記帳代行(会計ソフト入力)のサービス内容

記帳代行とは、会計ソフトの入力を代行すること。

ただ、それですべてが片付くわけではありません。

サービスに含まれるもの・含まれないものも確認しておきましょう。

 

記帳代行とは

記帳代行とは、お預かりした領収書などをもとに、会計ソフトの入力をおこなうことをいいます。

その最終的な目的は、税金の申告などに必要な決算書をつくること。

あわせて、帳簿、より正確には総勘定元帳や仕訳帳とよばれるものもつくります。

 

この会計ソフトの入力は、ご自身でもできるもの。

ただ、あるていどは簿記の知識や、入力のための時間も必要です。

それさえ乗り越えれば、「いつでも事業の状況が数字でわかる」というメリットもあるのです。

 

いっぽう、簿記の知識があいまいだと、利益や税金が変わってくることもある。

また、入力のためにどれくらいの時間がかかるかは、慣れというより持っている知識により変わるものです。

調べながら…というのは王道です。

ただ、そこにストレスを感じることもあるでしょう。

 

そこで、「より本業に集中するために」といううたい文句もでてきます。

これは、確かにその通り。

経営者のかたは、ホント忙しいですからね。

いっぽうで、もしご自身で入力をされるなら、そこにはメリットもあります。

より数字のことがわかる…という。

 

どちらを選ぶかは、経営者次第です。

目も当てられないくらい忙しい経営者のかたもいるので、「時間を節約したい」という切実な思いもわかります。

また、ゼロから簿記を勉強することをかんがえれば、「正確なものが欲しい」とも思うでしょう。

ただ、人任せするのはよいものの、「数字に不安がある」ことを抱えたままになってしまう可能性もなくはない。

ある意味、せっかくのチャンスを逃す…という言い方もできるかもしれません。

 

なお記帳代行は、たんに「入力するだけ」のものではありません。

その過程や入力後にも、やるべきことがあるのです。

それが、つぎの「サービスに含まれるもの」です。

 

サービスに含まれるもの

記帳代行のサービスには、つぎのものも含まれます。

  • 残高を合わせること
  • 科目の統一
  • 消費税の区分判定
  • 会計処理方法の提案
  • 計上モレの確認

 

残高を合わせること

残高を合わせるとは、それぞれの科目の内訳を正しくすることをいいます。

たとえば財布の中味のように、「今いくらあるか」だけだと簡単に感じるかもしれませんね。

でも、1年間の推移をへて今の残高にたどり着かせるのは、むずかしいこともあります。

これを実感するには、ご自身でやってみるのが一番よかったりするのですが…

 

残高が合っていないケースでよく目にするのは、つぎのようなこと。

  • マイナスの値になっている
  • 現実ではありえないくらい大きい、または小さい数字になっている
  • (おそらく)あるべきものが無い

 

この残高を合わせるのは、いったん入力が終わったあとのことです。

ご自身で入力するときは、領収書などの入力が終わったら、すべての科目の内容・推移を確認するようにしましょう。

 

科目の統一

おなじ内容の取引は、おなじ科目をつかいます。

これは会計のルールでもあるのですが、税金というより、自分のためのこと。

たとえば○○費とすべきものが△△費となっていたら、判断をまちがう可能性があるので。

 

1年分の入力をまとめてすると、その年度のなかでは、あんがい間違わないものです。

記憶があるので。

ただ、年度ごと…とみてみれば、違っていることも。

いっぽう小まめに入力をしていると、ときに間違うこともあります。

紛らわしいものってありますから。

会計データを役に立てやすくするには、おなじ取引は科目が統一されているほうがよいのです。

 

消費税の区分判定

会計ソフトの入力をするときは、消費税の区分もあわせて入力します。

免税事業者であっても、「もし課税事業者だったら」を知るために入力するケースもあります。

 

この消費税の区分は、通常、それほどむずかしくはないもの。

ただ、一度つまづくと、けっこう時間がかかることもあります。

場合によっては、消費税の計算の仕組みまで振り返らなければならないこともあるので。

会計のルールとは別に、消費税のルールも調べるわけです。

 

じつは消費税の申告書は、決算のときに一気につくるものではありません。

それぞれの領収書などを入力するときに、そのつど区分判定をし、積み上げてつくるものなのです。

 

会計処理方法の提案

ある一つの取引について、複数の会計処理が存在することもあります。

そして、それが利益や税金にも影響することがある。

 

そのとき、なにを重視するかにより、選ぶべき方法は変わります。

  • A なら○○になる
  • B なら△△に
  • C なら◇◇に

と、こんな提案をし、選んでいただくことも記帳代行に含まれます。

 

