役員報酬の金額がバラバラだといくら損するか
役員報酬のことを、定期同額給与とよんだりします。
これは、毎月おなじ金額になっていることに由来するもの。
このルールを外したとき、いくら損するのかを確認しておきましょう。
なお、役員報酬とはお金ではらうものに限らないことにも注意を。
いくら損するか
役員報酬には、毎月おなじ金額でなければならない…という縛りがあります。
そうでないと、一部が「税務上は」経費にならない。
ここで損をする可能性があるのです。
少しややこしいのが、「税務上は」ということ。
それを理解するため、いったん税務のことはおいておきましょう。
まず、経費とは。
これは、決算書のひとつである損益計算書(PL)における言葉です。
この経費には、合法・非合法をとわず、すべてのものが含まれます。
そうでないと、お金はでていったのに、その使い道はどう反映されるの…?
そんな、つじつまの合わないことが出てきますから。
それから税務のこと。
法人税における経費のことを「損金」とよびます。
この損金には、非合法のものは含まれません。
だから、損益計算書では経費になるのに、法人税では損金にならないものが出てきます。
このことを「損金不算入」と呼ぶこともあります。
ちなみに、「お金は出ていったのに…」のつじつまは、問題なく合うようになっています。
さて、役員報酬の金額がつぎのようにバラバラだとどうなるか。
こんなときは、まず「毎月おなじ金額になっている部分」を探します。
すると、つぎのように分けることができます。
- 毎月おなじ金額になっている……色をぬっていない部分
- 毎月おなじ金額になっていない……色をぬっている部分
うえの色をぬっている部分が、税務上は経費にならない。
つまり、損金にはならないのです。
このときの税金を、会社と個人にわけて、確認しておきましょう。
まずは会社ですが、つぎの状況だったとします。
- 損金にならない役員報酬……100万円
- すべての役員報酬を経費としたときの利益……200万円
- 法人税等(法人税・住民税・事業税)の税率……30%
法人税等は、利益に税率をかけることで計算されます。
ただし、損金にならないものがあるので、利益は「300万円」に変わる。
ゆえに、300万円×30%で「90万円」と。
もし、役員報酬のすべてが損金になっていたとしたら「60万円」で済むところを。
いっぽう役員の個人の税金(所得税・住民税)は、損金にならない部分にもかかります。
ついでに社会保険もあわせて。
損金にならない役員報酬があるとき。
そのことで個人の税金には影響ありません。
損金になる・ならないにかかわらず、うけとった役員報酬すべてが対象になるので。
いっぽう会社のほうは。
「損金にならない部分×税率」の分だけ、損金になるときよりも余計に法人税等がかかる。
いわば節税とは逆のことになるわけです。
なお、損金にならないからといって、「その分のお金をかえせ」とはなりません。
だから、個人の財布の状況により、あえて支給するのも一つの方法といえます。
損金にならないことを回避しつつ、個人の財布をカバーするために、貸し借りをするのも方法ですけれどね。
もちろん、その後で貸し借りの解消をふまえた役員報酬の設定も前提に。
ところで役員報酬は、通常、お金ではらうものです。
でも、そうでないものも役員報酬に含まれることがある…ことを知っておきましょう。
役員報酬に含まれるもの
役員報酬には、つぎのようなものも含まれます。
役員のたちばで「トクした」と思えるときは疑いましょう。
- 会社が、役員にモノを贈与した
- 会社が、役員に相場より安くモノを売った
- 会社が、役員から相場より高くモノを買った
- 会社が、役員への貸付金を放棄・免除した
- 会社が、役員個人の借入金を肩代わりした
- 会社が、役員のプライベートの支払いなど、役員個人が払うべきものを払った
こうしたときは「時価」を基準に、役員が「トクした」金額が役員報酬となってしまいます。
こんな役員報酬のことを、「現物給与」と呼ぶこともあります。
すると、どうなるか。
まずは、うえのように役員報酬がバラバラになっているはずです。
そこで、損金になる・ならないの判定をやり直すことに。
ただ、お金で渡すときとは違い、所得税の天引きはされていないはず。
そこで、追加の源泉所得税をはらうことに。
役員個人の税金が、ふえるわけです。
くわえて役員報酬は、消費税がかからないもの。
もし、現物給与になったものを、消費税がかかる…と経理していたなら。
たとえば、役員プライベートのモノやサービスが会社の経費になっているときは、可能性が高いです。
そんなときは、追加で消費税もはらうことになってしまいます。
法人税等・源泉所得税・消費税。
この3つの税金を追加ではらうはめにならないよう、チェックしておきましょう。
まとめ
役員報酬の金額がバラバラだと、税務上は経費にならない。
つまり損金にならない部分がでてきます。
すると、損金になるときよりも余計に法人税等をはらうことになります。
この役員報酬には、現物給与と呼ばれるものもふくまれます。
会社と個人のお金・モノ・サービスは、きっちり分けるようにしておきましょう。
そのうえで、役員がトクしたと感じるときは、疑っておきましょう。
後日、3つの税金を追加ではらうことにならないように。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。