役員の住民税の支払方法を選べるケース
役員報酬からは、原則として、住民税が天引きされます。
その後、会社が住民税をはらいます。
ただ、会社や役員の状況によっては、役員個人が住民税を管理することもできるのです。
特別徴収と普通徴収
住民税には、つぎの2つの支払い方法があります。
- 特別徴収……役員報酬や給与から天引き
- 普通徴収……金融機関などへ行き、自分ではらう
役員報酬をうけとっているときは、原則として、特別徴収によります。
役員報酬から、住民税が天引きされるわけです。
そして、天引きされた住民税は、会社が、給料日の翌月10日までにはらうことになります。
給料日が4月なら、5月10日までに…という風に。
ただ、特別徴収は、1年度分の住民税を12分割ではらうようになっています。
- ある年の1月~12月までの所得について、住民税が計算される
- 翌年の6月~翌々年の5月までの12回にわけて、はらう
こんなサイクルになっているのです。
すると、毎月毎月、住民税をはらわなくてはなりません。
これが、けっこう大変…
納付書が届いたときに、全部はらってしまうのもアリです。
でも、その後に退職されたら、精算が面倒。
というわけで、毎月毎月はらう…というのがけっこうな負担になるのです。
忘れてしまうのも、気になりますしね。
納期の特例
もし会社が、役員や従業員をふくめて10人未満なら、納期の特例をつかうことができます。
役所へ申請することにより。
毎月はらうのではなく、半年分ごとに、1年度分を年2回にわけてはらうことができる特例です。
(役員報酬からの天引きは、毎月おこないます)
なお、役員報酬からは、所得税も天引きします。
そして、住民税とおなじく、所得税にも納期の特例があります。
ただ、時期がびみょうにズレているんですね…
所得税のサイクルは、つぎのとおりです。
- 1月~6月分……7月10日まで
- 7月~12月分……1月20日まで
いっぽうの住民税は、つぎのとおり。
- 6月~11月分……12月10日まで
- 12月~5月分……6月10日まで
なんだかんだ、年に4回は税金をはらわなければならないのです。
でも、会社の状況によっては、住民税だけは普通徴収にできる可能性があります。
住民税の支払方法を選べるケース
役員報酬は、特別徴収(天引き)が原則です。
でも、会社や役員が、つぎのどれかに当てはまるなら、普通徴収にすることができます。
- 総従業員数が、2人以下
- ほかの会社で、特別徴収されている
- 役員報酬がすくなくて、住民税の天引きをするとマイナスになってしまう(役員報酬が年間100万円以下)
- すでに退職している、または退職予定
社長ひとりや夫婦で会社をやっているとき。
前年度にくらべ、役員報酬をガツンとさげたようなとき。
こんなときは、普通徴収にすることができるのです。
ただし、この基準は、わたしが住んでいる練馬区やその周辺の自治体のものです。
基準は、自治体により変わる可能性があるので、お住まいの自治体で確認してみてくださいね。
どう手続きするのか
住民税の計算は、お住まいの自治体がおこないます。
そのための資料は、会社が自治体へおくります。
その資料を、給与支払報告書といいます。
給与支払報告書は、源泉徴収票とよく似ています。
ともに、1月~12月の役員報酬の明細ですので。
その給与支払報告書は、毎年1月中に、その役員が住んでいる自治体へおくります。
もし普通徴収を希望するなら、その際に、つぎの書類に記入をして添付しましょう。
「普通徴収切替理由書」といいます。
(様式や内容は、自治体により変わる可能性があります)
また、給与支払報告書の「摘要」に、「普A」とか「普B」というように、該当する理由も記載しておきましょう。
この手続きをすることで、ほんらいは特別徴収されるところ、普通徴収できるようになります。
普通徴収のときは、6月・8月・10月・1月の4分割ではらいます。
(この納期も、自治体により変わる可能性があります)
でも、自分のものなら、届いたときに全部はらうこともできます。
1年に1回はらい、あとの期間はスッキリ…ということができるわけです。
期限というのは、「○○までに、何かをしなければならない」というもの。
「しなければならない」は、少ないほうがラクだとおもうのです。
そう感じるなら、普通徴収をえらべないか、検討するものアリです。
まとめ
役員の住民税について、特別徴収ではなく、普通徴収をえらべるケースについてみてきました。
会社をやっていると、経理や事務の負担もおおきくなってきます。
減らせるものがないかは、いつも気にするようにしましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
当事務所のサービス