ふるさと納税の上限を計算してみよう(個人住民税)
ふるさと納税をすると、大体ふるさと納税をした金額の分、所得税・住民税が少なくなります。
ざっくりですが、次の表のようなイメージとなります。
ふるさと納税をする前 | ふるさと納税をした後 | |
ふるさと納税の金額 | 0円 | 20,000円 |
所得税・住民税の合計 | 100,000円 | 82,000円 |
トータルの出費 | 100,000円 | 102,000円 |
つまり、ふるさと納税額から2,000円を引いた金額分、所得税・住民税が減る訳で、2,000円を除けばトータルの出費は変わらないよ、ということになります。
ただし、無制限に認められる訳ではなく、所得税・住民税を減らすことのできる上限が設けられています。
この上限を超えてふるさと納税をすると、トータルの出費は増えることになりますが、
上限の計算は所得税・住民税の両方を考慮しなければならないため、少しややこしいです。
なお、住民税は1月~12月の所得を基に計算されますが、ふるさと納税もその間にしておかなければ計算には含まれない為、あくまでも収入の予測に基づいた上限となりますが、それでも是非やってみましょう!
上限の考え方
ふるさと納税をすると、所得税と住民税が少なくなります。
所得税と住民税は計算方法がほとんど同じなのですが、
所得税では寄付金控除(所得控除)として、住民税では寄付金税額控除として、
それぞれ違う段階で計算に組み込むため、少しややこしくなっています。
さらに、復興特別所得税(所得税×2.1%)があること、住民税の寄付金税額控除で2段階の計算をすることが、さらに数字を細かくしてしまいますが、ふるさと納税をすると次の3項目の合計分、税金が減ることになります。
1.まずは、所得税の減額分です。
(ふるさと納税額(注)ー2,000円)×所得税率
(注)総所得金額等(損失の繰越控除などをする前の所得の合計です)の40%が限度となります。
(注2)所得税率は、下記の表の通りです。(復興特別分を含む)
課税される所得金額 | 税率 |
195万円以下 | 5.105% |
195万円超 330万円以下 | 10.21% |
330万円超 695万円以下 | 20.42% |
695万円超 900万円以下 | 23.483% |
900万円超 1,800万円以下 | 33.693% |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40.84% |
4,000万円超 | 45.945% |
2.住民税の基本の減額分です。
(ふるさと納税額(注3)ー2,000円)×住民税率(10%)
(注3)総所得金額等の30%が限度となります。
3.住民税の特例の減額分です。これは、ふるさと納税ならではのものです。
(ふるさと納税額ー2,000円)×(100%-所得税率ー10%)
(注4)この特例の減額分は、住民税・調整控除後の所得割の20%が限度となります。
つまり、上記の算式の税率部分をまとめると、(ふるさと納税額ー2,000円)×100%となり、いわゆる自己負担2,000円を除いたふるさと納税の全額分、所得税・住民税が減ることになります。
そして、住民税の特例部分に限度があることにより、次の算式で上限を計算することになります。
(ふるさと納税額ー2,000円)×(90%-所得税率)≦調整控除後の所得割×20%
ですから、上限を計算するためには、①所得税率、②調整控除後の所得割、を把握しようという事になるんです。
所得税の計算については、多くの情報が出ていますので、今回は、あまり目にしない住民税・調整控除後の所得割の計算をみていきましょう。
住民税・所得税は計算方法が良く似ていますが、所々違う箇所があるのにご注意ください。
まずは、所得を計算する。
この段階での計算は、住民税と所得税とでほぼ同じとなります。
1.不動産所得・事業所得……総収入金額ー必要経費
(注)青色申告をしている方は、青色申告特別控除額も差し引きます。
2.給与所得……収入金額ー給与所得控除額
(注1)給与所得控除とは必要経費にあたるものですが、サラリーマンの方がいちいち領収書などを集めて集計する手間暇を省くため、概算で計算することになっています。
(注2)給与所得控除額は、次の表で計算します。
収入金額 | 給与所得控除額 |
162.5万円以下 | 650,000円 |
162.5万円超 180万円以下 | 収入金額×40% |
180万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
660万円超 1,000万円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
1,000万円超 | 2,200,000円 |
3.公的年金(雑所得)……収入金額ー公的年金等控除額
(注1)給与と同じく、必要経費にあたるものを概算で控除します。
(注2)公的年金等控除額は、次の表で計算します。
年齢 | 収入金額 | 公的年金等控除額 |
65歳以上 | 330万円以下 | 1,200,000円 |
330万円超 410万円以下 | 収入金額×25%+375,000円 | |
410万円超 770万円以下 | 収入金額×15%+785,000円 | |
770万円超 | 収入金額×5%+1,555,000円 | |
65歳未満 | 130万円以下 | 700,000円 |
130万円超 410万円以下 | 収入金額×25%+375,000円 | |
410万円超 770万円以下 | 収入金額×15%+785,000円 | |
770万円超 | 収入金額×5%+1,555,000円 |
4.その他の所得……基本的には「収入金額ー必要経費」と計算されますが、詳しくは別の機会とさせて頂きます。
