役員報酬の注意点:職務執行期間
年度とはべつに、役員の職務執行期間という区切りがあります。
この区切りは、役員報酬の変更や、役員のボーナスへの影響があることを知っておきましょう。
(今回の記事は、株式会社限定です)
職務執行期間とは
会社には、「年度」があります。
いっぽう役員には、「職務執行期間」というものがあります。
この2つは、それぞれ別の期間をあらわします。
というのも、だれが役員になるかは、基本的に、株主総会において株主が決めるからです。
そして、余程のことがないかぎり、つぎの株主総会までは役員でいつづけます。
この決めたときの株主総会から、つぎの株主総会までを、職務執行期間といいます。
(「決める」には、新任だけではなく、続行もふくまれます)
ほんらい会社は、出資をするひとと経営するひとが、べつのケースを想定してつくられています。
もし、役員がよい業績をだせなければ、つぎの株主総会で「やめてくれ」と言われるかもしれません。
ぎゃくに、業績がとてもよければ、「役員報酬はアップするから、つぎも頼めないか」ということもあるでしょう。
株主・役員ともに、職務執行期間は気になるはずの区切りなのです。
この職務執行期間は、まいつきの役員報酬や役員のボーナスにも影響してきます。
役員報酬や役員のボーナスへの影響
職務執行期間は、つぎのことに影響をおよぼします。
- 毎月の役員報酬を変更する時期
- 役員のボーナスの手続き期限
毎月の役員報酬を変更する時期
役員報酬には、毎月おなじ金額でなければならない…というルールがあります。
もし、毎月かえてよいのなら、利益をそっくりそのまま役員報酬にしてしまうことで、法人税をゼロにできてしまうので。
ただ、年度がはじまってから3か月以内なら、かえてもよい…というルールもあります。
そうでなければ、設立してから会社をたたむまで、かえるタイミングがないので。
また、税金の申告は、新年度がはじまってから2か月以内が期限ということもあります。
そのさいには、とうぜん決算もします。
その決算を株主がみて、「つぎの役員または役員報酬をどうしようか」とかんがえるわけです。
こうしたことを考慮して、3か月以内ならかえてもよい…となっているのです。
すると、新年度1か月目からかえるのはどうなの……という疑問もでてきます。
ここには、職務執行期間、そして株主総会が影響してきます。
もし、1か月目に決算とあわせて株主総会をしているなら、説明がつきます。
でも、そうでないなら、理屈がとおらないのではないでしょうか。
会社というのは、株主と役員、それぞれが他人同士を前提にしています。
そして、役員は、株主総会で審判される立場にあります。
そんな関係のなか、審判されていないのに、つまり次の株主総会がきていないのに、役員報酬をへらされた…となれば、問題になるはずです。
他人同士なので、裁判にだってなるかもしれません。
ふやすほうなら喜ぶでしょうが、当初きめたルールを守っていない点で、将来をかんがえたときに問題がありそうです。
なので、毎月の役員報酬を、新年度1か月目からかえるときは、職務執行期間や決算・株主総会のことに注意しましょう。
役員のボーナスの手続き期限
役員のボーナスのことを、「事前確定届出給与」といいます。
- 「事前」に金額や支給日などを、株主総会の決議で「確定」させます
- その内容を、税務署へ「届出」します
- そして、予定日がきたらボーナスをはらう
こんな段取りになっているのが、言葉の由来です。
このとき、税務署への届け出は、つぎのなかでいちばん早い日が期限になっています。
- 年度がはじまってから4か月以内
- 株主総会で決議をしてから1か月以内
- 職務執行期間がはじまってから1か月以内
(設立年度や申告期限を延長しているときなどは、例外もあります)
さいごの職務執行期間について、かんがえておきましょう。
まいつきの役員報酬は、職務執行期間ごとにかえるものだ…と。
うっかり「4か月以内」を目安にしているなら、注意が必要です。
もし、役員報酬を2か月目からかえるなら、期限はだいたい3か月目あたりになるはずなので。
このあたりのつじつまが合っているか…にも、気をつけておきましょう。
まとめ
職務執行期間が、役員報酬やボーナスにおよぼす影響についてみてきました。
会社は、株主と役員がべつであることを想定した仕組みです。
そのため、法律もそれを基準にしている部分がおおいです。
でも、株主と役員がおなじ会社も、たくさんあります。
すると、自分の役員報酬を、自分できめられるわけです。
そんなときに曖昧になりがちなのが、職務執行期間です。
うっかり忘れ、つじつまが合っていない…とならないように気にしておきましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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