年末調整で間違えたら会社はどうするか
年末調整では、だれかに非があるわけではないのに、間違える可能性があります。
どんな可能性なのか、そして間違えたらどうするかを確認しておきましょう。
間違える可能性が増えた
年末調整で間違える可能性は、それなりにあるものです。
そもそも頼んだ書類をだしてくれない場合をふくめ、つぎのようなことで。
- 保険料など細かい数字の記入ミス
- 過去の給与の計算ミス
- 扶養になる・ならないの判断
とくにやっかいなのが、最後の「扶養になる・ならないの判断」です。
令和7年(2025年)から年収の壁が変わったということもありますが、配偶者特別控除と特定親族特別控除をどうしようか…と。
配偶者特別控除とは、配偶者の年収が 201万円位までなら、いくらか控除を受けられるというもの。
ただし、その金額はつぎのように細かく分かれています。
(年収ではなく、所得がベースになっています)
(国税庁HPより)
いっぽうの特定親族特別控除とは、19才以上23才未満のご家族の年収が188万円以下なら、おなじく、いくらか控除を受けられるというもの。
そして、控除がいくらになるかは、やはり次のとおり細かく分かれています。
(国税庁資料「令和7年分 年末調整のしかた」より)
さて年収というのは、1月~12月の給与やパートなどの収入をいいます。
だから、12月31日まで変動する可能性があるもの。
そして年末調整は、原則として、その年の最後にしはらう、つまり12月にしはらう給与にておこないます。
たとえば給料日が15日や20日などであれば、ご家族の年収が確定していない状態で年末調整をすることになるわけです。
だれかに非があるわけではないですが、結果として年末調整を間違えることにつながる。
配偶者特別控除は以前からあったものですが、特定親族特別控除により、間違える可能性はふえたわけです。
配偶者のかたなら、年収、つまりお金のことについて細かい話もするとおもいます。
そこで、年収の調整をすることもあろうかと。
いっぽう 20才くらいのお子さんと、そうした話をするかどうか…ということもありますしね。
もし間違いがあったなら、会社としてはどうしたらよいのでしょうか。
間違えたらどうするか
年末調整で間違いがあったのなら、年末調整をやり直さなければなりません。
そうでないと、源泉所得税も違っていることになります。
そして、それが本来のものより少なければ、罰金などもかかってくる可能性がありますから。
だから、間違えたとき・やり直しのとき、と計算を2回することになるわけです。
もちろん、間違いがあったかたのみですけれどね。
このときは、間違えたときの数字も分かるように残しておきましょう。
○○申告書などの年末調整の書類において、間違っていた数字を修正液などで消してしまわずに、二重線をひいておくなどとして。
そうでないと、やり直しで差額が計算できたものの、「それは合っているのか」が分からなくなってしまいますから。
ただ、無期限でいつまでもやり直しができるわけでもなく、できるのは原則として翌年 1月末までです。
というのも、翌年 1月末までには、次のことも必要だからです。
- 法定調書の提出
- 給与支払報告書の提出
法定調書とは、1月~12月にはらった給与や地代などをまとめて税務署へ提出するもの。
そして給与支払報告書とは、内容は源泉徴収票とほぼおなじの、住民税の計算のための書類です。
もし年末調整をやり直せば、これらの数字も変わってくる。
だから、1月中には、年末調整にも決着をつけたほうがよいのです。
もし1月をすぎて間違いが判明したら…
源泉所得税が多くなっているなら、できるサポートをしつつ、社員などが自身で個人の確定申告をし、還付をうけるように促しましょう。
ぎゃくに源泉所得税が少ないときは、2月以降であっても、年末調整をやり直す必要があります。
そして、源泉徴収票をつくり直し、源泉所得税もはらい、法定調書なども訂正をすることになる…と。
年末調整では、年に 1回だけの特殊な、そして多くの書類がまとまって出てきます。
くわえて、社員のかたすべてが税金に通じているわけでもない。
知らず知らずのうち、あるいは不可抗力とはいえ、間違う可能性はあるのです。
とくに、配偶者特別控除と特定親族特別控除をうけるかたには、状況により、会社から「やり直しをする可能性があるよ」と伝えておきましょう。
そして、1月早々にもご家族の年収の確認をする…と。
まとめ
年末調整では、だれかに非があるわけでないのに、間違える可能性があります。
もし間違えたら、翌年1月中に、やり直しをするようにしましょう。
それから、法定調書や給与支払報告書の手続きも済ませると。
年末年始は、ただでさえ忙しいうえに、休みで1週間~10日ほどはつぶれてしまいます。
年末調整の準備も、12月からではなく、遅くとも11月中には書類を配る。
ご家族に働いているかたには、ややこしいことだけは伝えて、やり直しの可能性もつたえる。
など、段取りを組んでおくようにしましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。