免税事業者が消費税を請求しないとどうなるか

消費税を請求しなくても、その取引が消費税の課税対象である事実は変わりません。

(非課税や不課税の取引をのぞきます)

値引きとおなじことなので、必要な販売数がふえたり、いつかは値上げの問題がまっていることになるのです。

 

消費税率は変わらない

免税事業者は、インボイスを発行することができません。

そのため、領収書などから、こちらが免税事業者ということは相手につたわります。

 

すると、つぎのようなことが原因で、消費税を請求しないことがあるかもしれません。

  • 「免税事業者なら消費税をサービスしてくれない…?」と相手が言ってこないか
  • どうせ納税しないんだったら、消費税は請求しなくてもよいか
  • 1つ1つの売り値でみれば、そこまで金額が大きくないし…

 

ここで気をつけたいのは、消費税を請求しなくても、その取引には消費税がかかっている…ということです。

  • 消費税は、日本でおこなうモノの販売やサービスの提供にかかる(非課税のものなどは除く)

このことは法律で決められたことで、勝手にかえることはできません。

 

そこで、たとえば「110円」のものを「100円」で売るケース。

このときの「100円」は、税込みの金額になります。

消費税を請求しないときは「100%」のような感覚にもなりますが、「100円が110%」の金額…となるのです。

つまり、「値引き」をしているわけです。

 

消費税を請求しないとどうなるか

消費税を請求しないということは、値引きとおなじ。

すると、今後のことを考えたときに、次のようなことで困るかもしれません。

  • 売らなければいけない数はふえる
  • 値上げのハードル
  • 免税事業者なら…というプレッシャーは続く

 

売らなければいけない数はふえる

いまの消費税率は、10%または8%です。

消費税を請求しないのなら、ざっくり10%くらい売上が減るわけです。

すると、以前とおなじ利益をあげるためには、売らなければいけない販売数はふえます。

 

このとき、まずは売上にたいする利益率をみてみましょう。

もし、以前の利益率が「20%」なら、「10%」くらいに落ち込むことになります。

ざっくり10%くらい減るわけなので。

(厳密に計算すれば、すこし変わります)

このように、どれくらい利益が減るかを、まずは確認してみましょう。

 

そして、以前の利益を確保するためには、その減ったぶんを商品などの単価で割ってみれば、追加で売らなければいけない数がわかります。

商品1つ1つでみたときに大したことがなくても、1年分となると、影響は大きくなるかもしれません。

 

値上げのハードル

いずれ課税事業者になったときに、値上げをすればよい…

このとき、値上げのハードルは意外におおきいものだと知っておきましょう。

というのも、こちらの都合で値上げするのには、やっぱり抵抗があるからです。

 

こちらの都合というときは、ほとんどの場合、商品やサービスはそのままです。

なのに値段だけあがる…ということに抵抗があるのです。

なかには、分かってくれるかたもいたりしますが。

 

いっぽう、商品やサービスがより良くなったときは、抵抗感もすこし薄れます。

相手にとってのメリットが増えるわけなので。

 

ということから、値上げをするときは、基本的には、商品やサービスにあらたな付加価値がくわわるもの…という風に思っておくのがよいです。

ただ、これはそう簡単なことではないかも…

 

免税事業者なら…というプレッシャーは続く

インボイス制度がつづくかぎり、「免税事業者なの…?」というやり取りもつづくことになります。

お金をはらう側にとっては、自身の消費税の納税にかかわってくるので。

 

それが気になるようなら、思い切って課税事業者になる(=インボイス登録する)のも一案です。

もちろん、消費税の申告・納付で、どれくらいの手間・出費がふえるか…を考えたうえで。

 

いっぽう、お金がすこし減ることに問題がなかったり、よい取引先に恵まれている…などの事情があれば、むりに課税事業者になる必要はないかもしれません。

気持ちよくはたらける…というのも大事ですから。

 

インボイス登録をめぐっては、取引の双方に損得の問題がでてきます。

お金のことで「損したくない」という気持ちがあるかぎり、「免税事業者なの…?」というやり取りも残りつづけることになるのです。

…ということもふまえて、消費税のことを考えてみましょう。

 

まとめ

免税事業者だからといって、安易に消費税を請求しない…というのは止めておきましょう。

必要な利益・お金のこと、消費税の試算、将来の展望。

すくなくとも、こういった事を検討してから、決めるのがよいです。

今どうするかは、将来から逆算して…という視点も大事です。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。