、「時価が○○円なので、△△円のトクをした」ということを帳簿に残します。
その「トクをした分」が収入になり、税金がかかってしまうのです。
「トクしたけどお金をもらってないよ、でも税金を払うの?」というより、「お金が出ていってないんだから、その分残っているでしょ」という理屈です。
こういうルールがないと、会社をいくつか作ることで利益調整ができてしまう、というのが税務署側の見方です。
そこで、会社は、第三者と取引をしたらどうなるか?ということを基準に経理をするようになっています。
この方法は……
通常であれば、この方法はあまりおススメしていません。
お金がないのに税金を払う、ということは避けたいですので。
しかし、法人成りするのにあたって設備投資をするような場合もあり、お金が足りない!という状況もあるかもしれません。
商品が売れれば、そのお金でやりくりできる、という可能性を考慮して、部分的に、金額は少なめに、この方法を使う余地はあるかもしれないです。
時価で売る
いつもの値段、世間の相場(時価)で、個人から会社に売り、お金のやり取りもおこなう方法です。
この場合に問題になるのが、じゃあ時価っていくらなの?ということです。
商品などの在庫
基本的には、いつも販売するときの値段です。
ただし、この値段の70%以上であれば時価として認められます。
前受金・前払金
売上は商品やサービスを相手に渡したときに、売上となります。
商品などを相手に渡す前にお金を受け取ることもありますが、それが前受金です。
経費などについても、モノやサービスを受けたときに経費や仕入となります。
そのモノやサービスを受ける前に支払ったお金が、前払金です。
これらは、そのままの金額で、引き継ぎます。
前受金と同じ金額を会社に渡し、前払金と同じ金額を会社からもらいます。
固定資産
もし、それを市場で売ったらいくらになるか?
これが時価ですが、原則として、この金額で会社に売ることになります。
時価が分からない場合は、個人の帳簿上での金額を使うケースもありますが、1円などあきらかに安い場合は避けましょう。
借入金
借入金を返済するときの利息は、個人でも会社でも、経費になります。
もし、個人から会社に名義変更できれば、経費が増えるのです。
ただし、借入れたときの担保や連帯保証、金融機関の手数料などの問題がありますので、名義変更に見合ったメリットがあるのかを検討する必要があります。
現物出資という方法
会社を設立するときや増資をするときは、お金で出資することが一般的ですが、お金以外の財産で出資することもできます。
これを、現物出資と言います。
税務上、この方法は、出資する財産を時価で売ったとしてお金にかえ、そのお金を出資したと考えます。
ですので、個人に財産を売った分の税金がかかるのです。
また、出資する財産の時価が500万円を超えるような場合などは、裁判所が選んだ検査役により、時価などが適正かどうかをチェックされます。
時間や費用がかかるわりに、個人にとっては、会社に財産をタダであげたのと同じような結果になってしまうのです。
※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいております。
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