数字や会計にだまされたりしていないか

身の回りにあるなかで目を引く数字を、よくよく考えたことがあるでしょうか。

その視点は、会計・決算書をみるときにも通じるものです。

 

数字にだまされる

数字にだまされたように感じたことってあるでしょうか。

切り取り方や計算の前提などにより、その数字からうける印象が変わることってありますからね。

たとえば、顧客満足度○○%とか、容量○○%アップ、平均年収○○○万円などなど。

 

顧客満足度が95%とかって聞けば、「良いものなんだな」って思いますよね。

残りの5%は、天邪鬼な人たちかな…とも。

でも、満足度をはかったのは、どんな顧客なのか。

そもそも繰り返し買っているかたなら100%でないと、かえってマズいかも…ってなりますし。

 

そして、容量がアップしたのは嬉しいことですよね。

でも、アップする前が少なければ、たいして増えていないこともあり得ます。

単位を「g」に変えてみれば、「これだけ…?」ということも。

 

平均年収も、ある一人だけが突出しておおくなっているなら、それで平均は引き上げられます。

ほかのかたは、生活するにもギリギリだったりするかもしれません。

 

と、いじわるな見方をしましたが、こうした数字は、あんがい目にするものではないでしょうか。

おそらく、そうした数字のほとんどは、ウソではないとみています。

ただ、自分がもっている先入観やいわゆる常識、普通とされることを基準にしてしまうと…

あやまった印象をうけてしまうわけです。

(だまされるとは、ひどい言い草かも…)

 

数字を読む…と表現することがありますよね。

その「読む」とは、たんに数字そのものを識別することだけはありません。

その数字の背景や、ときには数字をつくったかたの意図もふまえておく必要があるのです。

この背景や意図をふまえるのは、決算書などを読むときもおなじです。

 

決算書を読むためには

決算書を読もうとするなら、つぎの2つのことを理解しておくことが欠かせません。

  • 利益は、お金の出入りをベースに計算されるものではない
  • 複式簿記の考えかたが必須

 

利益は、お金の出入りをベースに計算されるものではない

もし、お金の出入りをベースに利益を計算できるなら、ものごとはかなりシンプルになります。

通帳や現金の増減だけをみていれば、計算できますからね。

でも、それだと問題があるのです。

 

たとえば、利益をかんたんに調整できてしまうこと。

もし利益が大きくなりすぎたなら。

「入金は来年度になってからお願い」といえば、それ以上に大きくなるのをストップできます。

そして小さいなら、「前もっていくらか入金を…」などと調整できるかもしれません。

 

ほかにも、出資を募りたいとき。

おおきな設備投資が必要なときは、どうしても1年目に多額のお金がでていきます。

とうぜん、おおきな赤字です。

すると、1年目は配当がでることはありません。

配当がないことを知りつつ、事業がうまくいかないリスクだけを背負い、出資することはあるでしょうか。

その出資は、もちろん集まりにくくなってしまうもの。

 

そこで、お金の出入りではなく、どれくらいの活動をしたか。

その活動でどんな結果になったか。

こうした考え方をベースに、いまの会計のルールが作られてきました。

つまり、お金ではなく、モノやサービスの移動にもとづいて、利益を計算するのです。

 

たとえば売上なら、商品を相手に引き渡したとき。

サービスなら、その提供が完了したとき。

それぞれの時点で売上として、利益の計算に組みこむのです。

 

ということを知らずに、お金の出入りで計算できるとおもっていると。

「お金は減っているのに、どうして黒字なんだろう」

こんな風に、会計が分からない…と思ってしまうことにつながります。

そして、それを放置していると「数字は役に立たない…」とも。

 

じつは100%ではないので基本的に…ですが。

お金の出入りと利益の計算は、関係がないものと思っておきましょう。

そして、関係がないことを整理するのに必須なのが、複式簿記なのです。

 

複式簿記の考えかたが必須

複式簿記とは、利益と財産りょうほうの増減を把握できるようにするための仕組みです。

 

うえで、利益の計算はお金の出入りと関係がない…とかきました。

でも、売上があれば、財産にも影響します。

たとえば、代金を後でもらうことを条件に、商品を相手にわたしたなら。

そのときには、その商品の代金が売上として利益の計算に組みこまれると同時に、売掛金という財産がふえることになります。

売掛金とは、将来お金をうけとる権利のようなもの。

そして、後日に入金されたときは、売上の入金ではなく、売掛金の入金とされる。

このときは、現預金が増えると同時に、売掛金が減ることになります。

 

このように、複式簿記では、なにかに1つ動きがあると、かならず他で1つ以上の動きが把握されるようになります。

ゆえに、複式…と。

 

この複式簿記のキモは、利益ではなく、むしろ財産の計算にあるといえます。

おそらく利益については、おおくの経営者が頭の中でも、大体はできるのではないでしょうか。

ふだんから赤字にならないように経費の配分をかんがえているでしょうから。

 

でも、利益がでたのなら、それに相当するお金もふえるはず。

そうでなければ、儲かった実感がわかないですから。

ただ、利益はお金の出入りをベースに計算しないがため、利益どおりにお金は増えたりしないのです。

そんなときに出てくるのがつぎの疑問です。

「儲かったはずのお金は、どこにあるのか」

 

それを読み解くカギになるのが、財産の増減です。

お金は増えていないけれど、ほかの財産が増減しているはずですから。

ちなみに、それら財産が載っている書類を、貸借対照表(BS)といいます。

お金のことが気になったら、かならず見てほしいものなんですよ。

 

まとめ

数字をそのまま鵜呑みにすると、だまされたように感じることもあります。

でもそれは、自分がもっている基準で、その数字を見ているから。

  • その数字がどうやって計算されたのか
  • 計算につかわれた数字は、それぞれどんな条件で出されたものか
  • その数字をつくったかたは、その数字を見せることで何をしたいのか

これらを踏まえなければ、ただしい姿が見えないこともあります。

そして、それらを踏まえることができたときに、「数字を読める」と言えるのでしょうね。

 

この考えかたは、決算書などをみるときにも通じるもの。

怪しい、分からない…と感じたなら、疑うことからはじめてみましょう。

 

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。