経営における数字の感覚を身につけるには
数字の感覚がないと、「思ったより利益がでていない…又はでている…」ということになりがちです。
このズレは、最終的にはお金の問題となって返ってきます。
それを避けるには、ズレに気がつき、調整していくことが必要です。
この問題について、みていきましょう。
数字の感覚がズレることもある
「いま、どれくらい利益がでているのかな…」
経営者であれば、折にふれてこんな疑問がでてくると思います。
定期的に会計データをみていたり、数字の感覚をもっていれば、ピタリとは言わずとも、現実とだいたい似た数字が頭に浮かぶでしょう。
でも、そうでなければ、次のようなこともあるかもしれません。
- 思ったより利益がでていなかった
- 思ったより利益がでていた
それぞれの原因や、感覚とのズレが引き起こすことを考えてみましょう。
思ったより利益がでていなかった
思ったより利益がでていなかった…も行き過ぎると、「黒字と思っていたのに赤字だった」となってしまいます。
このズレは、お金をもっているときに起こりやすいです。
あとから答え合わせをすると、利益よりもお金の増えかたのほうが大きいときです。
たとえば借入れをしたとき。
あるいは、年度がはじまるときの売掛金が平均よりも大きかったとき。
つまり、お金がはいってくるのに、それを収入とはカウントしないことがあるときです。
ほかにも、事業全体をみていないときにも起こりがちです。
たとえば、現場では「粗利」がでているのに、現場以外でかかる経費が「粗利」をこえるとき。
「粗利」は、売上から現場でかかる経費だけをひいたものです。
そこから、さらに現場以外でかかる経費をひいたものが、最終的な「利益」なわけです。
現場のことはよく分かっているけれど、ほかは誰かにお任せ…というケースで起こりがちなことです。
このように「思ったより利益がでていない」ことがあると、いつか「思ったよりお金がない」ということにつながります。
というのも、利益とお金の増減は、最終的には一致するからです。
もし、いまお金に困っていれば、「思ったより利益がでていない」とは感じないはずです。
普通は、お金がなければ、利益もでていないだろうと考えるので。
「思ったより利益がでていない」状態では、お金には困っていないはずなのです。
でも、いつか利益とお金の増減が一致するときに、そのギャップが解消されてしまいます。
逆の現象がおきるのです。お金がないのに利益がでる、といった風に。
そして、そのときにビックリしてしまう……と。
思ったより利益がでていた
さきほどとは逆に、「赤字と思っていたのに黒字だった」ようなケースです。
このズレは、お金がでていったのに経費にならないものがあるときに起こりやすいです。
よくあるのが車などの固定資産を購入したときです。
収入が「100」あったとして……
その「100」で車を購入したとしましょう。
このとき、お金は「100」はいってきて「100」でていくので、残高は「0」です。
でも、利益はいくらか出てしまいます。
車「100」のうち、経費になるのは、減価償却により「100の一部」なので。
このような「お金がでていったのに経費にならない」ことは、次のようなときにも起こります。
- 在庫がある
- 返戻率が一定以上の生命保険に加入した
- 事務所の敷金や保証金など
- 借入金の元本返済
- 会社のお金をプライベートでつかった
- 株式などの金融商品に投資した
「思っていたより利益がでていた」ときは、「お金がこれだけしかないのに、なぜ…?」というケースがほとんどです。
この現象は、商品や固定資産を持たざるをえない業種では、ずっと付き合っていかなければならないものです。
なので、いつも「今あるお金で事業をまわせるか」を注意しなければなりません。
もし、どこかで支払いがストップしてしまえば、そこで事業が終わるからです。
この数字感覚のズレは、放置できないものなのです。
数字の感覚を身につけるには
数字の感覚を身につけるには、「ズレていることに気がつく」ことが必要です。
もちろん、気がつく前に「これくらいかな」と思っていることも必要ですが。
どうしても税金の申告があるので、最低でも1年に1回は事業の数字をみているはずです。
そのときに、どんな感想をもっているでしょうか。
もし「思ったのと違う」なら、数字をみる間隔を小まめにしていきましょう。
1年に1回だったものを、2回・3回……と。
ズレも、最初は小さかったのに、時間をかけるとどんどん大きくなっていくことがありますから。
数字を見るたびに、このズレを調整していくわけです。
そのときに、ズレにも「気がついている」と。
そして、ズレを調整するには「なぜ違うのか」を知らなければなりません。
もしかしたら、人によっては「知らないことが恥ずかしい」とか「間違ったことが恥ずかしい」という気持ちもあるでしょう。
でも、事業にかぎらず生きていれば、「知らない」「間違う」ということはたくさんあるものです。
それがなければ、進歩もないといえます。
人によっては最初のハードルを高く感じるかもしれませんが、分からないことは「分からない」と言い切りましょう。
会計や決算書は、いっけん複雑ですが、つかわれているのは足し算・引き算・掛け算・割り算の4つが基本です。
いわば「算数」で十分なのです。
電卓だってつかってよいし。
数字の感覚を身につけるには、「ズレていることに気がつく」ことと「その原因を小まめに調整していく」ことが必要です。
もし数字の感覚をもっていたら、自分の判断にも「根拠がある自信」をもてるようになります。
すると、お金の使いかたも変わります。
経理は小まめにやっておきましょう。
まとめ
経営において数字の感覚をもっていないと、最終的にはお金の問題をかかえることにつながります。
事業の目的であるお金は数字であらわされるので、その数字の感覚をもっておくことは大事です。
身につく期間はひとそれぞれですが、気になったら早めに取りかかりましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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