経理の目的は見えなかったものが見えてくること

経理は、事業を数字であらわすためにおこなうものです。

その数字があるから、見えてくるものがあります。

 

経理とは何をするのか

経理とは、日々のお金の出入りや取引を記録して、経営がスムーズにはこぶようにお金や数字を管理することです。

なので、その仕事は多岐にわたります。

お金や数字にまつわるすべてなので。

 

そのなかに優劣はありませんが、経営者にとってとくに大事なのは「いま事業はどういう状況なのか」でしょう。

売上や利益、それからお金の残高など…

つまり、会計ソフトに入力をし、事業がどうなっているかを数字でも把握することが重要なのです。

利益やお金も、事業のおおきな目的のひとつですから。

 

そのためには、つぎの手順をふんでいきます。

  • 資料をあつめる
  • 会計ソフトに入力する
  • 入力された数字を、試算表などで確認する

 

…と書くとたった3行ですが、実際には大変です。

資料をあつめるにしても、とどかない請求書、わざわざダウンロードしなきゃいけないもの、事業とプライベートのものが混ざっているレシートの束…

これらを整えるだけでも一苦労です。

くわえて、これらが溜まってくると気が滅入るものです。

「やらなきゃいけないのか…」と。

この段階で、すでにやる気がなくなってしまうこともあるわけです。

 

ただ、ものごとを数字で把握することも大事なのです。

 

数字の力

数字というのは、具体的です。

たとえば、ある高いビル。

これが「30階建て」ということがわかると、「高い」がよりハッキリしてきます。

でも、これだけでは「だからなに…?」となってしまうでしょう。

 

もし、そのビルの隣に「20階建て」のビルがあったのなら…

20階建てでも、じゅうぶん高いビルです。

でも、30階建てよりは低い。

数字があることで、「高い」にもいろいろあることが分かるのです。

そして、「高い」が具体化されると、くらべることもできる。

「差は10階分だな…」と。

 

さらに、もし2つのビルのうち、ひとつが自分のものだったのなら…

高い低い・○○階建…という情報にも、グンと興味がでてくるはずです。

「建てるのにいくらかかったのかな」

「土地はいくらだったのかな」

「どんな運用しているのかな」

「どこの不動産屋が仲介しているんだろう」

「家賃はいくらかな」

「差は10階分だから、収入の差は○○円くらいかな…?」

もしかしたら「建て直そうかな…」とも。

 

つまり、数字はものごとを具体的にするものですが、単独では意味をもたないこともある。

くらべることで、意味をもってくるのです。

そのくらべるのも、数字があるからできること。

 

そして、興味や関心をもつことで、背景にあるものにも想像をかきたてられる。

興味がさらなる興味をよぶのです。

これも、数字があるから起こること。

 

ここまでは、ふだんの生活のなかでも起こり得ることです。

事業をしているなら、もうすこし続きがあります。

 

経理の目的は見えなかったものが見えてくること

たとえば損益計算書には、たくさんの数字がならんでいます。

売上や利益は、いわば過去の行動の結果です。

そして経費は、売上や利益をつくりだした原因です。

損益計算書は、原因と結果があらわれているのです。

 

もし、原因と結果を関連づけることができるなら、そこに意味がでてきます。

「○○したから、○○になった」という風に。

たとえば「広告費を使いすぎちゃったから、利益がへった」などと。

 

そして、いまの結果に満足していないのなら、変えていくこともできるでしょう。

原因がわかっている…といえますから。

広告費だったら、外注する代わりに自分でやったり、広告する商品などを絞る・変える、あるいはちがう広告先をさがす…などと。

 

つまり、数字をたんにくらべるのではなく、数字を関連づけられると、原因と結果がわかるのです。

それは、結果、つまり将来を変えていくきっかけにもなります。

 

そのときに、どう変えていくか。

興味や関心があれば、ここでも数字が役に立ってきます。

 

たとえば「あと100万円利益をふやしたい」

このとき考えられることは、次のようなことです。

  • 経費をけずるか
  • 売上をふやすか
  • 経費をふやし、それ以上に売上をふやすか
  • 利幅のひくい売上をへらし、経費をけずることの合わせ技
  • 過去に利益がふえたときは、どんな状況だったか
  • どれくらいの時間をかけて達成するか
  • 何もしなくても、ふえるのか
  • まわりの環境はどう変わりそうか
  • 従業員のモチベーションはどうか
  • あたらしい商品を開発するか

 

これらは、すべて「あと100万円」が出発点です。

その「あと100万円」は、数字があったから、現状を知ったからでてきたもの。

 

おうおうにして、必要なものというのは、じつは目の前にあったりします。

それを目に見えるようにするのが、経理の目的です。

過去や現在だけではなく、将来の選択肢まで目に見えるようになるのです。

 

経理というのは、どうしても「本業のあと」になりがちです。

それが直接にお金をうむわけではないので。

また、成りゆきに任せていても、上手くいくこともありますし。

ただ、ここまで書いてきたことがあるので、「活用しないのはもったいない…」と思うのです。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。