自分の会社の経費を立て替え精算するときのコツ・注意点
経費の精算には、こまかい数字がつきまといます。
それをすこしラクにするコツや注意点をみていきましょう。
会社のお金は他人のお金
自分で会社をつくり、自分で経営していくときは、会社のお金を自由につかうことができます。
でも、そのお金は、あくまでも他人のお金です。
会社のことを法人といいますが、「法律上の人間」というような意味がこめられています。
会社というのは、自分とは別の人間…と法律上はあつかうのです。
なので、会社のお金は他人のお金…と。
いっぽうで、会社は株主のものでもあります。
自分で会社をつくるなら、資本金をだす代わりに、その会社の株主にもなります。
だったら、その会社のお金も「株主である」自分のものと思いがちですが、そうではありません。
会社というのは、株主とは別のひとが経営する前提でつくられるものだからです。
お金の管理もふくめ、株主とは別のひとが経営するわけです。
株主は、会社のお金にさわることがない…という前提になっているのです。
そこで、社長が会社の経費を立て替えたときは、次のように経理をします。
- 社長からみたとき……会社に、立て替えたぶんのお金を「貸している」
- 会社からみたとき……社長から、立て替えられたぶんのお金を「借りている」
たとえば、社長が経費を「100円」立て替えたとしましょう。
すると、会社の経理では、次の2つのことを認識します。
- 経費……100円
- 社長からの「借入金」……100円
この借入金を会計ソフトに入力するときは、短期借入金や役員借入金という科目をつかいます。
もし、社長が経費を立て替えたあと、何もしないなら、借入金はどんどんふえていきます。
いつかは、精算しなければなりません。
そのときのコツや注意点をみていきましょう。
精算するときのコツ・注意点
立て替えた経費を精算するときは、次のことを意識しましょう。
- 精算は、だいたいでもよい
- 会社からみて貸付金にならないようにする
- 精算は立て替えた相手におこなう
精算は、だいたいでもよい
経費の精算は、まとめてやってもよいです。
あまり貯めると、プライベートに支障がでますが…
ただ、ひとつひとつの経費は、ゼロ並びの数字になることが少ないです。
それを合計しても、キリのいい数字になることは、ほぼありません。
すると面倒なのは、ピッタリ合わせることです。
まず、立て替えたぶんを合計するときに、間違える可能性があります。
こまかい数字ですから。
そして、精算するときに、見間違えたりすることもあります。
なので、いつもいつもピッタリ合わせようとしなくてもよいです。
次のように、立て替えた分よりも、すこし少なめで、キリのいい数字のぶんだけ精算するのです。
こうすることで、数字に気をつける意識がへるぶん、すこしラクになるでしょう。
ただ、借入金は、常にいくらか残っている状態になります。
それが気になるときは、たとえば決算時だけはピッタリ合わせておくとよいでしょう。
いっぽう、立て替えたぶんよりおおく精算するときは、注意が必要です。
会社からみて貸付金にならないようにする
立て替えたぶんよりおおく精算するとは、次の図です。
この場合、ほんらい精算すべき金額よりも、おおく受けとることになります。
この「おおく受けとったぶん」は、会社からみれば「貸付け」です。
じつは、会社というのは、つねに第三者と取引したときと同じように経理します。
というのも、自分で会社をつくったときは、比較的かんたんに税金逃れができてしまうからです。
たとえば、自分がもっている不動産を「1円」で会社に売ることもできるでしょう。
だれも、反対するひとはいないので。
すると、将来の相続税や贈与税などを回避できてしまいます。
でも、おなじ不動産を他人に売るときは、「1円」なんかでは売らないものです。
損しますから。
このような取引は「ズルい」と会計のルールではみます。
ゆえに、会社はつねに第三者との取引とおなじように経理するのです。
このことを貸付金におきかえてみると……
お金を貸したら、利息をとるのが普通です。
なので、会社が貸付けをしたら、相手が社長であっても、利息を取らなければいけないのです。
ちょっとした余計な収入が、会社の決算書に載ることになるのです。
このことを避けるため、立て替えたぶんよりおおく精算しないように、気をつけましょう。
精算は立て替えた相手におこなう
だれか1人だけが経費を立て替え、そのかたと精算するなら、問題はありません。
でも、複数人が立て替えるときは、それぞれとキッチリ精算しましょう。
というのも、立て替えたひとと、精算する相手がちがうと、贈与になるからです。
会社を経由した、迂回贈与とでもいいましょうか…
たとえば、社長が「100万円」立て替えたとします。
それから、社長の「家族」に、精算として「100万円」わたしたとしましょう。
このとき、会社からみると、100万円を借りて、100万円を返したわけです。
なので、借入金はなくなり、会社にとって問題はないようにみえます。
でも、実質的には、社長から、社長の家族へ100万円あげたことになります。
これって贈与ですよね。
くり返しになりますが、ふだんの精算はだいたいの金額でもよいです。
でも、相手を間違えないように気をつけましょう。
まとめ
社長や役員が経費を立て替え精算するときのコツ・注意点をみてきました。
精算をめぐっては、どうしてもこまかい数字がでてきます。
くわえて、計算まちがいや精算がピッタリいかないなど、ズレもこまかいものです。
でも、ときには大体でよい場面があることも知っておきましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
当事務所のサービス