年末調整で家族の年収が不明なときどうするか
年末調整では、家族の年収などは見込みで判断することになります。
ただし、その判断は年収ではなく、儲けにあたる所得でおこないます。
基準になる数字や計算方法も確認しておきましょう。
扶養になるかどうかの判断は
年末調整において、家族が扶養になるかどうか。
この判断は、ほぼかならず「見込み」によることになります。
というのも、「1月~12月」の年収などによって判断するからです。
年末調整は、通常、12月の給与にておこないます。
そのため、年末調整の準備は、11月くらいから始めるのが一般的。
でも家族の収入は、厳密にいえば、12月31日になるまで分からない。
だから、見込みによるほかないのです。
なお、扶養になるかどうかの判断は、じつは年収でおこなうわけではありません。
年収から経費をひいたものである「所得」でおこなう。
より正確にいうと「合計所得金額」でおこなうのです。
合計所得金額とは
扶養になるかどうかの判断でつかわれる「所得」という言葉は、所得税のものです。
その所得税は、すべての収入や経費をまとめて計算するのではありません。
収入の種類、たとえば給与や不動産・副業・株式などにわけて、それぞれ所得を計算します。
その後、それらを合算する。
過去に赤字があったり、不動産を売ったときは特殊なあつかいもあるのですが。
これを合計所得金額といいます。
この合計所得金額により、扶養のあつかいはどう変わるか…も確認しておきましょう。
(以下、合計所得…と略しますね)
扶養になるかたの所得条件
年末調整における扶養には、おおざっぱに次の2つのものがあります。
- 夫または妻……配偶者控除または配偶者特別控除
- それ以外の家族……扶養控除
配偶者控除をうけるためには、扶養になるかたの合計所得が「58万円以下」でなければなりません。
令和6年(2024年)までは48万円以下でしたが、令和7年(2025年)から改正されました。
もしパート収入だけなら、令和7年以降は、年収「123万円」が合計所得58万円になります。
そして配偶者特別控除は、合計所得におうじて、つぎのように分かれています。

(国税庁HPより)
いっぽう、夫や妻以外の家族については、扶養控除をつかうことになります。
そのためには、合計所得が「58万円以下」でなければなりません。
ただし、年齢19才以上23才未満の家族については、つぎのように「123万円以下」まで範囲はひろがっています。

(国税庁資料より)
合計所得の見込みをかんがえるとき。
必要なのは「具体的にいくらか」ではなく、「どの区切りにあてはまるか」を知ること。
ざっくりでも良い…といえるわけです。
それに、違っても年末調整のやりなおし、あるいはご自身で確定申告をすることもできますから。
よくある所得について、その計算方法もみておきましょう。
所得の計算方法
つぎの所得について、計算方法も確認しておきましょう。
- パート、アルバイトなどの「給与」
- 不動産収入や副業
- 株式
パート、アルバイトなどの「給与」
給与のなかには、通勤手当のように「非課税」のものもあります。
所得を計算するとき、それら非課税のものは除くことに注意しましょう。
おそらく給与明細には「課税支給合計」という欄があるはずです。
それを、分かっているものだけ集計し、12月の見込みをプラスする。
すると出てくるのが「年収」です。
その年収から「給与所得控除」といわれるものを引くと、所得が計算できます。
いったんは、つぎの表をつかってみましょう。
年収にあたるものを「給与等の収入金額」とあらわしています。

(国税庁HPより)
より正確には、つぎの表も。

(国税庁資料より)
不動産収入や副業
不動産の賃貸収入や、副業をしているなら。
収入も経費も、ご自身で集計しなければなりません。
もし、昨年以前に確定申告をしているなら、それが目安になるかもしれませんね。
そうでないなら、ここはひとつ頑張ってみましょう。
とはいえ、さきに収入だけ集計してみると、目安はつきやすいはずですよ。
株式
特定口座で株式の配当金をうけとったり、売買をしているなら。
その代金などが決済されるときに、所得税が天引き、つまり源泉徴収されています。
だから、確定申告はしないこともできます。
ただ、確定申告することで、かえって税金がすくなくなることもある。
売買で損失がでたときや、配当控除をつかうときですね。
そんなときに注意したいのが、つぎのこと。
- 申告する……合計所得にふくまれる
- 申告しない……合計所得にふくまれない
所得税の確定申告をするかどうかは、扶養になるかどうかにも影響するのです。
まとめ
年末調整において、家族の所得が分からないとき。
というか、分からないのが当たり前なんですけれどね。
扶養になるかどうかの判断は、見込みによることになるのです。
なお、夫婦であれば、扶養になれるように働きかたの調整をするとおもいます。
これまでは、「103万円」を目安にすることが多かったので、毎月8万円前後…と。
それが「123万円」に変わったのはよいのですが、気をつけたいのは住民税。
じつは住民税がゼロになるのは、東京都23区なら「100万円以下」。
(この数字は、お住いの自治体により変わります)
以前の「103万円」を目安にしていると、住民税がゼロになることも多かったです。
でも今後、123万円を目安にすると、住民税がかかる可能性がある。
また、今後はパートといえども社会保険への注意も必要です。
健康保険・厚生年金に加入するケースが増えるような改正も行われる予定ですから。
その条件のひとつに、いまは週に20時間以上はたらくことがあります。
住民税を払うことになっても、手取りは増える。
でも社会保険に加入するなら、手取りは減るかもしれない。
ということも、知っておきましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。

