年収の壁を理解するのに必須な2つのこと
所得税がゼロになる年収の壁。
それを理解するには、給与所得控除と基礎控除。
この2つのことがカギになります。
給与所得控除
所得税の計算は、おおざっぱに2段階に分かれています。
その1段階目でおこなうのは、つぎのこと。
- 収入から経費をひき、所得(儲け)を計算する。
これは、役員報酬や給与・ボーナスについてもおなじです。
税法では、これらをまとめて「給与」といいます。
この給与にも、経費にあたるものが存在するのです。
それを「給与所得控除」と呼んでいます。
これを図にすると、つぎのとおり。

給与にかかる所得税は、年収ではなく、経費をひいたあとの所得をもとに計算する。
個人事業主であれば、領収書などから経費を集計するのはご存じかとおもいます。
給与をもらうかたも、付き合いや消耗品などで、経費はかかるはず。
ただ給与をもらうかた、いわゆるサラリーマンの数はとても多いです。
すべてのかたが個人事業主のように集計をしなければならない…とすると。
きっと大混乱になるでしょう。
そこで給与については、年収におうじて「自動的に」経費が計算されるようになっています。
わざわざ領収書などを集計する必要はないのです。
かりに集計をしたら、実際にかかったものくらべ、損得が生じる可能性はある。
ただ、それも織り込み済みで定められているものなのです。
その給与所得控除の金額が、つぎの表です。

(国税庁HPより。この記事を書いている時点のもの)
見てほしいのは、右上にある「650,000円」という数字。
これは最低保証です。
どんなかたも、最低これだけの給与所得控除はみとめられる。
給与の所得がマイナスになることはないので、たとえば年収が20万円なら、給与所得控除も20万円になるんですけれどね。
令和6年度の税制改正では、この最低保証を増やすことで、年収の壁が引き上げられました。
つぎに年収の壁が変わるときも、ここが改正される可能性はあるでしょう。
なお、年収の壁という言葉は、収入が給与「だけ」のかた向けのもの。
給与所得控除が自動的にきまるので、年収まで逆算するのが簡単ということもあるんですけれどね。
そのほかの収入があるかたには、実額の経費をつかう都合で、この言葉はつかわれません。
ひきつづき2段階目の計算もみていきましょう。
基礎控除
所得が割りだせたら、そこから所得控除をひき、課税所得を計算します。
その課税所得に税率をかけると、所得税が計算されるのです。

うえの「所得控除」は、社会保険や医療費、扶養の家族などの要素が組みこまれます。
そのなかのひとつに「基礎控除」と呼ばれるものがあります。
これは、基本的にはだれでもつかえるもの。
その根拠が、つぎのことと言われています。
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
(憲法25条より)
そして金額は、つぎのとおり。

(国税庁HPより。この記事を書いている時点のもの)
うえの給与所得控除とおなじく、令和6年度の税制改正では、この基礎控除も改正されました。
それにより、年収の壁が引き上げられた。
つぎに年収の壁が変わるなら、ここも変わる可能性はあります。
給与所得控除の最低保証が「65万円」。
そして基礎控除の最低保証が、令和7年では「95万円」。
この2つをあわせた「160万円」が、この記事を書いている時点での年収の壁です。
まとめ
年収の壁を理解するには、給与所得控除と基礎控除がカギになります。
所得税、個人の住民税もそうですが、「所得」と「控除」。
この2つの言葉がやたら登場します。
そこでややこしくならないためには、計算過程のどこにいるかを意識してみましょう。
いったん覚えてしまえば、たとえ数字が変わったとしても、戸惑わなくなりますから。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。

