初歩的な質問こそ税理士の腕の見せ所

ものごとは、初歩的になればなるほど、本質にちかづいていきます。

初歩的=簡単ではないのです。

ゆえに、初歩的なことこそ腕の見せ所なのです。

 

初歩的な質問は勇気がいる

「こんなこと聞いていいのかな…?」とおもうと、スパッと切りだせないものです。

つぎのような言い回しをしてしまいます。

  • 初歩的な質問で恐縮ですが…
  • 初歩的な質問で申し訳ありませんが…

 

この「恐縮」や「申し訳ない」。

会議のように、それぞれが準備をしてくる必要がある場面で、それをしなかったときは、たしかに「恐縮」も「申し訳ない」も当てはまる言葉です。

また、建前でいうこともあるかもしれませんね。

 

でも、そうでないときは、「知らないことは恥ずかしい」ということが裏にあったりします。

すると、それを切りだすには勇気がいります。

「バカにされるかもしれない…」と。

 

子どものときには、どんなことについても「なんで?」と素直に聞けた記憶がないでしょうか。

でも、大人になると、世間体…というものが邪魔をします。

 

初歩的な質問でも恐縮したりする必要はないことを、このあとお話していきます。

 

初歩的な質問は土台になるもの

初歩的な質問は、いわゆる基本にあたるものです。

建物における基礎のように、ものごとの土台になるもの。

 

もし、土台がズレていれば、そのうえに乗っていくものもズレることになります。

そして、いつかズレに気づいたときは、土台までさかのぼって直していくことになってしまいます。

その労力は、大変なものです。

たとえば税金なら、過去数年分の申告をまとめてやり直すようなこと…

 

ものごとは、基本が大事です。

基本がなければ、応用も存在しません。

であれば、初歩的なことは、どれだけ確認してもよいはずです。

 

また、それはホントに「初歩的」なのか……ということもあります。

 

だれでも、自分が気になることは、いろいろ考えたり悩んだりするものです。

すると、その過程で、初歩的なことはとっくにマスターしていることもあったりします。

「初歩的なことで…」が、じつは税理士も悩む高度なこと…ということもあるのです。

 

考えれば考えるほど、悩めば悩むほど、想像はふくらんでいきます。

すると、「だれでも知っているよね…」という幻想もうまれます。

「初歩的」というのは、ご自身が生みだしたものかもしれないのです。

本当は、そんなことないのに。

 

このような背景があるので、「初歩的」はけっしてバカにできないものなのです。

 

初歩的な質問は税理士の腕の見せ所

初歩的なことに答えるのは、けっして簡単ではありません。

 

たとえば、「人間ってなに…?」

この質問が、心理学や哲学の専門家からでてきたら、きっと「おそろしく高度」ですよね。

いっぽう、子どもから聞かれたら…?

質問自体は、素朴で初歩的です。

でも、スッと答えられるかたは、きわめて少数だと思うのです。

 

初歩的なことは、ものごとの本質を知っていなければ、答えられません。

たんに法律がわかる・計算ができる、では足りないのです。

 

さらに、答えるときの言葉も簡単ではありません。

専門用語をズラズラならべても、きっと伝わらないでしょう。

ものごとの本質を、ふだん生活でもつかうような言葉に置きかえなければ、伝わらないものです。

できれば、自分だけの言葉ではなく、相手もつかえる言葉で。

 

このような理由で、初歩的な質問に答えるのは簡単ではないのです。

 

また、初歩的なことを言える場になっているか、も大事です。

それが言える雰囲気というか空気というか…

税理士って「お固い雰囲気」があるでしょうから。

 

自分が考えていること・悩んでいることって、誰にでも簡単に言えることではありません。

よほど悩んでいれば、とにかく質問してみる…ということもあるでしょう。

でも、基本的には「バカにされそうな」相手には言わないものです。

となると、言える雰囲気・空気も大事なのです。

 

質問をする側で気を使っているように、質問を受ける側でも、このようにいろいろ考えています。

このようなことも、税理士の「腕」にふくまれるものです。

もしかしたら、「恐縮」や「申し訳ない」は税理士のほうの言葉かもしれないのです。

ちゃんと答えられなかったときには。

 

初歩的な質問は、けっしてバカにできるものではありません。

初歩的な質問こそ、税理士の腕の見せ所なのです。

 

質問は、解決されるために生まれるものです。

質問すること自体を大事にしていきましょう。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。