「売上と入金・経費と出金」それぞれの違い
入金とは、お金が入ってくること。そして出金とは、お金が出ていくこと。
売上や経費は、お金の出入りとは関係ないところで把握していきます。
また、売上や経費にとらわれ過ぎて、お金の問題を忘れないようにしましょう。
「売上と入金・経費と出金」それぞれの違い
売上も経費も、お金の出入りとは関係ないところで把握します。
入金されたら売上。
出金したら経費。
このようには、ならないのです。
売上とは
売上とは、商品を引き渡したり、サービスの提供をすることをあらわすもの。
それぞれが完了したときに、利益の計算に組みこまれるのです。
この「利益の計算に組みこむ」ことを、「計上する」といいます。
なぜ、こんな仕組みになっているのか…?
そこには、おおきく2つの理由があります。
まずは1つ目。
それは、売上とは、つまり何なのか…ということ。
売上を得るのは、大変です。
時間やお金だけではなく、いろんな苦労や行動のすえ、やっと手に入るもの。
事業活動の成果といえます。
たとえ入金されていなくても、成果があるのなら、それは売上ではないか。
会計のルールでは、このように考えるのです。
なので売上は、どれくらい入金されたのか…ではなく、どれくらいの商品を引き渡したのか・サービスの提供をしたのか…を表さなければならないのです。
もし、いくら入金されたのか…でよいのなら、そこには前期や来期のものが混じってしまいます。
純粋に「今期の成果は?」を知るには、商品やサービスを軸にとらえる必要があるのです。
もしかしたら、売り上げた後で、値引き交渉や逃げられた…ということもあるかもしれません。
ただ普通は、モノを受けとったりサービスを受けたのなら、お金を払わなければなりません。
そういうトラブルの類は、後日に調整することができます。
とりあえずは、ちゃんとお金を払うという世間の常識でかんがえる。
商品やサービスの移動にもとづいて、売上を計上するのです。
それから2つ目の理由。
これは利益調整の問題です。
もし、入金されたときに売上を計上するなら、コントロールできてしまいます。
「今期は利益がたくさんで税金もヤバいから、入金は来期にしてくれない…?」
「ちょっと手数料あげるから」
きっと、こんなことが起こるでしょう。
これが合法的な節税につながるのなら、それもアリかもしれません。
でも、自分がある会社の株主だったらどうでしょう。
なにか配当金を少なくされそうな気もしてきます。
利益をすくなくして、株主に不利になるような利益調整をされるのなら、その会社の株式は買わないんじゃないか。
めぐりめぐって、結局は誰もが困りそう…
なので、売上は商品やサービスの移動にもとづいて計上するのです。
経費とは
経費とは、売上そして利益を得るための活動をあらわすもの。
その活動とは、何かを「した」ということ。
なので経費には、その活動のために「つかった」といえるものだけを計上します。
モノを買った。
サービスを受けた。
というだけでは、経費に計上できないのです。
「つかった」という表現は、曖昧ですよね。
たとえば商品なら、売れたときが「つかった」ときです。
人件費なら、目的におうじた働きが終わったとき。
車などの固定資産は、減価償却費がつかった分とされます。
30万円未満のモノや短期間の前払いなどについては、例外もあります。
でも、基本的には「つかった」ものだけが経費に計上されるのです。
経費とは、どんなものをつかって、どんな活動をしたか…ということ。
その成果が売上。
そして、成果と活動の差額が、利益。
ということが、損益計算書にあらわれるのです。
もし、出金したときに経費に計上できるなら、やはり利益調整の問題もでてきます。
でも、お金のことを考えるなら、入金・出金にもとづくほうが分かりやすいんですけれどね。
時間差をどうするか
売上と入金。経費と出金。
それぞれの間には、時間差があります。
(もちろん無いことも多くありますが、あるという前提で…)
たとえば、今期の売上が、すべて来期に入金されるとしましょう。
その間には、もろもろの支払いがやってきます。
そのためのお金はどうするか。
これが、時間差の問題です。
現実では、ここまで極端なことは少ないです。
でも、もっと多くのものが入り乱れて、複雑になっているのが常です。
このときに売上や経費、そして利益をみていると、「黒字なのになんでお金が足りないのか」という状況も起こり得ます。
(これを回避するために売上などを見ないというのは、それはそれで問題アリですが)
経費が活動、売上が成果。
これを表現するための弊害です。
時間差による問題というのは、たとえば次のようなこと。
- 手元にあるお金のうち、いくら残しておけばよいのか分からない
- 自由に使えるお金がいくらか、分からない
これを解決するには、売上や経費とはべつに、お金のことを別枠でチェックする必要があります。
そのときに役立つのが、資金繰り表です。
(参考記事)「お金が足りなくならないか?」を調べる方法
事業は、お金が足りなくなったときに終わってしまいます。
売上や経費、そして利益をみて安心することがないようにしましょう。
まとめ
売上とは、お金が入金されることではありません。
商品を引き渡したりサービスの提供を完了することが、売上なのです。
いっぽう経費も、お金が出金されることではありません。
事業の活動をするために、つかったものが経費となるのです。
売上も経費も、それなりの理由があって複雑な仕組みになっています。
事業をするなら避けては通れないものとして、付き合っていきましょう。
お金も大事ということを忘れずに。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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