最後に、それぞれの所得を合計しておきましょう。
ここで、過年度からの損失の繰越し(純損失の繰越控除)がある方は、所得の合計から差し引きます。
なお、配当について所得税・住民税で違う申告をする時や、所得税の純損失の繰り戻し還付(この制度は住民税にはありません)をされる方は、所得の合計が所得税・住民税で違う数字になることにご注意ください。
次に、所得控除を計算する。
ここから、住民税は所得税と違う数字が出てきます。
1.所得税と同じもの……社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除
2.所得税とほとんど同じもの……雑損控除、医療費控除
(注)所得の合計が所得税・住民税で同じ方は、同じ数字となります。
3.生命保険料控除……次の表で計算します。
<新契約>
支払保険料 | 生命保険料控除額 |
12,000円以下 | 支払保険料の全額 |
12,000円超 32,000円以下 | 支払保険料×1/2+6,000円 |
32,000円超 56,000円以下 | 支払保険料×1/4+14,000円 |
56,000円超 | 28,000円 |
<旧契約>
支払保険料 | 生命保険料控除額 |
15,000円以下 | 支払保険料の全額 |
15,000円超 40,000円以下 | 支払保険料×1/2+7,500円 |
40,000円超 70,000円以下 | 支払保険料×1/4+17,500円 |
70,000円超 | 35,000円 |
(注)一般生命保険、介護医療保険、個人年金保険のうち複数がある場合には、70,000円が上限となります。
4.地震保険料控除……次の表で計算します。
保険の種類 | 支払保険料 | 地震保険料控除額 |
① 地震保険 | 支払保険料×1/2(上限25,000円) | |
② 長期損害保険 | 5,000円以下 | 支払保険料の全額 |
5,000円超 15,000円以下 | 支払保険料×1/2+2,500円 | |
15,000円超 | 10,000円 | |
③ 両方ある場合 | ①+②(上限25,000円) |
5.その他の所得控除(人的控除)……住民税・所得税を共に記載しております。なお、住民税と所得税の「差」の合計値を後で使います。
控除の種類 | 住民税の控除額 | 所得税の控除額 | 差 | |
障害者控除 | 障害者 | 260,000円 | 270,000円 | 10,000円 |
特別障害者 | 300,000円 | 400,000円 | 100,000円 | |
同居特別障害者 | 530,000円 | 750,000円 | 220,000円 | |
寡婦(夫)控除 | 一般 | 260,000円 | 270,000円 | 10,000円 |
特別 | 300,000円 | 350,000円 | 50,000円 | |
勤労学生控除 | 260,000円 | 270,000円 | 10,000円 | |
扶養控除 | 一般 | 330,000円 | 380,000円 | 50,000円 |
特定 | 450,000円 | 630,000円 | 180,000円 | |
老人 | 380,000円 | 480,000円 | 100,000円 | |
同居老親等 | 450,000円 | 580,000円 | 130,000円 | |
配偶者控除 | 一般 | 330,000円 | 380,000円 | 50,000円 |
220,000円 | 260,000円 | 40,000円 | ||
110,000円 | 130,000円 | 20,000円 | ||
老人 | 380,000円 | 480,000円 | 100,000円 | |
260,000円 | 320.000円 | 60,000円 | ||
130,000円 | 160,000円 | 30,000円 | ||
配偶者特別控除 | 所得の合計 900万円以下 | 330,000円 | 380,000円 | 50,000円 |
360,000円 | 30,000円 | |||
310,000円~0円 | 0円 | |||
所得の合計 900万円超 950万円以下 | 220,000円 | 260,000円 | 40,000円 | |
240,000円 | 20,000円 | |||
210,000円~0円 | 0円 | |||
所得の合計 950万円超 1,000万円以下 | 110,000円 | 130,000円 | 20,000円 | |
120,000円 | 10,000円 | |||
110,000円~0円 | 0円 | |||
基礎控除 | 330,000円 | 380,000円 | 50,000円 |
最後に、所得控除の合計をしましょう。
住民税・調整控除後の所得割を計算する。
1.まずは、住民税・所得割を計算をします。
① 所得の合計ー所得控除の合計=課税所得
② 課税所得×10%=所得割
2.調整控除を計算します。
① 所得の合計が200万円以下の場合
次のア、イのいずれか少ない金額の5%
ア 人的控除(所得控除の「5.その他の所得控除」です)の差の合計
イ 課税所得(上記「1①」を参照)
② 所得の合計が200万円超の場合
{人的控除の差の合計ー(課税所得ー200万円)}×5%
3.調整控除後の所得割を計算します。
(1-2)×20%
これで、計算の材料がすべて揃いましたので、後は次の算式に当てはめて計算するだけです!
(ふるさと納税額ー2,000円)×(90%-所得税率)≦調整控除後の所得割×20%
(注)この記事は、作成時点での法令等に基づいております。実際の適用にあたっては、事前に関係省庁・専門家等への確認をお願いいたします。