会社の経費を立て替えることの弊害

自分でつくった会社なら、経費を立て替えるのは、普通におこなわれることです。

でも気をつけないと、いくつかの問題を引き起こすことにもなってしまいます。

それを防ぐ方法についても確認しておきましょう。

 

立て替えることはよくある

自分でつくった会社を経営していると、日々の経費を立て替えることはよくあります。

もし、立て替えないとしたら、支払いのつど、会社の口座からお金を引きだす。

あるいは、まとめてお金を引きだしておき、プライベートのお金と区別をしつつ、足りなくなりそうなら補充していく。

このように、面倒な運用をしていかなければならないので。

 

会社名義のカードや電子マネーをつくれば、ある程度はプライベートとの区別がしやすくなります。

でも、どうしても現金が必要なこともある。

すると、小銭もそれなりに出てきます。

 

会社とプライベートの区別をするということは、その小銭の区別もするということ。

となると、けっこう大変ですよね。

 

なので、とりあえずは立て替えておき、週ごと・月ごとなど、あとでまとめて精算する。

こうした運用が、じつはよく行われているのです。

 

でも、そこには弊害もあります。

 

経費を立て替えることの弊害

次のようなことを感じていないか、気にしてみましょう。

  • 会社の実質的なお金がいくらか分からない
  • 立て替えるのは当たり前
  • 自分には貸付金があるとは意識していない

 

会社の実質的なお金がいくらか分からない

経費を立て替えているとき、会社の実質的なお金は、そのときの残高から立て替えている分をひいたものとなります。

さて、そのつど実質的なお金がいくらか…分かっているでしょうか。

 

実質的なお金を算定するには、立て替えたものの精算をしなければなりません。

現金やカード払いなら、それぞれの領収書を合計していくだけで済みます。

でも、ネットでの買い物なら領収書をダウンロードしたり、あるいは交通費ならSuicaなどの履歴をとったり、それが無ければ調べなければなりません。

ひとことで精算といっても、けっこうな手間と時間がかかるのです。

なので、ついつい後にまわしがち…

 

すると、精算のタイミングで、まとめて経費がでてくることになります。

その金額によっては、黒字とおもっていたのが赤字になったり…と。

ひょっとすると、それは使ってはいけないお金だったかもしれないのです。

 

会社の実質的なお金がいくらか分からないということは、使っていいお金なのか・そうでないのか。

この判別がついていないことを意味します。

あまり良いことではないですよね。

 

なので、もし立て替えるなら、自分が立て替えたものには印をつけておくなどして、とりあえず経費には入れておきましょう。

そうしたものは、貸借対照表に「未払金や借入金」などとしてあらわれます。

その金額を会社の口座から引き出すことで、精算するのでもよいのです。

精算は、かならずしも領収書とお金の引換えでなくてもよいですから。

 

そうすれば、いまは黒字なのか赤字なのか、ひいては使っていいお金なのか・そうでないのか。

この判断がしやすくなりますので。

 

立て替えるのは当たり前

厳密に言えば、会社の経費を立て替えるのは、当たり前のことではありません。

だって、自分のお金は、会社のものではないですから。

ただ、日々の手間、面倒くさいを緩和するため、立て替えるほうがラクだったりするのです。

時間の節約にもなりますしね。

ということを忘れると、立て替えることに違和感をかんじなくなります。

 

じつは立て替えるというのは、ほんらいは赤字のときにおこなわれるものです。

これを知っているなら、立て替えたときに「赤字かも!」と思うべき。

立て替えるのが当たり前になってくると、赤字のときに違和感のようなものを感じにくくなるというデメリットがあるのです。

 

これを防ぐには、小まめに精算するようにしましょう。

赤字になってくると、精算するためのお金が足りなくなってきます。

そこで「マズい」と気づけますから。

 

自分には貸付金があるとは意識していない

経費を立て替えたもののうち未精算分は、自分からみれば会社への貸付金です。

この貸付金も、自分の財産として、人にあげれば贈与税、万一のことがあれば相続税の対象になるものです。

(自分の会社の株式や出資も、おなじく)

 

もし会社にお金があって、未精算のものをすぐに精算できるなら、問題はないでしょう。

いっぽう、会社が赤字をつみあげた結果、貸付金が大きくなってくると、相続のときに面倒だったりします。

会社のお金が足りず、精算の見込みがない部分にも、相続税がかかることはあるからです。

 

ということを回避するため、経費を立て替えても、未精算のものがあまり大きくならないように注意しておきましょう。

小まめな精算、役員報酬の設定などにより、あるていどはコントロールできるでしょうから。

 

まとめ

自分でつくった会社なら、経費を立て替えるのはよく行われるもの。

ですが、実質的なお金が分かりにくくなったり、黒字・赤字の判別がつきにくくなるという弊害もあります。

 

ほんらい、自分と会社は、他人同士とおなじです。

それにともない、お金の区別も行われるもの。

ということを、忘れないようにしましょう。

 

そのためには、小まめな精算をし、領収書などを集める手間まで省略しないようにする。

それが、後々のお金の問題を減らすことにもつながりますから。

 

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。