会社の現金が帳簿よりも少ない・多いときの原因と対策

現金残高は、帳簿上と現実がピッタリ合っているでしょうか。

ズレている原因と対策を、少ないとき・多いときの順に確認しておきましょう。

 

帳簿よりも現実が少ないとき

現金が、決算書などの帳簿では「100」なのに、現実には「70」しかない。

足りない「30」はどこへ行ったのか。

考えられるのは、次のことです。

  • 経費などに使っている
  • 会計ソフトの入力間違い
  • だれかに貸している

 

経費などに使っている

経費などに使ったことを、会計ソフトに入力していない。

お金は出ていったのに、それが帳簿には反映されていないわけです。

 

これには、たんに入力を忘れているときと、経費などのために前もってお金を渡している。

この2種類が考えられます。

 

入力を忘れていたなら、入力をすれば大丈夫。

いっぽう、前もってお金を渡したなら「前渡金」や「仮払金」などで入力しておきましょう。

年度末には、てん末をチェックすることも忘れずに。

 

会計ソフトの入力間違い

おなじ経費を2回入力してしまう。

「100」を「1,000」のように、金額を間違えてしまう。

すると当然、現実よりもすくない現金残高になってしまいます。

 

これを防ぐには、ひたすらチェックするしかありません。

会計ソフトの入力は、入力自体も面倒なもの。

でも実は、いったん入力したあとのチェックは欠かせないことを知っておきましょう。

現金だけではなく、ほかの科目についても「合っている」状態にしなければならないのです。

税金だって、本来より多くなってしまう可能性がありますから。

 

だれかに貸している

会社のお金をプライベートにつかう。

会社のカードで、プライベートの買い物をする。

こうしたことは、会社からみたとき、その人へお金を貸していることになります。

 

このときの問題は、おおきく次の5つ。

  • 会社がお金を貸すときは、利息を取らなければならない
  • 貸し借りの自覚がないと、貸している金額がとても大きく膨らんだりする
  • 長いあいだ返してもらえないときは、その人へのボーナス扱いとなる
  • 融資の申し込みでツッコまれる
  • 貸し借りを解消するのも大変

 

会社というのは、儲けることが前提の仕組みです。

そのため、お金を貸すなら、利息をとるのが当然。

ということがあるので、税法のルールでは、利息は「取らなければならない」のです。

利率は、世間の相場ですけれどね。

 

ただ、たとえば自分でつくった会社なら、いわば自分のようなもの。

会社のお金・自分のお金。

区別はあってないようなものです。

会社がピンチなら、とうぜん自分のお金をつかいますしね。

 

とうぜんの事とはいえ…

これが、貸し借りという意識をもちにくくなる原因でもあります。

こまめに帳簿をチェックしていないと、気がついたときには3ケタ万円くらいの貸し借りになっていることもあります。

毎月5万円をプライベートにつかうなら、年間で60万円ですから。

それを数年くりかえせば、3ケタ万円になるのも驚くことではありません。

 

もし、こまめに精算していればよいのですが、そのまま放置されていることもあります。

すると、精算する意思がないのなら、あげたんだね…と捉えられることも。

これが、ボーナスにあたることになってしまいます。

「ボーナスなら、所得税の天引きもしないと」

「その所得税を払ってね」

こんな可能性もあったりします。

 

また、現金残高があまりにおおい状態で、融資の申し込みにいくとき。

「こんなにお金があるのに、なぜ融資が必要なんですか…?」

ちょっと答えに詰まりますよね。

金融機関が言いたいのは、次のこと。

「だれかに貸しているお金があるなら、それを返してもらえばいいじゃないですか…」

 

でも、そのお金を返すこと、貸し借りを解消することは大変です。

会社のお金をプライベートにつかっていたということは、その人の役員報酬などがほんらい必要な金額よりも少なかったということ。

解消するには、ほんらい必要な金額にくわえ、返すための分も上乗せした役員報酬などにしなければなりません。

すると、個人の税金や社会保険も高くなってきます。

解消するには、貸し借りがたまっていった期間の倍くらいはかかってしまうかも。

 

