損得勘定の「損」に用心すべき理由

事業をするなら、損得をかんがえるのは大事なことです。

でも、損をかんがえ過ぎると、事業はつまらなく感じるかもしれません。

 

得したい・損したくない

事業をしていれば、お金の損得は気になるもの。

原価割れで売るようなことは避けたいですし、利益はちゃんと取らなければなりません。

三方よし…なんて言いますが、自分も得しなければ、それは事業ではないですから。

 

でも、得するか損するかを冷静に判断するのは、けっこう難しいのかもしれません。

「得したい」よりも「損したくない」気持ちのほうが強いかもしれない…と。

得より、損のほうに敏感になるような。

 

わたしなんか、たとえば期間限定なんて聞くと、気になってしまいます。

その期間を過ぎると買えないことが、なにかを失うような気がするんですよね。

これって「損したくない」気持ちかな…と。

 

あるいは、不安をあおる宣伝文句。

今すぐ○○しないと大変なことに…とか。

これも、今は問題ないことが、いずれそうではなくなる。

やっぱり何かを失うことを連想させ、「損したくない」気持ちをあおられているような。

 

いっぽう、儲け話のたぐいは、さほど気にならないこともあります。

詐欺を用心することもありますが、なにかを失うわけではないですから。

むしろ、それにお金をつかい、返ってこないことの方が気になってしまう。

世の中、そうそう甘い話もないですしね。

「得したい」と思ってもよさそうな局面では、むしろ腰がひけているかもな…と。

 

「得したい」よりも「損したくない」ほうが強くなるのは、自然なことなのかもしれないですね。

ただ、この気持ちは、税金を考えるうえでもおなじだったりしないでしょうか。

 

税金は損するもの

もともと税金には、「損する」イメージがあります。

いちどは入ってきたお金が、出ていくわけですから。

そして出ていったとしても、直接的な見返りを感じにくい。

だから、たんにお金を失う、つまり損してしまうと感じるわけです。

 

これを上手く利用している、我々からみれば利用されているのが、役員報酬や給与からの天引き。

源泉徴収とか特別徴収とよばれる仕組みのこと。

 

所得税や法人税、消費税を申告するときは、税金がたかい…と感じるものです。

1年分をまとめて払うことが原因でもありますけれどね。

でも、役員報酬などからの天引きでは。

所得税などの申告のように「もう少し安くならないかな」という空気はあまり感じなかったりします。

それはきっと、失うわけではないから。

天引きのぶん、そもそもお金は入ってこない。

だから、得するも損するもなく、むしろ年末調整の還付をうれしく感じることも。

でも、その還付は得しているわけではありません。

損しているわけでもないんですけれどね。

 

もし「得したい」気持ちが強ければ。

じぶんが経営している会社の税金、そして個人で払っている税金を合わせて考えて「これでよいんだろうか」と深掘りしていくのでは…と思うのです。

 

また、「経費になるなら」という気持ちもあったりします。

お金は出ていくものの、それが経費になるなら、税金はすくなくなる。

だから、利益を減らすために、あえてお金をつかうことも。

 

頭のなかでは、きっと分かっているんだと思います。

税金をへらすためにお金を使わないほうが、かえって手元に残るお金は増えることを。

ただ、ヒトは道理ではなく、感情でうごいてしまうもの。

それは悪いことではないんですよ。

すこし残念なのが、「損したくない」が行動を変えてしまうこと。

だって、事業は「得する」ためのものですから。

 

事業は得するためのもの

事業の目的には、お金をかせぐ、お金を増やすこともふくまれます。

これは、純粋に「得する」こと。

もちろん、全部が全部「得する」に振り切れてなくてもよいと思います。

趣味とか試し打ち、あるいは単に「やってみたい」などがあってもよいと思うのです。

 

でも、その事業のなかには、税金のように「損したくない」ことが動機になっているものはないでしょうか。

言い換えると、失わないための行動が。

維持する…といえばいいでしょうか。

 

そんな行動も悪いわけではないですし、必要な場面もおおくあります。

ただ問題は、「つまらない」と感じる可能性があること。

 

ほんらい「得する」ことは、楽しい…などポジティブな気持ちになるはずなのです。

だって、相手の役に立たなければ、得することができないですから。

そして、もし本当に相手の役に立つのなら、相手からはそれなりの反応が返ってくるはず。

それを嬉しく感じない経営者はいない…と思うのです。

 

とくに起業時は、ほぼ100%の行動が「得する」ことに向けられています。

でもいつしか、「損しない」ため、失わないための行動もでてくる。

それが時に、税金をきっかけとすることもある…かも。

 

自分の行動は、「得したい」ためのものか「損したくない」ためのものか。

この違いに用心してみましょう。

 

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。