外注費が給与認定されないために整えておくこと
外注費として経理していたものが、給与と認定されてしまうと、追加で税金をはらうことになってしまいます。
そんなことにならないように、普段からどんなことに注意して書類を整えておけばよいのか、みていきましょう。
目次
外注費が給与認定されると追加で税金を払うことになる
外注費と給与には、税金と社会保険について次のような違いがあります。
消費税 | 源泉徴収(所得税) | 社会保険 | |
外注費 | かかる | 原則、必要なし | かからない |
給与 | かからない | 必要 | かかる |
もし、おなじ金額をはらうなら、給与ではなく外注費のほうが税金・社会保険がすくなくなるのです。
ですが、給与か外注費かは自由にきめられるものではありません。
その判断はむずかしく曖昧なときもありますが、実態にもとづいておこなうのです。
(参考記事)給与か外注費かで税金が変わる。両者の違いは?
たとえば税務調査などで、外注費として経理していたものが給与認定されることがあります。
「この支払いを外注費として経理していますが、実態をみると給与です」
「外注費ではなく給与として税金を計算しなおし、修正申告をしてくださいね」
給与認定されると、このようなことになるのです。
そして、税金(消費税・源泉所得税)を追加ではらうことになってしまいます。
場合によっては、社会保険(健康保険・厚生年金・労働保険)も。
たとえば消費税ですが、過去3年分の外注費の10%をイメージしてみましょう。
(税務調査は、過去3年分まとめておこなうことが一般的です)
もし給与認定されれば、消費税だけでそれだけの金額を追加ではらうわけです。
なので、結構なインパクトがあるのです。
ですが、税務調査や税務署から手紙・電話がくるというのは、誰でもすこしは緊張してしまうものです。
うまく言葉で説明できないかもしれません。
ほんとうは違うのに、もう面倒だしよく分からないし、とにかく早く終わって欲しいから流してしまう……
こんなことになってしまう可能性もなくはないでしょう。
知らないから損をする、ということもあるのです。
その結果、ほんとうは外注費なのに給与とされてしまい、余計な税金をはらうはめになる。
もし、ふだんから外注費に関係するところを整えておけば、給与認定をさけることができるかもしれません。
説明は、言葉だけではなく書類などでもできますから。
では、どんなところを整えておくのか、みていきましょう。
外注費が給与認定されないために整えておくこと
外注費の支払いがあるときは、次のことに注意しましょう。
- 契約書をつくる
- 請求書や見積書をもらう
- 支払いの内訳に気をつける
- 時間や労務管理はしない
- 相手に確定申告してもらう
それぞれ解説します。
契約書をつくる
外注を委託するときは「請負契約」を交わします。
いっぽう、外注ではなく社員(給与)を雇うときは、「雇用契約」を交わします。
この2つの契約はおおくの点でちがいがあるのですが、軸になるのは次のことです。
- 外注費(請負契約)……過程ではなく結果にたいして支払われる(結果がなければ支払いも無し)
- 給与(雇用契約)……結果ではなく働いたことにたいして支払われる
契約書のひな形はインターネットで検索したものでもよいです。
引きつづき説明することも盛り込んで、お互いのサインがはいった契約書をつくっておきましょう。
請求書や見積書をもらう
外注費の値段をきめるのは、相手です。
いっぽう給与は、賃金規程などにもとづいて会社など支払う側が計算します。
つまり、外注費は「相手から請求がくる → 支払う」というサイクルになるのです。
もし外注費を自分で計算するなら、「社員(=給与)とおなじ扱いなの?」となってしまいます。
かならず相手から請求書や見積書を受けとり、それを保管しておくようにしましょう。
支払いの内訳に気をつける
請求書などについて、下記のことに気をつけましょう。
- 消費税
外注費には消費税がかかるため、「消費税(○○%)」の記載が必要です。
また、それがインボイスかどうかの確認も。
- 源泉徴収
外注費は、相手が士業などスペシャリストのときをのぞき、源泉徴収はしません。
いっぽう給与は、源泉徴収をおこないます。
- 残業代、家族手当、住居手当などの○○手当
外注費は結果にたいして支払われるため、残業代は存在しません。
残業リスクという「過程」は、相手が負担するのです。
もし追加で依頼する仕事があれば、上乗せで支払いをすることもありますが、それは残業代とはちがいます。
また、家族がいたり住居があるから外注費がふえるということもありません。
外注費は、結果にたいして支払われるため、過程や環境のリスクは相手が負担するからです。
このような項目が記載されていないか、チェックしましょう。
- 材料代、道具代
材料も道具も、基本的には外注する相手が負担します。
材料代も道具代もふくめた金額が請求されるわけです。
なお、おおきな仕事のときに材料はこちらが負担して、腕(技術・ノウハウ)だけを外注することもあります。
それでも、道具については相手が負担するのがふつうです。
こちらの会計データには「外注費のみ」がのるのであって、「道具代など」は外注先の会計データにのる。
このようになるのです。
時間や労務管理はしない
外注する仕事の過程は、相手におまかせします。
どうしても決められた時間帯にきてもらわなければ困るときもありますが、それでもタイムカードなど社員とおなじように時間の管理をすることはありません。
また、会社などのルールにしばられることもありません。
ルールに違反すると罰金とか減給などもないのです。
代わりにあるのは「次の仕事はかんがえさせて……」といったことになるわけです。
いっぽうで「コロナ感染症がひろがらないために、熱があるかたは現場にきてもらっては困る」ということもあります。
「社員ではない」ということを踏まえたうえで、相手に聞いて欲しいことは契約書に盛り込んでおくようにしましょう、
相手に確定申告してもらう
外注費は、相手にとって、個人なら「事業所得や雑所得」、法人なら「売上」となります。
なので、原則として相手が確定申告することが必要なのです。
もし給与なら、会社などが年末調整をするため、確定申告は必要ありません。
医療費やふるさと納税などは年末調整にくみこめないため、その社員が確定申告することはありますが。
こちらが外注費と給与のちがいを意識していても、相手が給与だと思い込んでいるときもあるかもしれません。
「この支払いは、確定申告が必要です」と相手に伝えておきましょう。
まとめ
外注費と給与のどちらになるかにより、税金がおおきく変わることがあります。
ですが、どちらになるかの判断はむずかしいときも多々あります。
それがゆえに、よく話題になる点でもあるのです。
そんなとき助けになるのが「普段から経理や環境をちゃんと整えておく」ことです。
もちろん嘘をついてはいけませんが、言葉だけではなく、書類などで事実を説明することもできるのです。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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