役員報酬には日割りや残業代は発生しない

役員は、雇用契約ではなく、委任契約にもとづき会社を経営していきます。

この2つの違いにより、日割りや残業代が発生しないのです。

日割りしたり残業代を支給したらどうなるか…についても確認しておきましょう。

 

日割りの役員報酬・残業代が発生しないわけ

役員報酬については、ときにつぎのような疑問がでてきます。

  • 月の途中から役員になったり、休みが多かったら、役員報酬を日割りにするのか…?
  • 役員が遅くまではたらくときは、残業代を支給するのか…?

 

役員報酬には、日割りや残業代といったものは発生しません。

というのも、役員は「雇われているのではない」からです。

 

もし、雇われているのだとしたら、日割りにするということも可能になってきます。

雇われているときは、はたらいたから給与をもらう…という理屈になっているからです。

なので、はたらかない日のぶんは、給与を払わない…と。

 

また、雇われているときは、労働基準法により保護されます。

そのため、決められた時間をこえてはたらけば、会社は残業代を払わなければならないのです。

このような「雇われている」ことを、雇用契約といいます。

 

いっぽう役員は、雇用契約ではなく、委任契約にもとづいて、会社の経営をおこないます。

委任契約とは、役員であれば、とにかく会社をうまく経営することを目的とした契約です。

その目的を達成するための方法には、裁量がみとめられます。

いつ・どこで・どのようにやってもよいのです。

 

また、雇われているときのように、「○○してね」という指示や命令をうけることもありません。

なにをどのようにするかは、自分の判断でやってもよいのです。

 

そのため、自由に休むこともできます。

また、はたらく時間にも、雇われているときのようなルールはありません。

こういう仕組みになっているため、日割り・残業代は発生しないのです。

 

にもかかわらず、日割りにしたり、残業代をはらうとどうなるか…を確認しておきましょう。

 

日割りしたり残業代を支給するとどうなるか

役員報酬には、毎月おなじ金額でなければならない…というルールがあります。

その毎月の役員報酬のことを、専門的には「定期同額給与」といいます。

「定期同額」が、毎月おなじ…を示唆しているのです。

 

もし、このルールがなければ、会社の毎月の利益をそっくりそのまま役員報酬にしてしまう…

その結果、法人税がゼロになる…ということも起こり得ます。

となると、税務署はこまってしまう。

後から利益操作できないように、このようなルールになっているのです。

 

ただ、このルールだけだと、会社を設立してからたたむまで、変えるタイミングがありません。

なので、年度がはじまってから3か月以内であれば、変更することはできます。

 

さて、たとえばある年度の役員報酬を、つぎのように決めたとしましょう。

 

その後、休んだので日割りして減らしたり、がんばったので残業代を支給した結果、つぎのようになったとします。

 

このようなときは、つぎの色が塗ってあるところは経費になりません。

 

いっぽう、色を塗っていないところは、「毎月おなじ」になっています。

なので、色を塗っていないところは、経費になるのです。

実際に経費になる・ならないを分けるときは、いちばん小さい金額を基準にして、横に線をひけば、上記のように区分することができます。

 

ちなみに、会社の経費にならないといっても、その部分には個人の税金である所得税・住民税がかかってしまいます。

役員報酬は、経費になるから、個人の税金がかかる…とかんがえてみましょう。

となると、支給したのに経費にならない役員報酬は、会社の利益をへらす効果がない。

その分、もったいないのです。

 

月の途中から役員になったり、休んだりしたとき、はたらかない分は役員報酬をへらす。

がんばって遅くまで残業したのなら、その分は役員報酬をふやす。

どちらも、気持ちとしては分かります。

 

でも、ここまで解説したようなルールになっています。

日割り・残業代ともに気をつけておきましょう。

 

まとめ

役員報酬には、日割りや残業代が発生しないことについて確認してきました。

日割りも残業代も、気持ちとしては道理にかなっているように思えます。

ただ、ルールを外れると損することもあるので、気をつけておきましょう。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。