役員報酬には縛りがある(定期同額給与)

好きなタイミングで増やしたり減らしたりできない

先月は赤字だったので役員報酬はゼロ…

今月は成績が良かったので役員報酬は100万円!

こういう事は、基本的にはできないんです。

もしこれができれば、会社の利益を好きに操作できてしまいますよね。

それは止めましょう、というルールになっています。

ですから、次の2つの要件を満たさない場合には、経費として認められない部分が出てきてしまいます。

① 定期……毎週、毎月のようにひと月以下の期間ごとに規則的に支給する

② 同額……額面でも手取りでもいいので、毎回同じ金額を支給する

経費にならないとどうなる?

まず、その年度で一番少ない支給額をみてみましょう。

支給額が違ったとしても、毎回その金額までは経費として認められます。

それを超える部分はすべて経費から除外して、法人税を計算します。

経費が減ってしまうので、税金が増えてしまいます。

例えば、次のようになります。

支給額 経費にならない部分
1月 30万円 なし
2月 30万円 なし
3月 30万円 なし
4月 50万円 20万円(=50万円ー30万円)
5月 30万円 なし
6月 30万円 なし
7月 30万円 なし
8月 30万円 なし
9月 30万円 なし
10月 30万円 なし
11月 100万円 70万円(=100万円ー30万円)
12月 30万円 なし

なお、ひどい話ですが、法人税で経費にならない部分にも所得税がかかりますので、

そうならないように注意していきましょう。

いつなら役員報酬を変えてもいいのか?

次の3つのタイミングがあります。

そして、役員報酬を変えるというのは、株主総会の決定が必要なので、

役員は社長ひとりだけだよという場合でも、議事録を作っておきましょう。

① 年度が始まってから3ヶ月以内

② 役職や仕事内容が大幅に変わったときなど

新しく役員になる場合や昇格する場合はもちろん、行政処分を受けてしまった場合や病気で入院してしまった場合なども含まれます。

③ 業績がとても悪くなったときなど(減らす場合のみ)

自然災害や取引先が倒産してしまった時などだけでなく、何かの理由で今後業績が悪くなるのは避けられない場合も含まれます。

肩書きは役員でなくても…

次のケースだけが全てではないのですが、肩書きにかかわらず役員とみなされ、

その方へ支給する給与が役員報酬となるケースがあるのでご注意ください。

① 相談役、顧問などの肩書きでも、会社の経営に関わっている場合

② ご夫婦で会社をやっており、株主は社長であるご主人のみの場合

奥様の肩書きが役員でなくても、奥様が会社の経営に関わっているときは役員とみなされてしまいます。

最後に

小さな会社では、社長=株主というケースが多いと思います。

社長の財布と会社の財布はもちろん別々なのですが、

社長個人の税金と会社の税金を合わせて考えるのがとても重要です。

法人税の税率と所得税の税率が違いますので、役員報酬をいくらにするかでトータルの税金が変わりますし、

事業を大きくしたいとなったら、会社にお金を残しておくこともいいかもしれません。

役員報酬というのは縛りもありますが、厚生年金に加入できたり、給与所得控除が使えたり、

大きなメリットがありますので、仕組みを知ったうえでうまく活用していきましょう。

(注)この記事は、作成時点での法令等に基づいております。また、細かい法令等をざっくり解説していますので、実際の適用にあたっては、関係省庁・専門家等への確認をお願いいたします。