消費税が業績の伸びない一因と言われるわけ
消費税を転嫁できないと、業績を伸ばす障害になります。
でもこれは、すごく難しい問題なのです。
導入時の想定
消費税は、モノやサービスを「消費すること」にかかる税金です。
なので、消費税を負担するのは、消費者。
ただ、その消費税をだれが税務署へ払うか…とかんがえたとき。
もし、消費者が、自身で集計などして払うことになれば、それはどう考えてもムリです。
子どもの分は家族が代わりにやるとしても、ほぼ日本国民全員になってしまいますから。
それに、そんな時間や手間をかけなきゃいけないのも、理不尽ですよね。
なので、消費税のぶん、モノやサービスの値段をあげて、それを受けとった事業者が消費税を税務署へもっていく。
そんな仕組みができたわけです。
つまり、事業者の懐は痛まない。それまでと利益は変わらない…と。
たとえば、それまで「100円」だったモノは、「103円」になったとして。
(消費税の導入時は、3%でした)
- 導入前……「100円」のお金を受けとっていた
- 導入後……「103円」を受けとり、「 3円」を税務署へはらい、「100円」が手元に残った
このように、消費税を導入しても、事業者の利益、そして手元に残るお金は変わらない。
そんな想定がされていたのです。
ちなみに、消費税が導入されたのは、バブルの最中である 1989年(平成元年)です。
当時、どんな将来の想定がされていたのかは分かりません。
でも以降、消費税の税率はつぎのように推移してきました。
- 1989年(平成元年)…… 3%(導入時)
- 1997年(平成 9年)…… 5%
- 2014年(平成26年)…… 8%
- 2019年(令和元年)…… 10%
業績が伸びない一因と言われるわけ
もし、うえの消費税率の推移にしたがって、消費者の収入もおなじように伸びてきていたなら。
事業者にとっては、フラットな状態といえます。
業績が伸びるか伸びないかは、ひとえに事業者自身にかかっていると。
でも、たとえば給与です。
消費税率におうじて、増えてきたでしょうか。
きっと、そうではないですよね。
過去 30年ほど、実質賃金は横ばいですから。
社会保険料が増えてきたこと。日本の人口は高齢者のほうが多く、若年層のほうが少ない。
その社会保障のこともありますしね。
そこで、次のようなことが起こります。
たとえば、おこづかいが「1,000円」の子どもがいたとして、消費税率は 10%で。
- 消費税がなかったら……100円のものが10個買える(1,000円の出費)
- 消費税があると………110円のものが9個しか買えない(990円の出費)
それまでと同じように、10個は買えない。
1,000円までしか、使えないですから。
これを、事業者からみてみると
- 消費税がなかったら……「1,000円」が手元に残る
- 消費税があると……990円を受けとり、90円を税務署へはらい、「900円」が手元に残る
もし消費税がなかったら…とくらべると、利益もお金も減るのが道理といえるのです。
ただこれは、消費者が消費税を負担していないかのようなこと。
想定されていたのは「1,100円」つかうことですから。
でも、給与がふえない以上、それはムリと言うのが本音でしょう。
給与が変わらないのであれば、ほかを削らないといけないですし。
ただ、「必要」とか「欲しい」があるので、それまで「1,000円」つかっていたところ、それよりも多くつかうことにはなる。
すると、1,000円から1,100円の間で、事業者と消費者のせめぎ合いが起こります。
事業者からみたとき、本音では「1,100円」をつかってほしい。
でも消費者は、「1,000円と少し」、できれば 1,000円しかつかえない。
そこで、そのモノやサービスの値段は、「1,030円」だったり「1,080円」といったところに落ち着くわけです。
このせめぎ合いの結果、事業者は、消費税のぶん値段をあげることができない。
つまり、消費税を転嫁できない…ということが起こるのです。
もし、消費税がなければ「1,000円」が利益となっていました。
でも、消費税を転嫁できないので「900円と少し」といった風に、利益もお金も減る。
これが、消費税が業績の伸びない一因と言われるわけなのです。
もちろん、事業者としても他で経費を削るなりしているはずです。
でもそれは、日本全体でうごくお金をへらす原因にもなるもの。
ほかの事業者の売上がへることにつながるわけです。
いっぽう、実質賃金は横ばいとしても、技術の進歩はあります。
それを活用して、新しいモノやサービスを開発したり、生産性をあげることもできるでしょう。
ここまで、「もし消費税がなかったら…」と比べるようなことをしてきましたが、その比べかたは間違っているよ…ということもあるかもしれないです。
そして、もちろん社会保障のことも大きいですしね。
ただ、業種によっては、消費税をちゃんと転嫁できないことがあるのも事実かと思います。
それが、業績が伸びない一因になっているのでは…と思うのです。
まとめ
消費税が、業績の伸びない一因と言われるわけについてみてきました。
もし、消費税を転嫁できるなら、業績は事業者自身にかかっている…といえるかもしれません。
でも、その業績のもとになるのは、消費者のお金です。
その消費者の、つかえるお金が増えなければ、業績を伸ばすにも限度はあるでしょう。
今回は、消費税のことを主に書いてきましたが、仮に世のつかえるお金全体をふやせば、インフレの問題もかかわってくるはずです。
…と、考えだしたらキリがないのですが、消費税は難しい問題ですね。
ただ、こうした世の中のしくみ、情勢は、われわれが作ってきたこととも言えます。
「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」
その法律は、われわれが選んだはずの政治家が決めてきたもの。
残念ながら、「自分が投票した人じゃないのが決めたから知らん」とも言えないのが民主主義の道理です。
もし、税金はやっかいだな…と思うなら、すくなくとも選挙には行きましょう。
われわれには、ほとんどそれしか手段がないわけですから。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。