数字を経営に活かすにはデータを情報に加工しなければならない

たんに会計ソフトの入力をするだけでは、もったいないです。

そのデータを加工すると、行動やその結果が変わるかもしれないので。

 

データと情報の違い

データと情報。

どちらも似たようなものに思えますが、少し違いがあります。

 

データとは、ある事実。それも客観的な事実です。

たんなる材料のような位置づけのものです。

データ、それ自体に興味があることもあるでしょう。

でも、ときには「なるほど…」くらいしか感想がないこともあるようなものです。

 

いっぽう情報とは、あることの内容や事情を知らせるためのものです。

事実、つまりデータをもとにした「お知らせ」のようなものです。

データをみて「なるほど…」としか思えなくても、情報をみると「それなら○○しなければ」「○○しよう」という感想がでるかもしれないもの。

データと情報には、このような違いがあります。

 

たとえば「野菜」。

これをデータとしたとき、「野菜炒め」は情報になります。

それぞれ、でてくる感想は違うはずです。

 

野菜なら……

  • 最近、値段があがっているよね
  • 新鮮なものを売っているのは、○○かな…?
  • ああ、買い物しなきゃ…

 

いっぽう、野菜炒めなら……

  • 肉ばっかりじゃ良くないかな
  • わりと簡単につくれる
  • 余り物をかたづけるには、やっぱり野菜炒めだよね

 

野菜を野菜炒めにするには、料理という知識・ノウハウが必要です。

ときには経験も。

今回の記事では、知識やノウハウについては話をひろげないでおきますね。

 

ただ、データと情報がもたらすものには、おおきな違いがあることを知っておきましょう。

このことは、経営における数字についても同じことなのです。

 

数字を経営に活かすにはデータを情報に加工しなければならない

たとえば決算書は、データです。

あるていどは事業の利益構造がわかるので、情報といえないこともないです。

でも、次のようなとき、データを情報に加工しなければならないこともあります。

  • 売上がふえた
  • お金がふえた
  • 赤字だった

 

売上がふえた

データ(決算書)だけをみるなら、売上がふえるのは喜ばしいことかもしれません。

でも、売上を商品・サービスごと、お客さまごとに整理すると、次のようなこともあり得ます。

  • 新商品はそれほど売れていなかった
  • 力をいれていないものが売れていた
  • 特定の地域がふえていた、へっていた
  • 特定の年齢層がふえていた、へっていた
  • 古くから付き合いのあるかたが、来なくなっていた

 

このようなことが分かれば、経営にも影響をおよぼすはずです。

今後、どのように行動するか……の参考になりますから。

 

お金がふえた

お金がふえた原因が、次のことだったら、それぞれどう思うでしょうか。

  • しっかり黒字で、お金もついてきた
  • 赤字だったけど、なんとか借入れできた
  • 会社を大きくするため、増資をした
  • 含み損のある株式や固定資産を売った
  • 売上は後払いだったが、前受けすることにした

 

それぞれ、今後のお金のつかいかたは、変わるはずです。

 

赤字だった

赤字になるのも、いろいろ原因があります。

  • 設立1期目で、たくさん経費がかかった
  • 取引先を接待しすぎた
  • 自社株を贈与しやすくするため、わざと赤字を狙った
  • 本店は黒字なのに、支店は大赤字だった
  • 新しい商品・サービスを試してみた

 

それぞれ、やっぱり今後の対応は変わるはずです。

 

 

ここまでのことは、決算書だけをみても分かりません。

経営者自身が、現場にでたり交渉などにあたっていれば分かるものもあるでしょう。

でも、基本的には、分からない・分かりにくいものです。

 

これを「見える化」するには、決算書のもとになる会計データを加工しなければならないのです。

また、そうした情報があれば、「決算書が読める」ことにつながるかもしれません。

でも、黙っていれば、情報は手に入らないものです。

 

欲しい情報を決めるのは経営者の責任

経営者の仕事ってなんでしょうか。

それは、データや情報をもとに行動を変え、利益やお金につなげていくことです。

 

もし、データだけをみても分からないことがあるなら、情報に加工しなければなりません。

そのときの問題は「どんな情報に加工するか」です。

 

どんな情報が欲しいのかは、伝えなければ、だれも分かりません。

だれかが推測で加工しても、ズレることがあるでしょうから。

これを決めるのも、経営者の仕事なのです。

 

とはいっても、数字や経理に慣れていなければ、欲しいもの自体がピンとこないこともあります。

また、あらゆる可能性をひろっていけば、キリがないこともあるでしょう。

そんなときは、次のことから始めましょう。

  • いつかお金が足りなくならないか(とりあえず2~3か月先くらいまでは)
  • このままいくと、次の決算はどうなりそうか

 

その後は、次のようなことを起点に、加工の対象をひろげていきましょう。

  • 自分が思っているのとちがう気がする
  • なぜ○○になるのか
  • ○○に興味がある、心配だ
  • どうなると良いのか、悪いのか
  • もっと○○が欲しい、○○をやめたい

 

経理や数字が経営の役に立つかどうかは、経営者によるところもあるのです。

データ、つまり数字の羅列をみても、意味がないことはあります。

そこからなにを引き出すかは、経営者の興味により変わります。

その興味を言葉にして、「どんな情報が欲しいか」を決める。

これも経営者の仕事だと意識しましょう。

そうすれば、知識やノウハウもちゃんと身についていきます。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。