計上モレの確認

たとえば月払いのものなら、1年で12個あるのが道理です。

月末が土日祝のときは、たまに変わりますけれどね。

でも、あんがいモレがあるものなのです。

とくに、口座引き落としではないものが。

 

こうしたものは、うえの残高を合わせるときに判明することもあります。

あるいは、経費になることを知らずに数年間のあいだ放置されているようなことも。

そうしたチェックを、お話を伺いながらするのも、記帳代行に含まれるものです。

 

なお、会計データにかんすることでも、サービスに含まれないものもあります。

 

サービスに含まれないもの

つぎのことは、記帳代行には含まれません。

  • 分析
  • 消費税の試算
  • 将来のこと
  • 資金繰り
  • 税務相談

 

分析

会計データを深掘りすれば、この後に書くこともふくめ、いろんなことが分かります。

もしかしたら、経営の役に立つかもしれないことも。

 

でも、そのためには「深掘り」する必要がある。

これには、やはり時間も手間もかかるのです。

それにくわえて、事業の状況や経営者の考えをうかがう必要もあります。

そうでなければ、それは役に立たないものかもしれませんから。

 

税理士や会計事務所にとって、こうした知識やノウハウも売り物です。

ですから、記帳代行とはべつに料金が設定されています。

 

消費税の試算

消費税には、原則的な方法・簡易課税の2種類の計算方法があります。

あたらしくインボイス登録したときは、2割特例も。

それにくわえて、単価100万円以上の固定資産を購入したときは、計算方法にも縛りがつくこともあります。

 

これらと、その時々の状況をふまえると。

消費税の計算方法の選び方により、トータルの納税額で差がつくこともあります。

そのためには、将来の見通しをふまえたうえでの試算が必要です。

これもまた、記帳代行には含まれないものです。

 

将来のこと

将来の予想をする。

すくなくとも「つぎの決算がどうなりそうか」くらいは。

これは事業をしていくにあたり、とても良いことです。

このために過去の会計データが存在するといっても、過言ではありません。

 

もちろん、将来を予想したとしても、その通りにいくとはかぎりません。

むしろ、そうならないほうの可能性が高い。

でも、「○○したい」とか「○○が欲しい」ときって、どうでしょうか。

仕事をはなれた場面のほうが想像しやすいとおもいます。

 

きっと、「将来こうなりたい」が頭にあるはずです。

わりと具体的に。

それは、事業でもおなじです。

将来どうなりたいかを数字であらわすことができなければ、偶然だより。

数字であらわしたほうが、行動しやすくなり、近づける可能性があがると思うのです。

 

資金繰り

売上や経費は、お金が出入りしたときに利益の計算に組みこまれるわけではありません。

モノやサービスが移動したときに、組みこまれるのです。

これは、会計のルールがそうなっているので、しょうがないこと。

 

ただ、そのルールが原因で、利益とお金にはズレが生まれます。

たとえば黒字が「100」だとしても、お金が「100」増えるとはかぎらないのです。

この仕組みを突き詰めていくと、黒字であってもお金が足りなくなることがある。

ぎゃくに赤字なのに、お金がたっぷりあることもある。

こうしたことに惑わされると、つかってはいけないときにお金をつかうようなことも出てきます。

 

それを避けるには、会計ソフト入力とはべつに、お金の動きだけを集計して管理する必要があります。

いっぱんに資金繰り表とよばれるものをつかい。

これも、記帳代行には含まれないものです。

 

税務相談

記帳代行がおわり利益がわかれば、節税のことも気になるとおもいます。

もちろん、何もお伝えしないわけではありません。

ざっくりとした予想や、うえに書いた会計処理方法の提案にふくめて、あるいは世の常識とされているようなことはお伝えします。

 

でも、それを超えたもの。

たとえば、会計データを見ただけでは状況が分からない。

試算が必要なもの。

事業からはなれて相続や贈与にかんすること…など。

こうした税金にかんするご相談は、記帳代行のサービスには含まれません。

 

まとめ

記帳代行というサービスがどういうものか。

それに含まれるもの・含まれないものを確認してきました。

 

なお、料金の相場は、1仕訳で110円前後のようです。

1仕訳とは、会計データ1つのこと。

たとえば、コンビニで文具と打ち合わせのお茶を買ったとしましょう。

すると、文具は事務用品費(消費税10%)、お茶は会議費(8%)と2つの仕訳になります。

 

また、ご自身で入力をするなら、会計ソフトが必要です。

おそらく保守料も必要でしょうから、毎年5万円くらいの支出になろうかとおもいます。

 

もし、ご自身で入力ができるようになりたいと感じるのなら、単発で相談にのる税理士もいますよ。

(わたしも含めて)

 

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。