役員報酬の振り込みを間違ったらどうするか
間違ったときの対応を、毎月の役員報酬と、役員へのボーナスにわけてみていきましょう。
なお、ボーナスについては、個々の事情をふまえて税理士に相談するのがよいです。
毎月の役員報酬
役員報酬の振り込み間違いについて、日付けと金額にわけて確認しましょう。
日付け
毎月の役員報酬は、法律ではつぎのように表現されています。
その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの
(法人税法 34条より抜粋)
つまり、毎月1回、かならず支給されている必要があるのです。
言い換えると、まとめ払いもできない…と。
たとえば、このさき数か月分をまとめて振り込んでしまったのなら、1か月分だけを受けとり、余分なものは返しておくのが安全です。
もし、ある月の振り込みをうっかり忘れてしまったら…?
それでも、本来の支給日で、つぎのように役員報酬を計上しておきましょう。
役員報酬は、1年を通してみたとき、毎月1回、そして12個そろっているものなので。
- 役員報酬 ×××円 / 未払金 ×××円 (社会保険などの部分は省略します)
その後、払ったときにはつぎのように。
- 未払金 ×××円 / 現預金 ×××円
そして、忘れたことに気づいたら、なるべく早く払うようにしましょう。
あまり長いあいだ放置していれば、払う意思がない、つまり役員報酬を減額したのか…と捉えられかねないので。
すると、役員報酬には経費にならない部分がでてくるリスクがあります。
もし、うっかり数日ズレてしまったら…?
そのときは、いったん「仮払金」で経理し、本来の支給日に「役員報酬/仮払金」とするのがよいでしょう。
そうではなく、いったん返金してもらい、あらためて振り込むことも考えられます。
でも、たとえば振り込みの予約をする際に、うっかり数字の入力を間違うこともあります。
そんなときに、わざわざ手数料をかけてまでやる…というのも合理的ではないように思います。
金額
1年を通してみたとき、役員報酬の内訳は、つぎのことが原因で変わります。
- 社会保険……料率が変わる
- 所得税……年末調整
- 住民税……6月と7月に変わる(おなじ金額の役員報酬がつづくなら変わらない可能性もあり)
すくなくとも、年に4回は、内訳が変わるのです。
すると、こまかい計算を間違うこともあります。
そんなときは、正しい金額で会計ソフトに入力しましょう。
そして、差額はつぎの科目で。
- 多い部分……前払金など
- 少ない部分……未払金など
その後、精算をしたときに、前払金などを解消することになります。
間違ったままの数字で会計ソフトに入力するよりも、間違ったとしても正しい数字で入力し、間違いだけを後日に調整していくほうが、おそらくやりやすいはずです。
なお、役員報酬自体を間違ってしまったときは、デリケートな話になります。
ネット情報ではなく、個別の事情をふまえて税理士に相談するのがよいです。
役員へのボーナス(事前確定届出給与)
役員へのボーナス(事前確定届出給与)には、とても厳しい縛りがあります。
ボーナスについては、決められた期限までに税務署へ「だれに・いつ・いくら支給するか」を届け出なければ、経費になりません。
そして、支給したときの「だれに・いつ・いくら」がピッタリ同じでないと、全額が経費にならないのです。
これを、たとえうっかりであっても間違うのは、とても悩ましい問題です。
ひとつ言えるのは、税務署側ではつぎのように考えているということ。
たとえば、事前確定届出給与の規定にもとづき税務署へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合には、原則として、その支給額の全額が損金不算入となることに留意する。
(法人税基本通達 9-2-14より抜粋)
「原則」があるからには、「例外」もあるはず…
ただ、その例外は、明らかにされていません。
役員へのボーナスについて、このような厳しいルールがあるのは、利益調整を防止するのが目的の一つです。
このルールがなければ、期末に浮いた利益をボーナスにできてしまうので。
すると、税金も少なくできる。
…ということを防止するためなのです。
そのため、もし間違ったのなら「利益調整が目的ではない」ことを証明できれば、経費になる余地があるんじゃないか…と思うのです。
きびしいことを言いますが、税金の世界において、「うっかり」は基本的に通用しません。
…という前提ですが、できることがあるなら、やっておきましょう。
たとえば、日付を間違えたのなら、どんな風に間違いを直そうとしたか。
それを記録に残しましょう。
電話の履歴や、メールなどを。
そして、金額を間違えたのなら…
社会保険などこまかい数字の間違いなら、すぐに解消すれば問題ないかも…と考えます。
ただ、日付についても言えることですが、間違いの程度も問題になります。
それが数日のズレなのか、月単位のズレなのか…
おそらく、月単位でズレたのなら、認めてもらうのはむずかしいように思います。
それは金額についても言えることです。
役員へのボーナスについての間違いは、このようなオープンな場で確定的なことは言えません。
そこまでの具体的な経緯や状況をふまえて、「例外的に認められそうな可能性があるかどうか」を判断すべきものなのです。
そして、そうした事情はそれぞれ違うもの。
なので、間違いに気づいたら、すぐにお知り合いの税理士の相談するのがよいでしょう。
解決にならなくて申し訳ないですが、それくらい重大でむずかしい問題なのです。
まとめ
役員報酬の振り込みを間違ったときの対応について、みてきました。
経営者なら、どうしても自分のことは後回しになりがちです。
でも、役員報酬は経費のなかでも重要なもので、きびしいルールもあります。
なので、間違いを放置することは、あってはなりません。
それを防止するためにも、経理はこまめに。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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