減価償却の意味:3つの視点から
減価償却は、お金と経費のうごきにズレがあるから、むずかしく感じるものです。
そのズレがどうして起こるか。
それが分かれば、減価償却もむずかしくなくなるはずですよ。
減価償却はむずかしい
はじめて経理や会計ソフト入力をするとき、減価償却でつまづくことが多いです。
そもそも「減価償却」という言葉の意味が分かりにくいですからね。
- なぜするのか
- どうやるのか
- やった後はどうなるか
もう事業を始めていくらか経っても、分からないまま…というかたもいないことはない。
だれにとっても、減価償却はむずかしいものなのです。
なお、「減価」というのは「価値が減る」こと。
「償却」というのは、費用化、つまり「経費にする」こと。
価値が減ったぶんを経費にする…ということなのですが。
その前提には、お金が出ていっただけでは経費にならない…という会計のルールがあります。
ちなみに、わたしは先に計算方法を覚えました。
意味は後から、本を読んだり、自分なりに考えたり…と。
先に意味が分かっていればな…と思えますので、それをお伝えしていきます。
3つの視点から
減価償却を、つぎの3つの視点から押さえておきましょう。
- なぜ一括で経費にならないのか
- お金との兼ね合い
- 経費になっていない部分のこと
なぜ一括で経費にならないのか
会計には、つぎのようなルールがあります。
- 単価10万円以上のモノを購入したとき、その代金がすべて経費になるわけではない
なぜなら、おおくの場合、高いモノは長いあいだ使うから。
そして経費というのは、出ていったお金をあらわすものではないから。
経費は、どれくらいの事業活動をしたか…をあらわすものです。
たとえば車を買ったとして、きっと数年間は乗りますよね。
であれば、その数年間の決算書には、いつも「車に乗っていた」という痕跡がなければならない。
車は、乗ることにより、価値が減ります。
プレミアがつくなどの例外をのぞけば、下取り価格も下がりますしね。
その価値が減ったぶんを、車に乗って活動したという経費…ととらえるわけです。
これを「減価償却費」といいます。
すこし補足をするなら。
モノは買っただけでは経費にならない。
使っていなければ、経費にならないのです。
価値は、使うから減るわけで。
だから、たとえば年度末に駆け込みでモノを買ったとしても。
利益や税金はそうそう減らないことには注意しておきましょう。
話を車の例にもどしますが。
ひとつ問題があるのは、どれくらいの期間、乗るのか…ということ。
車が乗るに耐えうる期間、壊れてしまったら乗れないですからね。
それを「耐用年数」といいますが、使い道や乗り方などにより、人それぞれ。
結局は、終わってみなければ分からないわけです。
とはいえ、終わるまで税金の計算ができない…では困ることもある。
そこで、税金の計算においては、法律で耐用年数が決められています。
これを「法定耐用年数」といいます。
なにかモノを買ったら、この法定耐用年数は調べておきましょう。
珍しくないモノなら、ネット検索でも出てきますから。
たとえば普通車なら、法定耐用年数は「6年」です。
かりに、一括払いで車を「600」で買ったとしたら。
1年目は、たとえば「100」しか経費にならないことも。
そのときのお金と経費の兼ね合いについて、確認しておきましょう。
このことは、大事ですよ。
お金との兼ね合い
お金が「600」出ていったのに、経費になるのが「100」なら。
お金と経費には「500」ものズレが生まれます。
お金は「600」減ったのに、利益は「100」しか減らないわけです。
もし、車を買うのでお金を使い切ってしまったのなら。
お金はなくても黒字になることもあり得ます。
すると、買った後の月の経費や税金もはらえない。
高いモノを買うなら、買った後で日々の事業をまわせるか…と考えなければならないのです。
「お金は足りなくならないか」と。
そのためには、買う前に、次のことを知っておかなければなりません。
- どれくらいが経費になるか
- 残るお金で、どこまでの経費をはらえるか
もし足りなそうなら、あらかじめ融資を受けるなどの手当てが必要ですから。
あるいは違うモノか、我慢かも…と。
ここまでは、買った年度、つまり使い始めた年度のこと。
つぎの年度からは、逆の現象がおこります。
車の例をつづけると、お金は出ていっていないのに経費が「100」ある…という。
すると、利益は「200」なのに、お金は「300」増えるということも起こり得ます。
車の経費(減価償却費)以外は、すべて現金で決済されていたとしましょう。
それだけで、お金は「300」増える。
「100」の減価償却費がなければ、利益は「300」になりますから。
その「300」の利益から、減価償却費「100」をひけば利益は「200」。
でも、お金は「100」減るわけではない。
買った時に、すべて出ていっているわけですから。
だから、利益は「200」でもお金は「300」増えることになるのです。
この仕組みを取り上げて。
あたかも減価償却費でお金が増えるような印象をあたえる文言をみかけることがあります。
でも、お金は買った時にまとめて出ていっていることを、忘れずに。
経費になっていない部分のこと
車の代金「600」は、減価償却により、徐々に経費になっていきます。
その経費になった部分を、1年目から累積していくと。
100・200・300…と増えていきます。
いっぽう、まだ経費になっていない部分は。
500・400・300…と減っていくわけです。
この経費になっていない部分は、「車両運搬具」として「貸借対照表」にのっています。
そして、その金額のことを「未償却残高」ともいいます。
この未償却残高は、これから経費になる金額をあらわしています。
ここで貸借対照表について考えてみると。
貸借対照表とは、お金やモノなどのいわばプラスの財産、借入金のようにマイナスの財産など。
これらが網羅されている財産目録とも呼べるものです。
ただ、それらの価値が正しくあらわされているかといえば。
なかには、そうでないものもある。
たとえば、車の下取り価格と未償却残高は一致しないことも多いですから。
だから、決算書などにある数字のなかには。
たとえば時価に照らしてみると、正しくないものもふくまれているかもしれない。
そんな前提で見ておく必要もあるのです。
とはいえ、それが数字を見ない理由にはならない…ようにしておきましょう。
財産としての数字は、それを使うとどうなるか…という効果をあらわすもの。
将来の売上や利益をかんがえるときに、鵜呑みにできない数字があるかも…ということなのです。
事業をつづけるかぎり、お金や数字とは付き合わざるを得ません。
そして減価償却をめぐっては、いろんなところでズレが起こります。
そのズレに惑わされないようにしましょう。
まとめ
減価償却は、理解するのがむずかしい仕組みです。
- なぜ一括で経費にならないのか
- お金との兼ね合い
- 経費になっていない部分のこと
これらを知ったうえで、数字やお金にまつわるズレに着目しましょう。
そのズレが、減価償却のキモですから。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。

