経営セーフティ共済の節税効果と解約時の注意点
経営セーフティ共済は、加入しているときの掛金により税金がすくなくなります。
いっぽう解約したときには収入がふえますが、そのときに臨時の出費をあてることにより、税金がふえるのを防ぐことも可能です。
ただ、この臨時の出費が難しいのです。
そのときの注意点などをみていきましょう。
目次
経営セーフティ共済とは
経営セーフティ共済は、正式には「中小企業倒産防止共済」といい、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している制度です。
加入できるのは「中小企業」にあたる個人事業主や法人ですが、すくなくとも1年以上は事業をおこなっている必要があります。
くわしくは「経営セーフティ共済 加入資格」などと検索しましょう。
加入すると、毎月5,000円~20万円のあいだで、自分で決めた掛金を払うことになります。
この掛金は、掛け捨てではなく、積み立てていくものです。
ただし、青天井でどこまでも積み立てられるわけではなく、最大で800万円までです。
800万円までは、毎月の掛金が……
- 20万円なら……40カ月(3年4カ月)
- 10万円なら……80カ月(6年8カ月)
- 5万円なら……160カ月(13年4カ月)
そして、もし取引先が倒産するなどして、売上の代金を回収できなくなったりすると……
そこまでに積み立てた掛金におうじて、借入れをすることができます。
この借入れにより、倒産が連鎖してしまうことを防ぐわけです。
なので「中小企業倒産防止共済」というネーミングなのです。
この借入れは、当然ながら返済するものです。
もし、金融機関などで借入れに苦労したことがあれば、それなりのメリットに感じるでしょう。
でも、そうでなければ、あまりメリットを感じないかもしれません。
この経営セーフティ共済は、令和5年(2023年)3月時点で、約62万の事業者が加入しています。
この人気の理由は、「解約手当金」にあるのです。
それが「節税」にもつながります。
経営セーフティ共済の節税効果
解約手当金とは、経営セーフティ共済を解約することにより、そこまでに積み立てた掛金がもどってくるものをいいます。
最大で、掛金の「100%」がもどってきます。
なので、運用益にあたるような上乗せのものはつきません。
ですが、掛金の滞納などがなく、掛金を40カ月以上積み立てていれば、「100%」がもどってきます。
この解約手当金は、収入となり、税金もかかります。
いっぽうで、毎月の掛け金は、経費にすることができます。
掛金を払っているときの節税
掛金を払っているあいだは、次のとおり節税効果があります。
- その年度の掛金×税率○○%=節税額
なお、掛金を経費にするためには、次の添付書類が必要なことに注意しておきましょう。
- 個人……特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書
- 法人……特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書、適用額明細書
もし赤字なら、税金は減りようがないです。
でも、その赤字を将来の黒字と相殺し、将来の税金がすくなくなる可能性もあります。
ただ、掛金を払うためにもお金が必要なので、経営セーフティ共済に加入するなら、ある程度は黒字がつづく状態が望ましいです。
解約手当金にかかる税金
解約手当金は収入となるため、税金がかかります。
かりに掛金の「100%」がもどってくるのなら、掛金トータルと解約手当金はおなじ金額になります。
そこまでの節税額と、解約手当金にかかる税金もおなじになる……?
大筋は、その通りです。
ただし、個人も法人も、利益がふえると税率も上がるようになっています。
- 掛金をはらっているとき
- 解約手当金をもらうとき
この両者の兼ね合いによっては、いくらかの損得がでてくる可能性はあります。
でも、これだけなら過去に支払うべきだった税金を、将来に先送りしただけ。
これを「課税の繰り延べ」といいます。
加入してから解約するまで、トータルの節税としてはインパクトが大きくはなりません。
そこでよく行われるのが、「解約するときに臨時でおおきめの出費をする」ことです。
たとえば退職金やボーナス、仕事にみあった範囲で役員報酬の増額など。
場合によっては、赤字のときに解約するのもアリです。
普段の掛金は、いざというときに黒字にするための備えとも言えます。
ただ、解約するときに何もしないなら、基本的に得られるものは「いざというときに借入れをする権利」だけだと思っているほうが現実的です。
実際、解約するときにどんな出費をするかは難しいときがありますので。
たとえば次のような出費をするときは、気をつけたいことがあります。
解約時の注意点
解約手当金を受けとるときに、次の出費をするなら、それぞれ気をつけたいことがあります。
- 設備投資、大型の修繕
- 名ばかり退職金(法人)
- 源泉所得税や社会保険の未払い分、その他の未払金などをはらう
設備投資、大型の修繕
設備投資や大型の修繕は、その支払いがすべて経費になるとはかぎりません。
おおくの場合は、減価償却により、何年かに分けて経費にしていきます。
そのため、お金を「100」つかっても「10」しか経費にならない、というような事はよく起こります。
その結果、残ったお金は「0」なのに、いくらか利益がでてしまう……
このようなことに繋がります。
そのときの税金や、設備投資などをしたあとの事業資金をどうするか…?
そこまで考えてから、決断するようにしましょう。
名ばかり退職金(法人)
解約手当金を、そっくりそのまま、あるいはそのほとんどを退職金として渡す。
でも、その退職金を受けとった後も、今までと同じように働いている……
こんなときの退職金は、もし支払う相手が社長や役員・その家族のときは、経費にはなりません。
退職とは、仕事をやめることです。
とうぜん会社からも出ていく。
これが基本なので、退職金ではなく、ボーナスとして扱われることになるのです。
(事前確定届出給与の条件を満たしているなら経費になります)
なお、退職金をうけとる前と後で、仕事内容や働きかたがクッキリ変わるのなら、会社に残りつつも、その退職金が経費になる余地はあります。
ただし、それなりの準備や注意が必要です。
「退職金 分掌変更」と検索してみましょう。
源泉所得税や社会保険の未払い分、その他の未払金などをはらう
源泉所得税も社会保険も、給与の一部です。
これらの金額(会社負担のものはのぞきます)は、給与をはらったときに経費になっています。
そのため、未払い分をはらったときは、経費になりません。
この仕組みは、過去の年度で経費になっている未払金などについてもおなじです。
未払金が登場する仕訳をみてみましょう。
- ○○費 ×××円 / 未払金 ×××円
すでに経費になったものが未払金や未払費用、未払○○なので、お金がでていっても経費はふえません。
利益も税金も、減らないのです。
このことを踏まえて、お金の使いかたを考えましょう。
まとめ
経営セーフティ共済にかかる節税効果や解約するときの注意点についてみてきました。
せっかく経営セーフティ共済に加入するなら、解約するときにどうするかも考えてみましょう。
もちろん、将来どうするかは置いといて加入するのもアリですが、なにかを選ぶときは「将来に起こること」を分かる範囲で押さえてからのほうがよいと思いますので。
なお、令和6年(2024年)10月以降に解約し、再加入する場合は、解約してから2年間は掛金をはらっても経費にならないので注意しておきましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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