通帳だけを頼りに経営はできるのか

経営者は、とても忙しいものです。

もしその負担が減るなら…と、この記事を書きました。

かりに通帳だけを頼りに経営するとしても、いくつか条件があります。

 

絶対に避けること

経営していて絶対に避けなければならないのは、お金が足りなくなること。

その時点で、事業が終わってしまいますから。

 

ただ難しいのは、お金があるからといって黒字とは限らないこと。

いっぽう、お金がなくても赤字とは限りません。

これが、利益とお金の関係でややこしいところなのです。

その原因は、利益の計算がお金の出入りではなく、モノやサービスの移動にもとづいて行われることにあります。

 

このお金が足りなくなる問題は、いっけん通帳だけを見ていれば回避できそうにも思えます。

でも現実では、とくに人件費や消費税に関連して、つまづきが出てくることが多い印象です。

 

たとえば人件費は、給料日に払えば終わりではありません。

その後に、給与から天引きした所得税や社会保険料の支払いがやってきます。

そして消費税は、いくら払うかを計算した後で、ビックリすることも。

消費税は、赤字でも結構な金額になることも、ままあるので。

 

こうしたときに「じつはお金が足りなかった」ことに気がつくこともあります。

もし利益をみていたら、お金のつかいかたにブレーキがかかったかもしれないのに。

普段から利益を気にしていないと、「つかってはいけないお金」の存在に気がつくことが難しいこともあるのです。

 

ただ、お金というのは、ある意味かんたんです。

入ってくる・出ていく…の2つだけですからね。

もし、通帳だけを見ながら経営できるなら、ものごとはシンプルになるかもしれません。

それが出来る条件を、考えてみました。

 

通帳だけを頼りに経営する条件

通帳だけを頼りに経営するなら、つぎの条件は欠かせません。

  • お金と利益のズレが少ない
  • 未収と未払の管理ができている
  • 個人と会社のお金が区別できている
  • 消費税のこと
  • (資金繰り表をつくる)

 

お金と利益のズレが少ない

もし、お金の出入りと利益がおなじなら、口座の残高から利益を知ることができます。

年度が始まったときの残高から、いくら増減したか。

その増減が利益ですから。

だから、お金と利益にズレがでてくる要素が少なければ、通帳だけを見ていても、そう利益を間違って把握することもないのでは…と。

 

ズレが大きくなるのは、たとえば次のようなもの。

  • 商品の在庫
  • 入金まで時間がかかる仕事(出金まで時間がある経費も)
  • お金の貸し借り
  • 車や設備などの固定資産
  • 事務所の敷金やフランチャイズ加盟金などの、いわゆる権利金
  • 解約返戻金など、いずれお金が戻ってくるような保険
  • 源泉所得税や住民税の納期の特例をつかっている
  • 社会保険料

 

こうしたものが少なければ、お金と利益はだいたい一致するはずです。

また、銀行口座もいくつかあると全体を把握しにくくなるものです。

だから、口座は1つだけにしておくのも良いかもしれないですよ。

 

未収と未払の管理ができている

おなじくお金と利益のズレに関連して。

かりにズレがあったとしても、未収と未払の管理ができていれば、将来の予想もつきます。

将来こうなりそうだから、このお金はつかわないでおこう…と。

そんな考えもできるようになるわけです。

すると、お金が足りなくなる問題は、きっと起こりにくくなる。

 

でもその管理をしようすると、頭の中だけで把握するのは難しいかもしれませんね。

いまは、現金商売は少数派ですから。

多くの支払いは、後からやってきます。

 

だから、なんだかんだ帳簿のようなものを作るのが、かえってラクになるのかも。

あるいは、支払いの請求書がきたらサッと払っておくのも一案です。

給与から天引きした所得税なども、期限をまたずに、すぐに払っておく。

カードは、あまり使うと厄介ですけれどね。

 

ただ、通帳だけを見ているにしても、未収と未払の管理は必須ですよ。

 

個人と会社のお金が区別できている

中小企業では、社長などの役員と会社のあいだで、お金の貸し借りが行われることがあります。

これは、あるていど避けて通れないことかもしれません。

いちいち個人と会社のお金を区別するのは、けっこう大変ですから。

 

たとえば、出先でたまたま取引先に会ったとき。

「そういえば、新しい仕事の話があって」なんて言われたら、とりあえずお茶なりして話を聞くものです。

でもそこで、「ちょっと手持ちがないので銀行へ」とは言いにくいですよね。

だから、個人のお金で立て替えておく。

 

こんな風に立て替えをするほうが、ラクではあります。

ただ精算するためにレシートなどを集計するのは、地味に大変です。

だから、気がついたら貯まってしまうことも。

 

すると、口座の残高のうち、けっこうな金額がその立替分だったりすることも。

ここで、「会社のホントのお金はいくらあるのか」を間違ってしまうこともあります。

そしてそれが、想像上の利益にも影響をおよぼす…と。

 

いつもピッタリ精算する必要はないですが、「小まめに精算」する。

あるいは帳簿をつけるなり、個人と会社のお金は区別できているのも大事です。

 

消費税のこと

仮に、いま申告するとしたら「消費税はいくらになるか」。

これを知っておくことも大事です。

 

たとえば売上が「110」のとき。

このうち「10」は、税務署へ払う消費税です。

(経費はないものとします)

 

でも、「110」のうち「103」をつかっても、申告までは「7」が残っている状態です。

これを「まだお金がある」と勘違いすることがあるのです。

そして、申告のときに「3、足りない」と気がつく。

 

このようなシンプルな数字だと「間違うわけない」と思いますよね。

でも、ケタ数がふえ、未収や未払もからんでくると、時にあることなのです。

 

とはいえ、消費税の計算をするためには、会計ソフトの入力も欠かせません。

それなら、通帳だけを頼りに…とは言えないですよね。

だから、たとえば1か月の間にふえたお金の10%は避けておく…とか。

経費の大部分を占めるであろう人件費には消費税がかからないので、10%だと多いはずですけれど。

ただ、消費税については、計算方法を知ったうえで、多めに納税のためのお金を避けておくのが安全だと思います。

 

(資金繰り表をつくる)

資金繰り表は、将来のお金の出入りを予想するために作るものです。

将来の口座履歴といえます。

純粋に通帳だけを頼りに…とはいえませんが、あるとより安心できるはず。

というか、仮に利益を把握していたとしても、欠かせないものです。

 

作りかたを説明した記事があるので、読んでみてくださいね。

「会社のお金がよく分からない」から抜け出すために(資金繰り表)

 

まとめ

通帳だけを頼りに経営できるなら、多くのことがシンプルになります。

ただ実際は、利益とお金にズレがあることにより、会計ソフト入力などの経理が欠かせません。

お金が足りなくなることを防ぐために。

だから、わたしはやっぱり経理もちゃんとやることをおススメはします。

 

でも、経営者はホントに忙しいものです。

それを見るにつけ、少しでもラクになるなら…とこの記事を書きました。

 

もし、いくつかの条件を満たすなら。

通帳だけを頼りに経営しても、おおきな被害はないかもしれません。

ただ、それをするには、やっぱり条件もあることを知っておきましょう。

いちどお金が足りなくなると、挽回するのはとても難しいですから。

 

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。