会社のお金やカードをプライベートの買い物につかうと、あとあと大変だということを知っておきましょう。

 

帳簿よりも現実が多いとき

現金が、決算書などの帳簿では「100」なのに、現実では「150」もある。

余分にある「50」は、どこから来たのか。

考えられるのは、次のことです。

  • 売上を会計ソフトに入力していない
  • 会計ソフトの入力間違い
  • だれかから借りている

 

売上を会計ソフトに入力していない

現金をあつかう商売をしていると、ときに売上の入力を忘れることもあります。

1日の終わりも、忙しいですからね。

 

ただ、この問題は、金額や意図によっては、脱税の王道でもあります。

会計データが、レジの金額や領収書の控えと合っているか。

なるべく小まめに合わせるようにしましょう。

 

会計ソフトの入力間違い

うえでも書きましたが、入力のさいに金額を間違えることはあります。

ゼロひとつなんて、指のリズムで簡単に間違えるものです。

「00」があるテンキーをつかっているなら、間違いはさらに大きく…

 

会計ソフトは、いったん入力したあとのチェックが大事なのです。

レジや領収書の控えと照らし合わせるだけではなく、年度ごと・月ごとでも過去とくらべてみる…など。

 

だれかから借りている

自分のお金を、会社のためにつかう。

これは、会社からみると「借りている」ことになります。

自分でつくった会社なら、こうしたことも普通におこなわれるのが現実です。

 

なので、「会社はお金を○○円借りた」と会計ソフトに入力する。

これで、帳簿と現実は合うことになります。

現実の残高から逆算すれば、いくら借りたのかも分かりますから。

もちろん、その他のことをすべて入力している…という前提で。

 

でも、この「借りているお金」にも、次のような問題があります。

  • 精算するには、黒字が必須
  • 貸している側にとっては「貸付金」
  • 親族間の迂回贈与

 

借りているお金があるなら、返さなければなりません。

個人のお金・会社のお金。

この2つは、たとえ自分の会社であっても、別物ですから。

 

それを返すためには、会社のお金を増やす必要があります。

そのためには、黒字にし、税金を払う…と。

おそらく、お金を借りているときは赤字でしょうから、欠損金の繰越控除がつかえ、税金も最低限ちかくなるとは思いますが。

 

ただ、その繰越控除にも、10年以内という期限があることは注意しましょう。

つまり、会社がお金を借りてから10年以内に精算できないなら、10年よりも後の年度の黒字には、繰越控除がつかえないのです。

そのときには、税金も普通にはらう必要がでてくる…と。

 

そして、貸している側にとっては「貸付金」ということも忘れてはなりません。

この貸付金は、相続税の対象にもなるものです。

あまりにも長いあいだ解消できないなら、そういうこともあり得ます。

 

でも、その貸付金を相続したとしても、返ってくる見込みはあるのか…?

貸付金がお金で返ってくるためには、会社の黒字が必須ですから。

いざ相続の場面では、こんなことも考える必要があります。

 

また、貸した人と、返してもらう人が違うケース。

これは、会社を経由した贈与にあたります。

贈与税は、1年の贈与が110万円以下ならかかりません。

それよりも多くのお金を精算するときは、この贈与にも注意しましょう。

そのためには、「だれがいくら貸したのか」を分かっておかなければなりません。

たとえ自分の会社であっても、お金の貸し借りは要注意なのです。

 

まとめ

会社の現金が、帳簿と合わないときの原因と対策についてみてきました。

どうしても合わず、かつ、金額がちいさいとき。

そんなときは「雑損失・雑収入」で合わせる方法もあります。

分からないものは、しょうがないですからね。

 

とはいえ、普段から合わせるように、なるべく手は打っておきましょう。

事業の目的のひとつは、お金です。

そのお金の管理があいまい…ということは、事業の目的もあいまいということですから。

 

お金の管理は、まとめてやると、かえって大変です。

お金は、きっと毎日のようにつかっていますよね。

であれば、管理も毎日のように…やってみましょう。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。