法人で初めての決算をする前に知っておきたい経理のこと
決算は、後から変えることができません。
そして、税金だけではなく、いろんな場面でつかう可能性があるものです。
人に見せてもいいように、前もって準備してからつくるものなのです。
そのときに気をつけることについて、みていきましょう。
目次
決算の期限と段取り
決算は、会社の1年度の業績を計算する作業です。
どれくらいの利益があって、どんな財産がいくら残っているか。
こうしたことをあらわす損益計算書(利益)や貸借対照表(財産)をふくむ、決算書をつくることになるのです。
それから、その決算書をベースに税金の申告書をつくります。
税金は、1年度が終わってから「2か月以内」に申告をし、税金も納めなければなりません。
この期限を過ぎてしまうと、延滞税などの罰金がかかってしまいます。
つまり、年度が終わったら2か月以内に、決算と申告を済ませなければならないのです。
たとえば…
- 年度が1月~12月なら……期限は2月末
- 年度が4月~3月なら……期限は5月末
なお、経理には決算特有のものもあります。
そのため、「年度が終わる2か月前くらいから準備」をするのがよいです。
足かけ3~4か月くらいはみておきましょう。
では、その決算をする前に知っておきたい経理のことをみていきましょう。
初めての決算をする前に知っておきたい経理のこと
決算をする前に知っておきたいのは、次のことです。
- 決算書を作るときに気をつけること
- 消費税の計算方法
- どう税金を払うか
こうしたことを知っておけば、後から慌てるとか、税金をちょっと失敗するということを避けられるかもしれないので、それぞれ順にみていきましょう。
決算書を作るときに気をつけること
決算書は、会計ソフトのボタン一つで作れるものです。
なので、「会計ソフトに入力するときに気をつけること」と思ってくださいね。
たしかに決算の期限は「2か月以内」ですが、会計ソフトの入力が終わったら税金の申告書がまっています。
そのため、会計ソフト入力は「1.5か月以内には終える」と思いましょう。
ギリギリになってしまえば、あわてて税金をはらうことにもなってしまうので。
そして、会計ソフトに入力するときに気をつけるのは、次のことです。
- 仮受金・仮払金を残さない
- 役員への貸付金は精算しておく
- 預金や売掛金の残高を合わせる
- 在庫の棚卸しをする
- 雑費は大きくしない
それぞれを簡単に説明します。
- 仮受金・仮払金
この2つの科目は、お金の出入りがあったものの「内容がよく分からない」ときに使います。
自分の決算に「よく分からないところがある」って聞こえが悪いです。
なので、内容を調べて、ちがう科目に変えましょう。
- 役員への貸付金
役員への貸付金があると、融資をうけるときに問題になります。
「せっかくお金を貸しても、役員が個人的につかう可能性がある」と捉えられてしまうからです。
年度が終わる前に、精算しておきましょう。
- 預金や売掛金の残高
この2つだけではなく、貸借対照表にあるすべての科目について、残高を合わせるようにしましょう。
その残高にいたった経緯があっているかを調べるのです。
もし、残高が合っていないなら、道中でなんらかの経理ミスがあったことを意味します。
そして、そのミスは次の年度へ繰り越されてしまいます。
場合によっては決算をやり直すこともあるので、残高を合わせておきましょう。
- 在庫の棚卸しをする
棚卸しとは、在庫の数をかぞえることをいいます。
年度末で売れていない在庫は経費にならないため、利益と税金に影響します。
倉庫だけではなく、移動用の車に積んであるもの・だれかに預けているものも含めて、在庫の棚卸しをしましょう。
また、これをふまえて年度末のスケジュールを組むようにしましょう。
- 雑費は大きくしない
雑費は、金額がちいさく、ほかの科目にあてはまらないものを入れる科目です。
なので、通常はあまり大きくなりません。
もし雑費が大きくなると、税務調査などで注目を浴びるので、ほかの科目にできるものは変えておきましょう。
消費税の計算方法
消費税の計算方法には、つぎの3つの方法があります。
- 原則的な方法
- 簡易課税
- 2割特例
それぞれの詳細は省きますが、もし会社設立1期目に「簡易課税」をつかうなら、「1期目中」に税務署へ届け出をする必要があります。(設立1期目以外は「前年度中」に届け出が必要です)
なので、年度が終わる前に、消費税の試算をしておきましょう。
それから選ぶ、と。
このときは、どうしても「見込み」で判断することになります。
そして、簡易課税は、いちど使うと2年間は使いつづけなければならない、という縛りもあります。
ですが、計算方法により消費税の納税は変わります。(場合によっては大きく)
設立1期目だけの特典ですので、見過ごすことがないようにしましょう。
どう税金を払うか
年度が終わってから2か月目の上旬あたりに、税務署や都道府県税事務所などから税金の納付書が送られてきます。
これを無くさないようにしましょう。
もし無くすと、税務署まで取りにいくはめになるので。
なお、税金はインターネットバンキングやダイレクト納付という方法でも払うことができます。
(ダイレクト納付は、税金の申告をした後で、日付指定で口座引き落としにより払う方法です)
ただし、事前の手続きが必要なので、年度が終わる1カ月前くらいまでに目途をつけておきましょう。
決算が終わったら
決算が終わったら、次の2つのことをしましょう。
- 書類の保存
- 新年度の役員報酬の設定
書類の保存
決算書をつくる過程で必要だった請求書や領収書など。そして決算書などの書類は、保存しなければなりません。
これは自分のためでもあるんですが、法律上のルールでもあります。
その期間は「10年間」です。
税務上は「7年間」と言われることもありますが、会社法では「10年間」とされています。
法律のこともありますが、いずれ役に立つ可能性もあるので「10年間」は保存しましょう。
新年度の役員報酬
決算が終わったら、新年度の役員報酬をいくらにするかも検討しましょう。
つぎの年度がどういう展望になるかをふまえて。
もし役員報酬を変えるなら、新年度が始まってから3か月以内におこなう必要があります。
新年度がはじまってから2カ月目に決算・申告をし、3か月目に役員報酬を変更する。
このような流れが一般的ですが、もちろん新年度1か月目から変えても問題ありません。
ただし、役員報酬は株主総会などで決めるものです。
そのときの「議事録」を作っておきましょう。
まとめ
法人で初めての決算を迎える前に知っておきたい経理のことについてみてきました。
決算は、後から変えることができません。そして、いろんな場面でつかう可能性があるものです。
「変えておけばよかった」「失敗した…」ということがないように「前もって」準備しましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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