発生主義を難しく感じたときの会計ソフト入力方法

発生主義で入力するときの大きな問題は、残高が合わないこと。

その問題を軽減するには、期中は現金主義で、期末だけ発生主義…という方法から慣れていくのもアリです。

 

発生主義のメリット・デメリット

会計ソフトの入力は、発生主義でおこないます。

個人事業主で所得が少なめのかたには例外的に現金主義も認められますが、そうでなければ義務となっています。

 

その発生主義とは、モノやサービスが移動したタイミングで、収入や経費を利益の計算に組みこむ方法のこと。

お金の動きは、度外視するわけです。

 

たとえば商品をあつかっているなら、その商品が相手のものになった時点で、売上が発生します。

サービス業なら、そのサービスの提供が完了した時点で。

もちろん、常識的にかんがえたときに、売上の代金を受けとれるという前提あってのことですが。

 

いっぽうの現金主義では、お金が入ってくれば売上、出ていけば経費…とシンプルです。

もちろん、借入金や減価償却するものなど、発生主義とおなじ扱いをするものもありますけれどね。

 

さて、発生主義のお話に戻りますが…

その発生主義には、次のようなメリットがあります。

  • 月ごと・年ごとの正しい利益がわかる
  • 現金主義より早めに収入や経費がわかるので、納税予測がたてやすい
  • 会計のルールとして正しい

 

いっぽう、デメリットには次のようなものが。

  • 手間がかかる
  • 入力するときに、現金主義よりも多くの資料が必要
  • 「残高が合わない」ことが増える可能性がある

 

とくに厄介なのが、最後の「残高が合わない」問題です。

その残高が合わないのがどういうことか、そして合わない理由も確認していきましょう。

 

なぜ残高が合わなくなるか

残高が合わないとは、売掛金や未払金、あるいは売上や○○費など、それぞれの科目の数字が、正しくなっていないことを言います。

 

売掛金をサンプルに、すこし数字をまじえて流れをみてみましょう。

この売掛金は、売上の代金を後払いでもらうときに登場するものです。

 

たとえば商品が「100」で売れたときは、次のことが会計データに入力されます。

  • 売上が「100」増えて、売掛金も「100」増える

その後に入金されると、次のことが。

  • 現預金が「100」増えて、売掛金は「100」減る

このように、売掛金は増えて・減る…を繰り返すのです。

 

そのときに、おなじ金額が増えて減るなら、最後にはゼロになりますよね。

(どんな科目も、ゼロから始まります)

ただ、ゼロにならないこともある。

これが、残高が合っていない状態なのです。

 

その原因には、次のようなことがあります。

 

  • 売掛金が増える金額がちがう

売上の請求書がまちがっていて、それを入力した。

請求書が税抜きになってたが、入力するときに税込みにしなかった。

あとで追加の売上があったけど、それを忘れた。

 

  • 売掛金が減る金額が違う

値引きしたことを、入力しなかった。

振込手数料をひかれて入金されたとき、「100」の売掛金を「98」しか減らしていなかった

 

  • 売掛金と入力すべきところ、ほかの科目にした

会計ソフトでは、キーボードに「uri」と入力すると「売掛金、売上」の2つが候補に表示されることがあります。

そして、入力を続けていると、よく使っているものが最初にくる…など順序が入れ替わることもあるのです。

そこで選択をまちがうと、売掛金と売上を取り違えることが、ままあります。(わたしも…)

ということ以外にも、仮払金や仮受金などがここに参加してくることもあったりします。

 

このような原因のせいで、売掛金だけでなく、すべての科目に残高が合わない可能性があるのです。

すると、たとえば売上が2重になっていたり、あるいは1つ欠けていたり…と、利益そして税金も合わないことになってしまいます。

 

こうしたことを防ぐには、たとえば売掛金だけを抜きだして、過去からの推移をチェックする。

こうした作業が必須なのです。

でも、この作業は、じつはとても時間がかかるもの。

すべての科目について、推移をチェックするわけですから。

 

そして、もし残高が合わないものがあったら、その原因をさぐり、合わせるところまで調整しなければなりません。

利益と税金もちがってくるわけですしね。

(このときにかかる時間は、未知数…)

 

会計ソフトに慣れないときは、入力するだけでも大変ですよね。

でも、その後に残高をチェックするための時間は、入力のための時間よりも多くなることもあったりします。

だから、発生主義は大変なのです。

 

この大変さを、いくらか軽減する方法が、次のやり方です。

 

期中は現金主義、期末だけ発生主義

期中は、お金が入ってくれば売上、出ていけば経費とする。

そして、期末だけは発生主義とする。

この方法にすることで、残高をチェックするための時間は、大幅に削減されます。

売掛金などが登場する回数自体が減るわけですから。

 

もちろん、全体として発生主義になるように、いくらか調整は必要ですけれどね。

たとえば期中に経費にしたものでも、翌年度のものが混じっていれば、それは今期の経費からはのぞく…など。

 

ただ、残高をまちがう可能性が減るぶん、かえって正しい結果につながりやすくもなります。

反面、月ごとの利益は正しいとはいえない。

売掛金や未払金も減るぶん、先が見えづらくなる。

過去の比較をするときに、並べ方に注意が必要かもしれない。

所得税の預り金のように、残高をチェックしなければならない科目は、いくつか残る。

翌年度の始めのほうは、前期の売掛金や未払金に注意が必要。

こんなデメリットもあるんですけれどね。

 

うえにも書きましたが、会計ソフトの入力は、発生主義でやらなくてはなりません。

ただ、この方法で始めて、慣れてきたら完全な発生主義にステップアップする。

こんなやり方でも良いとおもいます。

発生主義は難しいな…とかんじたら、検討してみてくださいね。

 

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。