法人成りしたら個人事業主の時とは変えるべきこと

法人成りしたら、「会社は他人」という意識をもっておきましょう。

そして、名義が意外に重要なことも。

これを理由として、変えるべきこともあるのです。

 

法人成りしたら最初に知って欲しいこと

法人成りとは、個人事業主だったかたが会社をつくり、それまで行っていた事業を会社として行うようになることを言います。

つまり、おなじ事業が続くわけです。

でも、個人事業主としては廃業することになります。

そして、ほとんどの場合は、その個人事業主が会社の社長になり、事業は続いていく…と。

 

このとき知って欲しいのは、「会社は他人」だということです。

会社のことを、法人といいますしね。

法律上は、人のようにあつかうのです。

 

そもそも会社は、個人ひとりのお金ではまかなえないような事業をするために作られた仕組みです。

事業のアイディアはある。

でも、お金が足りない。

そんなときに、だれかにお金を出してもらい、その事業をおこなう。

 

その事業は、誰のものでしょうか…?

それは、お金を出したひとのもの。

 

この仕組みは、たとえ自分ひとりがお金を出して会社をつくったとしても同じです。

自分のなかに、つぎの2人分の役割をもつことになるのです。

  • お金を出したひと……株主
  • 事業を行うひと……経営者

 

ここで気をつけたいのが、「株主はふだん会社の財産には手を触れない」こと。

たとえば、上場企業の株式を買ったとしましょう。

すると、その会社の株主です。

でも、だからといって、その会社に乗り込み「自分の分のお金を寄こせ」と言えるでしょうか。

あるいは、「会社で使っているものを、自分にも使わせてくれ」などと。

そんなこと、できないですよね。

 

株主というのは、経営を丸投げしている存在です。

自分の出したお金を、ふたたび手にすることができるのは、その会社の株式を売ったとき。

(利益のいちぶは配当としてもらえますけれどね)

 

ですから、会社のものは、他人のものと同じようにあつかうことになるのです。

これが、「会社は他人」といった理由です。

 

個人事業主のときは、すべてが自分のものでした。

でも法人成りすると、「それは誰のものか」がすごく重要になってきます。

たとえば、売上も経費も、会社のものですからね。

代わりに、自分は会社から役員報酬をとるわけです。

 

このことを踏まえると、個人事業主の時とは変えるべきことが出てくるのです。

 

個人事業主の時とは変えるべきこと

法人成りしたら、次のことに気をつけて、体制を変えていきましょう。

  • 口座の名義
  • お金の貸し借り
  • 事務的なこと

 

口座の名義

法人成りしたら、かならず「会社名義の口座」をつくりましょう。

売上の入金、経費の支払い、そのほか事業にかかわるすべての入出金。

これらは、会社名義の口座でおこなうのがよいです。

 

「売上も経費も、もはや自分のものではなく、会社のものである」。

これを、書類上でも示しておくのがよいのです。

というのも、事業において「名義」は意外に重要だからです。

 

たとえば、車を購入するとき。

会社の車なら、支払いは会社がするものです。

でも、それを自分が支払ってしまうと、その車はいったい誰のものなのか。

 

もし会社のものとするなら、自分から会社へお金を贈与したことになる…

なんて思われてしまうことも。

(こんなときは、貸し借りとするのが一般的です)

 

あるいは、売上の入金が、会社ではなく自分の口座へ入金される。

これは、会社の口座ができるまでは、しょうがないことです。

ただ、脱税の手法として、売上をほかの名義の口座へ隠すというのも、よくある手口だったりします。

経理をするときに気をつけなければ、痛くもない腹を探られることになってしまいます。

 

こうしたことを曖昧にしないためにも、会社名義の口座が必要なのです。

 

なお、口座をつくるなら、社会保険料の振替ができるほうが便利です。

法人成りしたら役員報酬をとることになり、社会保険料を払うことになっていきますから。

いま現在、いちぶのネット銀行では対応していないところがあるので、気をつけておきましょう。

 

お金の貸し借り

会社のお金は、自分のものではありません。

もちろん、その逆もしかり。

 

なので、たとえば会社の経費を、自分個人のお金で払うとき。

そのときは、自分のお金を会社に貸したことになります。

(会社からみれば、借りたことに)

 

いっぽう会社のお金を、自分のプライベートのためにつかうなら。

そのときは、会社からお金を借りたことに。

(会社からみれば、貸したことに)

 

こうした貸し借りは、会計データをチェックするなど気にしておきましょう。

いずれは、精算しなければならないので。

「会社は他人」というのは、ここでも強く影響してきます。

 

たとえば、毎月5万円の経費をたてかえるなら、年間60万円。

それを5年つづければ、300万円。

これくらいの金額になることは、じつは珍しくないのです。

 

できれば、カードは会社・個人で分けるほうがやりやすいですよ。

買い物のときに「どっちだったかな…」ということもありますけれどね。

 

ただ、貸し借りはいずれ精算しなければならないことは知っておきましょう。

そして、その時のために、会計データは定期的にみておきましょう。

まとめて精算すると、けっこう大変なときもありますから。

 

事務的なこと

法人成りすると、事務的なことが増えてきます。

 

たとえば、役員報酬。

役員報酬は、基本的には株主総会で決めるものです。

そのため、株主総会の議事録を、そのつど作っておく必要がでてきます。

 

また、役員報酬をとるなら、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入が義務になります。

個人事業主のときの社会保険は、役所で計算され、だまっていても納付書が送られてきました。

でも法人成りすると、計算のための書類は、会社が作って送ることになります。

 

さらに、役員報酬からは、所得税などの天引きもおこなわれます。

この天引きした所得税は、会社で集計し、納付書をつくり、税務署へ払うことになります。

 

こうした事務的なことが増えてくるため、経理にもそれなりの手間が増えてきます。

複式簿記も必須ですしね。

 

ただ、こうした事務をちゃんとやらないと、いつかツケが大変になってしまいます。

事務的なことは、義務だったりもしますので。

なので、法人成りしたら、個人のときよりも事務が増える…と意識を変えておく必要があるのです。

 

まとめ

法人成りしたら、個人事業主の時にくらべ、変えるべきことがでてきます。

それらは、ほとんどが「会社が他人」であることに由来するものです。

その代わりに、会社ならではの信用であったり、税金面でトクするようなこともあります。

 

今回ご紹介したことにくわえ、「社長」と呼ばれることにも慣れていきましょう。

よくない目的のためにつかう輩もいますから。

これも、おおきな変化のはずですよ。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。