会社が赤字でも申告が必要なわけ
赤字なら税金もゼロ…とはなりません。
くわえて、赤字でも申告しておけばメリットもあります。
そのわけを、確認しておきましょう。
会社が払う税金
会社がはらう税金には、次のものがあります。
税目 | 内容 |
法人税 | 会社の利益にかかる税金 |
住民税 |
つぎの2つのものから成っている税金
|
事業税 | 会社の利益にかかる税金 |
消費税 |
つぎのものをベースに納付額が計算される税金
|
(注)資本金が1億円をこえる会社、従業員が100人を超えるような大規模な会社、大企業の関連会社などをのぞきます。
会社が赤字なら、とうぜん税金もゼロ…とおもいがちです。
でも、赤字でもかかる税金があったり、赤字でも申告をしておくとメリットがあることもあります。
基本的に、会社の申告は赤字・黒字にかかわらず、毎年度おこなうものなのです。
そのわけを、確認しておきましょう。
赤字でも申告が必要なわけ
赤字でも申告が必要なわけは、つぎのとおりです。
- 住民税(均等割)がかかる
- 赤字を繰り越せる
- 前期の法人税がもどってくる(かも)
- 消費税の課税事業者になっている
住民税(均等割)がかかる
住民税には、資本金と従業員数におうじてかかる「均等割」がふくまれます。
都道府県と市区町村へはらうものですが、最低でも年間「7万円」はかかります。
この均等割があること、そして下で説明することとあわせて、結局は、申告を毎年度おこなうことになるのです。
赤字を繰り越せる
赤字を繰り越すとは、いまの赤字を将来の黒字と相殺して、将来の税金を計算することをいいます。
その税金とは、法人税・住民税・事業税の3つです。
たとえば、つぎのような状況のとき。
- 今期……「△50」の赤字
- 来期……「200」の黒字
このとき、来期の税金はどう計算するか…という問題がでてきます。
「200」の黒字そのままをベースに計算してよいのか…と。
もし、赤字を繰り越すのであれば、「200」の黒字から、今期の赤字である「△50」をひくことができます。
- 200ー50=150
この「150」をベースに税金を計算できることになるのです。
つまり、将来の税金がへるわけです。
いっぽう、赤字を繰り越していないのであれば、「200」をベースに計算します。
このように計算の仕組みをみていると、「なるほどね…」とおもえるかもしれません。
でも、お金のことも考慮してみましょう。
今期と来期で、あわせていくらお金はふえるのか…と。
トータルでは、△50+200=「150」しかふえません。
そこに、お金は「200」ふえているだろう…という前提の税金がかかってしまうと、ときに困ることになります。
赤字・黒字のあんばいによっては、税金をはらうためのお金が足りないことも。
もしできるなら、絶対に赤字は繰り越しておいたほうがよいのです。
そのための条件は、赤字の年度に、青色申告による申告をしていることです。
くわえて、その後もかかさず毎年度の申告がひつようです。
この仕組みのことを、「欠損金の繰越控除」といいます。
前期の法人税がもどってくる(かも)
前期が黒字で、今期が赤字のとき…
もし、前期に法人税をはらっているなら、その法人税を還付してもらえる仕組みがあります。
(黒字でも、欠損金の繰越控除により法人税がゼロのこともあるため、このような言い回しになってしまいます)
たとえば、つぎのような状況だったとしましょう。
- 前期……「300」の黒字
- 今期……「△100」の赤字
このとき、前期は「300」の黒字にみあった法人税をはらっていたとするなら、そのうち今期の赤字である「△100」のぶんを還付してもらうことができます。
そのかわり、その赤字には繰越控除がつかえませんが。
過去の法人税をとりかえすか、将来の法人税のすくなくするか…の選択になるのです。
ただ、将来が黒字になるかどうかは、いってみれば確約されたものではありません。
もし税金がもどってくるのであれば、早いほうがよいのではないでしょうか。
そんなときにつかえるのがこの仕組みで、「欠損金の繰戻し還付」といいます。
これを受けるためには、すくなくとも前期も今期も青色申告による申告をしていることが必要です。
結局のところ、赤字でも黒字でも申告をする…という風におもっておきましょう。
消費税の課税事業者になっている
もし、課税事業者になっているのであれば、消費税の申告をおこないます。
納付のときは義務ですが、消費税には還付になるケースもあります。
この還付になるときは、じつは義務ではありません。
ただ、申告をしなければ、還付もうけることができない…
なので、消費税については、赤字・黒字にかかわらず申告しておきましょう。
まとめ
会社が赤字でも申告が必要なわけを、確認してきました。
住民税(均等割)がどうしてもかかることがありますが、欠損金の繰越控除もわすれてはいけないものです。
会社の申告は、年度がおわってから2か月以内…が期限です。
年度が切り替わるときは、忙しいもの。
その年度がおわるまえの決算月には、できる準備がととのっているのが望ましいです。
節税対策も、年度がかわれば出来るものは少なくなってしまうので。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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