会社の資産が多すぎるときのリスク

資産は、もともとは手持ちのお金だったものが姿を変えたものです。

それを利用して、将来の収入につなげるものなのです。

資産が多いということは、回収しなければならない収入も多いということです。

なので、資産が多すぎれば、回収できないかもしれないというリスクを抱えることになるのです。

 

資産はもともとお金だったもの

会計の要素には、次の5つのものがあります。

  • 資産
  • 負債
  • 純資産
  • 収入
  • 経費

 

これら5つの要素は、貸借対照表と損益計算書にわけて、それぞれ次のように表示されます。

 

今回とりあげる「資産」には、たとえば次のようなものがあります。

  • 現金・預金
  • 商品や材料などの在庫
  • 前払○○
  • 固定資産
  • 売掛金、未収入金

 

これらを含め、資産は「もともとお金だったもの」です。

どういう経緯でお金が姿をかえたのか、その性質などを簡単に振りかえっておきましょう。(現金預金は省きます)

 

商品や材料などの在庫

商品や材料は、それを売ることにより、収入が得られるものです。

商品などを買うときにお金が出ていき、売れたときには、出ていった以上のお金が入ってくる。

この差額が「利益」であり、このサイクルを繰り返すことによってお金を増やしていくわけです。

 

でも、商品などは売れなければ経費になりません。

まだ売れていないものが、貸借対照表に資産として載るのです。

この在庫が「もともとお金だった」ということに違和感は感じないと思います。

 

前払○○

前払金・前渡金・前払費用。

これらは、モノやサービスを購入するときに前払いしたときにつかう科目です。

 

お金は出ていったものの、モノやサービスはまだ受け取っていない状態です。

受けとったときに、それを利用して収入につなげていくものです。直接的に、あるいは間接的に。

つまり、将来の収入に関係するものなのです。

 

やはり「もともとお金だった」ということに違和感はないでしょう。

 

固定資産

建物や車・機械・備品など、1つあたり10万円以上のもので、1年を超えてつかうものを固定資産といいます。

これらは、商品のように売って収入に換えるものではなく、自分で利用することにより事業の環境をととのえ、収入を得やすくするためのものです。

製造業における機械のように、必須のものもありますが。

 

これらを「利用した」という痕跡は、「減価償却費」という経費として、損益計算書に載ることになります。

貸借対照表に固定資産として載るのは、購入するために出ていったお金のうち、まだ経費になっていない部分です。

つまり「まだ利用していない」部分です。

この部分は将来に利用して、将来の収入につなげていくものです。

 

上記2つのように「もともとお金だった」ということに違和感はないでしょう。

 

売掛金、未収入金

売掛金や未収入金は、モノやサービスを相手に提供したものの、まだお金を受けとっていないものです。

「これからお金に換わるもの」といえます。

 

これらが「もともとお金だった」ことを理解するには、次のようにワンクッションおいてみましょう。

  • 在庫を買うために、お金が出ていった
  • 売れたけど、まだお金は受けとっていない

 

過去に、お金が在庫に姿を変えているわけです。

なので「もともとお金だったもの」と言えるのです。

 

 

こまかく見ていけば、資産には他にもいろんなものがあります。

でも、すべて理屈は同じです。

「もともとはお金だったもの」。そして「これから利用してお金に換えていくもの」。

これが資産なのです。

 

資産は、少なすぎてもいけないし、多すぎても問題があります。

もし商品が少なければ、売って得られる収入が少なくなることは、当たり前のことです。

いっぽう、多すぎるときのリスクも考えてみましょう。

 

資産が多すぎるときのリスク

事業は、ひたすら次のサイクルを繰り返すものです。

  • お金が出ていく
  • 出ていった以上のお金を回収するように努力する

 

資産が多いということは、出ていったお金が多いということです。

このときのリスクは、「出ていったお金を回収できるのか…」です。

 

先ほどの4つの項目について、回収できるかどうかという視点からみてみましょう。

 

商品や材料などの在庫

在庫は、一度にたくさん仕入れるよりも、小まめに仕入れるほうが、資金繰りの観点からはリスクがすくないです。

 

一度にたくさんの在庫をまとめて仕入れるなら、出ていくお金も大きいです。

それに比例して、売れなかったときの被害も大きくなるわけです。

 

もし、小まめに仕入れをしているなら、その被害も小さくなります。

いっぽうで「売り逃し」という可能性もありますが……

 

損益計算書には、「売上原価」として「売れた在庫がいくらだったか」が載っています。

この売上原価は1年度分、つまり12か月分です。

 

仕入れてから売れるまでのサイクルを考えてみましょう。

もし、それが1カ月なら、売上原価の1/12の在庫を、月に1回仕入れればこと足りるはず…

こんな考え方もできます。

 

在庫の金額は、単体では多いのか少ないのかは判断できません。

過去のデータやいまの情勢・将来の予測との比較でかんがえるものです。

そして、「在庫の数をかぞえる」のも、面倒な作業といえるかもしれません。

 

でも、「出ていったお金が戻ってくるのか」は常に見ておく必要があります。

それが顕著にあらわれるのが在庫です。

なので、在庫をみたら「それはいつお金に換わるのか」という目線をもっておきましょう。

 

前払○○

前払金・前渡金・前払費用は、通常あまり大きくはなりません。

事業は、基本的に後払いのことがおおいので。

 

ひとつ気をつけたいのは、家賃のように「支払ってから1年以内にサービスを受けるものは、支払ったときにすべて経費にできる」という特例です。

「短期前払費用の特例」といいます。

ほんらいはサービスを受けたときに経費になるのに、例外的に支払ったときに経費にできる特例です。

 

この特例をつかうとき、前払いのぶんは貸借対照表にあらわれません。

経費として損益計算書に載っているので。

「節税」としてこの手法がつかわれることもありますが、「お金がまとめて出ていっている」ことは意識しておきましょう。

もし途中で解約でもすれば、お金が戻ってくる保証はないので。

 

固定資産

「出ていったお金を回収する」という視点からみると、固定資産は少ないほうが安全です。

将来、なにがあるか分からないので。

また、まとめてお金が出ていっているので、普段の運転資金がたりないということにもつながります。

 

ただ、事業の形態によっては、持たざるを得ないときもあります。

それでも次のようなことは検討しておきましょう。

  • リースは?
  • 減価償却費や保守料をふくめたうえで、将来も利益がでるか

 

もし利益が出なそうなら、他のところを削るか、事業に支障の出ない範囲で売ったりするしかありません。

こういうことを「前もって」予測しておきましょう。

 

売掛金、未収入金

売掛金や未収入金は、通常は商品などが売れてから1~2か月くらいで回収できるものです。

たとえば1か月でで回収できるなら、売掛金は売上の1/12くらいの金額になるはずです。

季節の変動などあるときは変わりますが。

 

このような視点で売掛金や未収入金を調べておきましょう。

請求したのに入金がないなんて、あってはならないことですから。

 

まとめ

すべての資産は、もともとお金だったものです。

資産が多いということは、出ていった「まま」のお金も多いということです。

その出ていったお金を回収するのが事業です。

お金が先に出ていくのは、事業の仕組み上さけられないことですが、「回収できるかどうか」という視点で数字をみるようにしましょう。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。