申告後に2割特例を原則に戻せるか

2割特例より原則のほうがトクになることもあります。

申告後にその変更をすることは、基本的にはできません。

あらためて、どちらがトクになるか。

そのカギになることも押さえておきましょう。

 

基本的には戻せない

2割特例よりも原則のほうがトクだった…と申告の期限後に気づいたとき。

そんなときは、過去の申告をじぶんに有利なように手直しする手段である「更正の請求」が考えられます。

 

ただ、この更正の請求は、計算方法を取りかえるようなときにはつかえません。

計算に誤りがあったときや、その計算が法律のルールに則っていなかったときしか使えないものなのです。

だから、そもそも2割特例をつかえない状況だったかどうか…は確認してみましょう。

それなら更正の請求ができますから。

 

いっぽう気づいたのが期限内なら、原則にもどせる可能性はあります。

ただし、法律に書かれていることではないので、確かなことではありません。

 

消費税ではなく所得税のことですが。

期限内に複数の申告書を提出したときは、いちばん最後に提出したものが有効とされています。

慣習のようなもので、所得税基本通達という税務署内のルールでも明らかにされていること。

このルールが、所得税だけ…というのも不自然ですよね。

もし期限内なら、電話などで確認してみましょう。

 

なお、2割特例は来年あたりまでの仕組みだったところ。

令和8年度の税制改正で、3割特例として延長される見込みです。

あらためて、どんなときに原則のほうがトクになるかも確認しておきましょう。

 

2割特例よりもトクな方法があるとき

2割特例より違う方法のほうがトクになるのは、次のようなときです。

  • その期の経費にならない支払いがある
  • 卸売業をしている

 

その期の経費にならない支払いがある

消費税は、売上などで受け取った消費税から、「経費など」で払った消費税をひいた残りを、税務署へ納めるようになっています。

だから、利益がすくない、あるいは赤字のときなら。

納税もすくなくなることは予想がつくとおもうのです。

 

ここで気をつけたいのが「経費など」の「など」。

この「など」には、経費にならない商品の在庫や固定資産の購入・開業費などの支払いもふくまれます。

 

たとえば車。

購入した年度では、その代金のすべてが経費になるわけではありません。

所得税や法人税では、減価償却により、代金をつかう期間で分割して経費にしていきます。

でも、消費税の計算では、購入したときにすべてを組み込みます。

この違いにより、利益と消費税の納税は、なんというか…つり合いがとれないようなこともあるのです。

 

それを予防するカギになるのは、貸借対照表です。

モノやサービスをうける権利、つまり「資産」とよばれるもの。

資産には、お金は出ていったのに、その期の経費にならないものがふくまれます。

これらが増えるなら、それにより消費税の納税がへる可能性があるのです。

利益だけをみていると、消費税でうっかりするかも…と知っておきましょう。

また、たかい買い物をするなら、その前に消費税のことを考えるのも大事ですよ。

なるべく、いや必ず前年度中に。

状況によっては、原則をつかえないこともありますから。

 

卸売業をしている

簡易課税をつかえるなら、卸売業のかたのみなし仕入率は「90%」。

いわば1割特例です。

2割特例の50%になるので、この点、間違いのないように気をつけましょう。

 

 

なお、2割特例(または3割特例)と原則のどちらがトクかは。

会計ソフトで税抜き経理をしていると、簡単にわかります。

その差額が、雑収入や雑損失などとしてあらわれるので。

そのためには、じつは貸借対照表もつくる必要があるのですが、検討してみてくださいね。

 

まとめ

申告後に、2割特例よりも原則のほうがトクだったと気づいても。

基本的には、原則には戻せません。

その申告の期限内だったら可能性はあるものの。

 

その損得で失敗しないカギは、貸借対照表にあります。

増えた資産には、消費税の計算に組みこまれるものもあるので。

 

じつは消費税は、損得をめぐり、とても問題のおおい税金です。

おうおうにして「その期になると」手遅れでもある。

とくに大きな買い物をするときは、かならず前年度中に消費税のことを考えるようにしましょう。

 

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。