会社設立前に税理士に相談するとよいこと
設立前に決めたことの中には、後々に影響してくるものもあります。
それを設立前に相談しておくと、将来の苦労がすこし減ることもあるのです。
ご相談は設立後のほうが多い
会社を設立する前に、だれかに相談するとしたら。
それが税理士であることは、すくない印象です。
設立に直接かかわるのは司法書士さんや行政書士さん…ということもあるのかもしれないですね。
税理士のところへ相談にくるのは、設立が終わったあと。
「どんな手続きをしたらよいのか」
「経理はどうしたらよいか」
「どんな節税ができるか」
こうしたことでの相談が多かったりします。
会社を設立すると、いくつか手続きをすることになります。
そのときに、設立前にもうすこし検討しておけば良かったかも…というものもあったり。
それがどういうものかをお伝えしていきます。
設立前に相談するとよいこと
設立前に、つぎのことも税理士に相談してみましょう。
- どんな法人格にするか
- 年度はいつからいつに
- 消費税のこと
- 設立初年度の役員報酬
どんな法人格にするか
いま現在、法人格でおおいのは株式会社・合同会社の2つです。
以前は合同会社がすくなかったのですが、最近は認知度もあがり、ふえてきている印象です。
この2つをくらべたとき、設立費用が高いのは株式会社のほう。
10万円ほど変わるでしょうか。
ということだけで、法人格を決めてよいものか…?
株式会社も合同会社も、法人税における扱いは、ほぼ同じです。
でも、出資者と経営者の関係は、まったくちがう。
株式会社において出資者と経営者は、基本的には別のひと。
いっぽう合同会社ではおなじ。
このことが相続や贈与、配当など経営者やその家族まわりのお金のこと。
そして役員の任期にも影響してきます。
ふだんの経営の場面では、とくに役員の任期が気になることがおおいです。
合同会社では、基本的に役員に任期はありません。
いっぽう株式会社では、最長でも10年。
その任期がきたら、お金をはらって再任の手続き(=重任登記)をすることになります。
(任期が10年だと、忘れかけて「危なっ」ということも)
ほかにも、合同会社の認知度が上がってきたとはいえ、仕事を受注するとき。
業界・業種によっては、差があることもあります。
こうしたことを、設立前に、第三者をまじえて整理するのも有効におもえます。
ちがいを自覚するのは、設立からしばらく経ってからのこともありますから。
年度はいつからいつに
会社を設立する前に、定款をつくります。
その定款には、年度をいつからいつにするか…も盛り込みます。
その年度、個人事業をしているかたは、だれでも 1月~12月と決まっています。
でも会社では、勝手に決まることはなく、じぶんで決めなければなりません。
言い換えると、じぶんの好きに決めることができるのです。
でも、好きに…といわれても、困ってしまうかもしれないですね。
選択肢がおおすぎると、かえって選べないこともありますから。
たとえば、次のようなことは言えます。
- 決算の時期に仕事が忙しくないほうがやりやすい
- 年度がおわる直前に売上がふえると、節税がやりにくい
- 年末年始は、ただでさえ忙しい
これにくわえて、社会福祉にかかわる業種のように、所轄の官庁への報告がひつようなら。
その報告は「4月~3月」の数字でおこなうこともあります。
そんな業種の年度が、たとえば「6月~5月」だったりすると、1年度の間に2回も決算をするようなことになってしまいます。
それを避けるかどうか。
この年度は、いちど決めたあとでも変えることができます。
「大変だな」と実感してから変えてもよいのです。
でも、明らかに「それはちょっと…」となっていないかくらいは気にしてみましょう。
消費税のこと
インボイス制度が導入されたことにより、免税事業者は不利な立場になりました。
課税事業者よりも、取引価格がさがる可能性があるのです。
ただそれは、基本的には事業者同士の取引のこと(B to B)。
お客さまが消費者で(B to C)、「インボイスをください」と言われなければ、影響がないこともあります。
ということを踏まえて、設立時からインボイス登録をするかどうか。
これはとくに、値付けに影響します。
課税事業者になってから値段をあげるのは、むずかしいこともあるので。
値上げするなら、基本的に商品やサービスの価値があがらないと、納得してもらえないですから。
値段に消費税をのせるかどうかで、10%かわります。
ここで気にしてほしいのは、売上のうち、利益として残るのはどれくらいか。
もし20%も残るなら、優良企業といえます。
そして、仮に5%しか残らないなら、消費税によっては赤字になる可能性も。
売上の10%というのは、とても大きな影響があるのです。
消費税のことを考えるにあたり、設立前に、じつは利益の予想もしてほしいと思っています。
それは、つぎの役員報酬にも影響しますから。
(参考記事)
法人を設立する前にやっておいた方がよいこと
設立初年度の役員報酬
もし役員報酬をとるなら、設立から3か月以内に決めるのがよいです。
そうでないと、法人税の計算においては経費にならない…という縛りがあるので。
そこで考えなければならないのは、生活費がどれくらいかかるか。
もし会社のお金を生活費にまわすと、それは会社からお金を借りていることになります。
- 会社のお金は、社長や役員のものではない
だから、会社と個人のお金は、きっちり分けて会計データもつくることになります。
このことが、たとえば融資をうけるときにも影響してきます。
たとえば会社のお金を、社長がプライベートのことにつかっているなら。
それは、会社から社長へお金をかしていることになります。
その状態で融資を受けようとしても、次のように思われてしまうかも。
「貸したお金は、事業じゃなく、社長のプライベートに使われる…?」
すると、融資の審査は通りにくくなってしまいます。
また、役員報酬は、経費のうちおおきな部分を占めるもの。
それにより利益、そして会社と個人の税金も変わってきます。
設立初年度は、もちろん売上や経費、そして利益の見通しは立てづらいものです。
でも、だからといって諦めて、適当な金額にしておくのも…どうなんでしょう。
すこしは抵抗してみるのも、アリだと思うのです。
まとめ
会社を設立するときは、多くのことをじぶんで決めなければなりません。
そして、その決めたことの中には、後々にも影響してくるものがあります。
もちろん、後になって変えることができるのもあるんですけれどね。
ただ、設立前に、すこし考えを深めておくのもアリです。
もしかしたら、後々の手間やかかる時間を減らせますから。
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